ソフトバンクの孫正義社長(2010年5月撮影)

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米インターネット大手ヤフーの中核事業が、米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズにより買収されることになった。ヤフージャパン(日本名「ヤフー株式会社」)は資本、技術面を含め、関係は意外に遠ざかってきていて、直ちに事業への影響はないとされるが、米ヤフーが保有する35.5%のヤフージャパン株の行方によっては波乱もありそうだ。

米ヤフーは1994年に創業、1995年設立で、検索エンジンを軸に多様な情報を束ねる「ポータルサイト」の草分け。電子メールやニュース配信などに手を広げ、一時代を築いた。しかし、米国では後発のグーグルやフェイスブックがネットの枠にとどまらず、さまざまな事業に手を広げるのとは対照的に、斬新なサービスが打ち出せない米ヤフーの業績はじり貧になっていて、存在感は薄れる一方だ。

ソフトバンク関係者「経営戦略には当面、影響はない」

2016年7月の買収発表などによると、米ヤフーの中核事業でベライゾンに売却されるのは、ニュースやメール、ネット広告など。ベライゾンは買い取ったヤフーのブランド力を活用し、昨(2015)年買収した米ネット大手AOLとネット分野で相乗効果を狙う。ヤフージャパンが支払っている年間100億円程度とされるライセンス料は、ベライゾンに支払われることになる。

米ヤフーは社名を変更し、投資会社として生き残りを図るという。問題はヤフージャパンにおける米ヤフーのウェートだ。ヤフージャパンは、ソフトバンクグループが発行済み株式の36.4%、SBBM(同グループの子会社)が6.6%、計43%を握る筆頭株主だ。米ヤフーは35.5%を保有する第2位株主となっている。米ヤフーの事業売却をめぐっては、米ベライゾンがヤフージャパンの保有株式も合わせて取得するとの米紙報道もあったが、今回はアリババ株とともに米ヤフーが保有を続けることになり、ソフトバンク関係者は「経営戦略には当面、影響はない」と話している。

米ヤフー幹部はヤフージャパン株売却に含み

経営面で日米のヤフーは「親子逆転」といわれるように、米ヤフーが最終赤字なのに対して、ヤフージャパンは黒字経営が続く。調査会社ニールセンによると、2015年の日本のパソコン利用者数でヤフーは業界首位、スマートフォンでも2位で、米ヤフーの凋落ぶりとは対照的だ。「日本のユーザーはニュースから天気、株価まで一覧できるヤフーのポータルサイトに慣れている」(業界関係者)とされ、日本ではヤフーのサービスをパソコンからスマホにスムーズに移行させることができた。

しかし、今後の米ヤフーの経営方針しだいでは、保有するヤフージャパン株を売却する可能性が指摘されている。これまで市場では、「ソフトバンクグループがヤフージャパン株を買い増すのではないか」とささやかれてきたが、英国の大手半導体設計会社ARMホールディングスを約240億ポンド(約3.3兆円)で買収する、と発表したソフトバンクグループに資金的な余力はないとみられている。

ソフトバンクグループにとって、ヤフージャパンは稼ぎ頭のひとつ。ベライゾンへの売却発表後の電話会見で、米ヤフー幹部はヤフージャパン株売却含みを残した。もし、米ヤフーがヤフージャパン株を売却した場合、第三者が株式の公開買いつけ(TOB)などを仕掛け、ヤフージャパン株の過半を取得する可能性もある。それが、ソフトバンクグループが最も恐れる事態に違いない。いずれにせよ、少しでも立ち止まれば取り残され、身売りさえ与儀なくされるネットの世界。「ヤフージャパンの事業がマンネリ化しないよう、常に挑戦し続けなければいけない」と語るヤフージャパン取締役でもある孫正義・ソフトバンクグループ社長の次の一手に注目が集まる。