世界ランキング5位でシーズンを終えた錦織圭【写真:Getty Images】

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ATP公式サイト掲載記事で錦織の2016年と2017年を分析

 テニス界で最も高名なデータ分析家として知られるクレイグ・オシャネッシーは、コーチや選手たちの戦略参謀として手腕を振るうのみならず、有名紙『ニューヨークタイムズ』やATP公式サイト等に寄稿するコラムニストとしても活躍している。そのオシャネッシーが、2016年の最後にATP公式サイトに掲載した記事は、錦織圭についてのものだった。

「2016年にいかにニシコリは成長し、2017年も引き続き改善できるか?」

 そう題された記事の中で、オシャネッシーは錦織の強さの源泉は“セカンドサーブ”にあることを指摘している。

「錦織は2016年、58勝21敗の戦績でキャリア最高の勝利数を手にし、世界ランキング5位でシーズンを終えた。特に目を引くのが、セカンドサーブでの支配力だ」

 錦織のファーストサーブでのポイント獲得率は72%で、これはATP全体で見て43位の数字。ところがセカンドサーブになると、55.3%の獲得率で7位にまで大幅に跳ねあがる。

 また「セカンドサーブでゲームを支配するのは、リターンゲームでも同様だ」と記事は続けている。なんと、相手のセカンドサーブ時における、錦織のポイント獲得率は54.3%にも上るという。

 さらに注目すべきはチャンスでの勝負強さで、自身のブレークポイント時のセカンドサーブリターンポイント獲得率は58.1%に上昇する。この勝負強さは危機に瀕した時にも発揮され、相手のブレークポイント時における錦織のセカンドサーブポイント獲得率は、通常の55.3%から58.1%へとアップ。「この数字は、世界ランク1位アンディ・マレーの55.4%や、同2位ノバク・ジョコビッチの56.4%をも凌駕する」と、オシャネッシーは強調する。

 その錦織が、2017年にさらなるジャンプアップを果たすために改善すべき点は何か。データ分析のエキスパートは「ブレークポイント時のダブルフォルトを減らすこと」を挙げている。昨シーズンの錦織は、ブレークポイント時に16本のダブルフォルトを犯している。これは2015年の7本と比べても倍増以上の数字だ。

 なお記事は「セカンドサーブは、自分が打つ時もリターンにおいても、多くの選手が思っている以上に大きな意味合いを持ってくる。“錦織方式”を取り入れることは、あらゆるレベルでプレーする選手たちにとって効果的だ」の提言で結ばれている。今季のテニス界で“錦織方式”を採用する選手が増えるかもしれない。

内田 暁●文 text by Akatsuki Uchida