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●"2016年度を象徴するデザイン"を決定
公益法人日本デザイン振興会は29日、2016年度グッドデザイン賞の受賞結果および、「グッドデザイン大賞」候補と「グッドデザイン・べスト100」を発表した。ここでは、同日に東京都・丸の内のコンファレンススクエアエムプラスグランドにて開かれた記者発表会の様子をお届けする。

今回、グッドデザイン賞を受賞したのは、審査対象となった4,085件から選ばれた1,229件(受賞企業数は813社)。このたび発表された受賞作品には、"2016年度を象徴するデザイン"として位置づけられる「グッドデザイン大賞」の候補作品6点が挙げられたほか、独自性、提案性、審美性、完成度などで特に評価され、「グッドデザイン金賞」や「グッドデザイン特別賞」候補にもなる「グッドデザイン・ベスト100」が含まれており、各特別賞は10月28日に改めて発表されるという。

日本デザイン振興会 理事長・大井篤氏は冒頭の挨拶の中で、さまざまな社会的課題に対してデザインがどのように応えていけるのかということをデザインを通じて学ぶとともに、デザインの効果を見極めようという働きかけをしていると述べたのち、今回の受賞作品の傾向について「教育や農業、IoT、地域コミュニティの再生、防災などに関連した作品が多く見られる」と述べた。

続いて、日本デザイン振興会 事業部 部長・矢島進二氏が、2016年度グッドデザイン賞の事業経緯について、「デザインの新しい面の発見と社会との共有」を方針とし、人間的視点、産業的視点、社会的視点、時間的視点という4つの視点に基づいて審査を行ってきたと説明した。

1998年の民営化以降で最大となる4,085件の審査対象作品を、76名で構成される審査委員会が一次審査、二次審査と約5ヶ月間掛けて厳正なる審査を行い、特に二次審査においては応募者と審査員とが直接コミュニケーションする対話型審査を行うことでより精緻な審査になるように心がけたほか、海外での現地審査の実施や海外からの審査員を増員するなど、国際性と地域性を踏まえた審査に取り組んだことを明かした。

そして、2016年度グッドデザイン賞受賞対象の中で、審査委員会により特に高い評価を得た100件が選出される「グッドデザイン・ベスト100」の一部が発表された。100件は「「グッドデザイン賞」Webサイト」にて公開されている。

●グッドデザイン大賞候補6件を発表
次に、グッドデザイン賞審査委員長を務めた永井一史氏は「今年は国内からのエントリーが増えた」と明かし、社会にデザインが浸透してきたと実感したという。今回の受賞作品は多種多様のため「傾向」としてはまとめづらいとしながらも、デザインが色々な領域に広がり、それによって生活や社会のさまざまなレイヤーで優れたデザインが生まれていると述べた。

また、「数年前のベスト100と比べると、より充実したモノを世の中に示すことができたのではないかというのが、我々審査員の実感です」とし、デザインの方向性が時代によって変わってきていると話したほか、昨年から続いているテーマである"フォーカス・イシュー"が審査員にも浸透し、「デザインが社会や暮らしにどのように役立つのかということも含めてしっかり審査して頂いたことが、今回のベスト100の結果に繋がっているのではないかと思う」と審査総評を語った。

また、グッドデザイン賞審査副委員長の柴田文江氏は、ここ数年で審査員のメンバーを見直し、実際のデザインの現場に照らし合わせて議論を深めたと明かした。これまでは作品に対してジャッジをしていたが、今年は「審査員全体でこれからの日本のデザインをファシリテートしていくことが重要だ」と再認識したという。

気になったポイントとして、「色んなメーカー、色んなジャンルの物が補完し合って1つの新しい進化を遂げるような取り組みが多かった」、「実際の生活者、問題の当事者、ハンディキャップを持つ人を巻き込んでデザインをした事例の中に素晴らしいものがいくつか見られた」、「学生服やバケツなど暮らしに根付いた物の中に、革新的な提案がいくつも見られた」ことなどを挙げた。

そして、最後に「グッドデザイン大賞候補」が発表された。候補に選出されたのは、以下の6件。

○乾電池関連製品「MaBeee(マビー)」(ノバルス)

乾電池で動くだけの製品を、スマートフォンで制御できるようになるIoT製品。スマートフォンを振る、傾ける、声を出すなどすることで、電車のおもちゃを速く走らせたり、ぬいぐるみや工作ロボットを動かしたり、歯みがきの時間を知らせたりすることが可能となる。昨年、クラウドファンディング「Makuake」にて資金調達に成功し、製品化を実現した。

○トラクター「YT3シリーズ」(ヤンマー)

日本の農業の新しい姿を提案するトラクター。本体の後部に別の作業機を取り付け、土を耕す耕うん作業をはじめ、溝を掘る、肥料をまく、あぜを塗る、代かきをする等の様々な作業を行ったり、トレーラーをけん引して荷物を運んだりできる。

○賃貸共同住宅「ホシノタニ団地」(小田急電鉄+ブルースタジオ)

座間駅前に所在する昭和40年代築の小田急電鉄の社宅を一般賃貸住宅と市営住宅などの複合施設として再生したもの。1階部分には市営の子育て支援施設と民間によるカフェを誘致し、敷地全体は地域に開放され、その中に貸し菜園やドッグラン等が設けられている。

○本「東京防災」(電通+NOSIGNER+電通テック+たき工房+ブレーンシップ+トランス・メディア+岡村優太)

すべての都民の災害対応力向上を目指し、東京都が配布した「完全東京仕様の防災ブック」。域別の防災MAPなどを付け、去年の防災の日に配布された。視覚障害の方向けや外国語版もある。

○ロボット・プログラミング学習キット「KOOV(クーブ)」(ソニー・グローバルエデュケーション+ソニー)

ブロックで自由な形を作り、プログラミングによって色んな動きを与えて遊ぶロボット・プログラミング学習キット。コンピュータープログラミングを、ブロックによるロボット制作を通じて楽しく学べる。

○世界地図図法「オーサグラフ世界地図」(慶応義塾大学政策・メディア研究科+オーサグラフ)

大きさや形の歪みを抑えた、正確な地球の全体像を示す四角い世界地図。グリーンランドはオーストラリアよりずっと小さいこと、南極はインド洋、大西洋、太平洋全てに面している唯一の大陸であることなどが理解できる。

なお、9月29日〜10月23日、日本デザイン振興会が運営するコミュニケーション・スペース「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京都千代田区丸の内)では、「みんなで選ぶグッドデザイン大賞」展を開催している。会場内には「グッドデザイン大賞候補」6件が展示されるとともに投票所が設置され、一般来場者による投票を実施している。

さらに、同期間の9月29日〜10月23日、東京ミッドタウン・デザインハブにおいて、グッドデザイン賞の審査委員76名のお気に入りや気になった受賞作を紹介する「私の選んだ一品2016」展〜2016年度グッドデザイン賞審査委員セレクション」が開催されている。

結果発表は10月28日で、10月28日〜11月3日に東京都・六本木の東京ミッドタウンで開催される2016年度グッドデザイン賞受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2016」および公式Webサイト上で発表される。

(早川厚志)