これまでにも再三述べてきたが、香川のポジショニングなどはその最たる例だ。4−2−3−1の3の左を任されながら、先日のメッシのように、ほぼ常時、真ん中でプレーしてしまった悲劇を、ブラジルW杯初戦、対コートジボワール戦で味わうことになった。原博実専務理事(当時)は、帰国後、こちらのインタビューに「日本の左サイド(香川)の動きは、相手に研究されていたようだ」と答えたが、これなどは「アトレティコ」とそれまでに対戦してこなかった悲しさに他ならない。アジア周辺の弱小相手には許されたが、本大会では許されなかった。コロンビア戦の戦いしかり。ピッチのド真ん中で、逆モーションになるようなボールの奪われ方を繰り返せば、失点の山を築くであろうことは、CLレベルの試合を体験すれば、一発で理解できるはず。

 日本はW杯本大会で初めてその洗礼を浴びた。監督がザッケローニであるにもかかわらず。そうした視点をハリルホジッチにも傾ける必要があるのだが、例えば、先日、シリア戦後の記者会見で述べた「攻撃のオーガナイズが少し崩れてしまい、そこを相手にうまく突かれてしまった。ただ、相手も強いチームだったことを考慮すべきだし、実際に、よい選手もいた……」とのコメントを耳にすると、怪しさを覚えずにはいられなくなる。

 シリアは本当に強い相手だろうか? 本当に、よい選手はいただろうか?

 シリアは、最終予選に進んだ10チームの中で、おそらく最も弱い国。できれば日本のグループに入って欲しかった国だ。4−2−3−1の3の右を任された本田が、そこに全然いなくても、全く問題が起きなかった弱者だ。この調子では、最終予選さえ危ぶまれる。活動範囲が年々狭くなる日本。狭い世界から抜け出せなくなっている日本。「世界を驚かすサッカーを!」と言われても、そうだ! と膝を叩き、納得することはできないのである。