ドンキホーテ「27年連続増収増益」の秘密

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■ドンキホーテの集客力は年間3億人を突破

『図解! 業界地図2017年版』の出版後に決算発表があった、ドンキホーテホールディングス(HD)の16年6月期の概要を見てみよう。

売上高は事前予想7500億円を上回る7595億円。営業利益、経常利益、当期純利益は過去最高益を更新。27期連続での増収増益だった。海外を含む全店舗合計の年間集客は3億人を突破。341店舗合計とはいえ、H2Oリテイリング傘下の阪急百貨店本店の年間集客約4900万人の6倍強に相当する。

主要店舗では中国元、台湾ドル、韓国ウォン、タイバーツ、米国ドル、ユーロのレジ精算サービスをしていることでもわかるように、訪日外国人観光客の人気が高いのも集客の要因。「爆買い」の急失速で業績下降に見舞われている店舗が目立つなかで、同社は化粧品や雑貨品などの販売でカバー。57%超の道頓堀御堂筋店(大阪)を筆頭に、国際通り店(沖縄)、銀座本館(東京)、中洲店(福岡)などは、免税売上高構成比が30%を超す

同社は自らの強みを「商品のバラエティとディスカウント力」としているが、それに加えて、立地やライバル店などの状況に応じた個店主義が功を奏しているのだろう。東京国際空港(羽田)の国際線ターミナルにも出店し、お菓子や医薬品などインバウンドで人気のお土産品を中心に展開。ついつい、ついで買いしたくなる店舗づくりも特長だ。深夜ビジネスの開拓者でもあり、ライバル店舗はどこかと見渡しても、直ちに思い浮かばないほど存在感がある。

ドン・キホーテ」や「MEGAドン・キホーテ」など、国内327店舗の1店舗1日平均売上高は、およそ580万円。前年度比ではややマイナスになっているが、新規出店が多かったためで、既存店ベースではプラスでの推移である。年間売上高を年度末店舗数で割る計算をしているため、1年フル稼働でない店舗が多いと減額になる傾向が強い。

■ドンキの食品はお値打ち感がある

都道府県別で見てみると、沖縄の1店舗1日平均売上高は1100万円を突破。北海道と福島も800万円台で、64店舗と最多の店舗数を数える東京は全国平均と並ぶ水準だ。一方、滋賀、奈良、岡山、山口、香川、長崎の店舗は300万円台である。大型店で1日の売上高も多い、MEGAドン・キホーテ店の有無などで格差がついているのだろう。11月25日に鳥取県に出店することから、空白県は徳島県だけである。

いずれにしても、全国の店舗をならせば、1店舗1日平均2550人を集め、店頭商品がおよそ50日で入れ替わる。1店舗平均資産価値は1億7500万円。そんな店舗の運営スタッフは平均14人弱というのが、ドン・キホーテ店の平均像だ。親会社で持ち株会社の従業員平均給与は600万円台、社内取締役の平均年俸は5000万円台である。

ドンキホーテHDは、売上高と仕入高の内訳を開示している。仕入品のすべてが原価として計上されるわけではないことから厳密とはいかないが、売値は仕入値の何倍になっているかといった、「売値」と「仕入値」のおおよその傾向が見て取れる。「売上高÷仕入高」は「1.28倍」。15年6月期の「1.32倍」からは下降傾向である。ドンキホーテHDは、ディスカウント度をさらに進めていると見てとれる。

商品別内訳は、家電製品「1.24倍」、日用雑貨品「1.30倍」、時計・ファッション用品「1.32倍」、スポーツ・レジャー用品「1.49倍」。売値と仕入値の差が最も少ないのが食品の「1.19倍」で、同店の食品はお値打ち感があるといっていいだろう。

収支構造を1000円の商品販売にたとえれば、仕入原価は700円強である。1650億円に相当する土地を所有しているように、自社保有が多いためか地代家賃が低いこともあって経費は200円強。儲けは60円弱で推移である。

小売店のなかには1000円の販売で100円以上の儲け(営業利益)を出しているところもあり、格別に利益率が高いとはいえないものの、確実に利益を実現している企業だ。同社は2020年500店舗、売上高1兆円の目標を掲げている。

(ジャーナリスト 鎌田正文=文)