スマホ発売日の熱狂はiPhoneが始まりではない!初の国産 スマートフォンW-ZERO3誕生を知っているか

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スマートフォンの普及が進み、スマートフォンと携帯電話の所有率も、今ではスマートフォンが逆転しています。世代によっては、ほとんどがスマートフォンユーザーという調査結果も出ています。

これだけ普及が進み、人気が高いスマートフォンの中でも、日本で初めて発売された2008年「iPhone 3G」以来、新機種の発売日にできる行列がニュースとなるほど熱狂的な人気を誇っています。

しかし、行列ができるスマートフォンは、iPhoneが最初ではありません。

実は、「iPhone 3G」が発売となる、その3年前に日本製スマートフォンの発売で行列ができているのです。
それは、ウィルコム(現Y!モバイル)が発売した、シャープ製スマートフォン「W-ZERO3」です。

W-ZERO3は、スライド式のキーボードを内蔵し、OSにマイクロソフト製のWindows Mobileを搭載、通話通信機能として、ウィルコム独自のSIMシステムW-SIMを内蔵する、PHS通信を利用したスマートフォンでした。

このW-ZERO3が発売した2005年12月14日、量販店には行列ができたのです。
W-ZERO3の発売日に、有楽町のビックカメラにて行列に並びましましたが、大型店舗をぐるりと一周するほどの行列ができたのです。

当時はガラケー(ガラパゴス携帯電話、フィーチャーフォン)が全盛の時代です。
それでありながら、このW-ZERO3が、これだけの熱狂で歓迎されたのには、理由があります。

携帯電話が登場する以前、1990年代より、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)という携帯端末がありました。
通信機能は内蔵しておらず、パソコンとデータ連係することがメインの端末でした。まだ、インターネットが始まったばかりということもあり、通信機能には重点をおかれていませんでした。

PDAの利用方法は、予定表、連絡先、メモとしたPIM機能がメインとなっていましたが、それに飽き足らない当時のモバイルユーザーは、PDAをパソコン並に拡張して利用していました。現在のように、ノートパソコンも軽量で安価なものが少なく、モバイル環境で快適に作業するためには、このPDAをカスタマイズすることが、もっともコストパフォーマンスが良く、実用的だったためです。
こうしたカスタマイズ情報は、パソコン通信やホーム(Web)ページを通じて、ユーザー間で頻繁に共有されていました。

しかし、このPDA市場は、ネットができる携帯電話「iモード」の登場と、ノートパソコンの軽量化により、一気に縮小の道を歩みます。当時、人気を集めたPDAの代表的なモデルのソニーCLIE、シャープZaurus、NECモバイルギアなどは、順次、発売中止になっていったのです。

その後、日本のモバイルシーンは、ガラケーが市場を占有し、軽量化したノートパソコンが安価になり、これらの機器を利用するユーザーが増えていきます。
そうした中、PDAを使っていたユーザーの多くは、ガラケーやノートパソコンとは異なる、小型のネット端末の登場を密かに待ちわびていました。

ちょうどその時期に、海外でPDAに携帯電話機能を搭載したスマートフォンという新しいジャンルの端末が登場していたためです。

ただ、日本のモバイルシーンでは、ガラケーがメインとなった影響が大きく、スマートフォンが登場する兆しは現れない日々が続きていました。

そんな状況の中、突如、W-ZERO3が発売となったのです。
しかも、海外モデルではなく、日本のオリジナルモデルとして登場したのです。

W-ZERO3登場の背景には、
・通信定額のPHSで市場を広げたいウィルコム
・Zaurusにかわる新しいモバイル端末を模索していたシャープ
この2つの思いが偶発的に結びついたことで誕生したといってもよいでしょう。

このW-ZERO3の登場が、かつてのPDAユーザー達を熱狂させたのです。