福岡県からは3月に全店舗撤退した。写真は閉店前の福岡天神地下街店。
 店舗数国内2位のドーナツ専門店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」(以下、クリスピークリーム)の閉店が止まらない。

 今年に入り、京都府、広島県、福岡県などから全面撤退したのをはじめ、都内でも神田小川町や阿佐ヶ谷、玉川郄島屋の店舗が閉鎖となってしまった。

◆米大手ドーナツチェーン、順調に店舗数を伸ばしてきたが……

 クリスピークリームはアメリカで1937年に創業したドーナツチェーン。日本国内では、2006年にロッテが「クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン」を設立し、同年12月に国内1号店となる「新宿サザンテラス店」を出店、日本上陸を果たした。

 出店当初は主力商品である「オリジナル・グレーズド」の無料配布サービスを行い、平日でも1時間を超える行列が発生したことで注目を集め、既存のドーナツ専門店の2倍ほどの価格帯ながら順調に顧客の支持を獲得。クリスピークリームと同時期に参入した高価格ドーナツ店「ドーナッツプラント」、「サザンメイドドーナツ」が運営会社の経営悪化により店舗数を大幅に減らした一方で、ロッテが親会社の「クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン」は順調に店舗網を拡大していた。

◆相次ぐ全面撤退。大都市圏でも

 順調に見えたクリスピークリームの店舗網拡大だったが、2016年に入ると状況が一変する。1月に岡山市、福岡市から一気に全面撤退したのを皮切りに、2月には広島県、京都府からも全面撤退。相次ぐ撤退は地方のみに留まらず、大阪では2015年12月末になんばCITY店が、都内でも2016年2月に神田小川町店が、3月にディラ阿佐ヶ谷店と玉川郄島屋SC店が閉鎖となっている。

 特に、ゆめタウン廿日市店(広島県廿日市市)は開店から僅か8ヶ月間の営業となり、国内の常設店舗としては最短。従来の拡大路線からの方向転換を大きく印象づける結果となった。

◆好調な催事販売、新たな収益源となるか?

 クリスピークリームは店舗網の縮小を続ける一方、埼玉県北部や新潟県、鳥取県など、といった未出店地域の百貨店などでの催事販売は活発化させている。

 既に出店済の地域ではブームの沈静化による客離れが見られるが、スターバックスコーヒーの鳥取県初進出時(2015年5月)には、開店前日から行列が発生したように、未出店地域においては「デパートの催事でしか買えない」という「物珍しさ」も相まって、需要が見込めると判断したのであろう。

◆米国でもあった大規模撤退。販売手法転換で活路

 クリスピークリームが創業したアメリカでも、かつては日本と同様に大規模な店舗閉鎖が行われている。

 米国クリスピークリームは、株式上場前後の1990年代後半から米大手スーパーのウォルマートと業務提携するなどして急速な多店舗化を図ったが、2000年代には経営悪化により店舗の半数以上(約240店)を閉鎖した。

 実は、アメリカではクリスピークリームと言うと日本のようなカフェスタイル・単独店舗での販売ではなく、スーパーマーケットで販売されているドーナツをイメージする人も多い。現在、欧米のクリスピークリームでは無店舗販売によるコスト削減を進めており、駅やスーパーマーケット内でのワゴン販売が主流となっているのだ。

⇒【画像】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=85910

 日本でも、近年はコンビニ大手各社が店頭でのドーナツ販売を始めるなど、従来型のドーナツ専門店とは異なる販売手法が取られるようになっている。今後は、クリスピークリームも「単独店舗」という形態にとらわれない新たな販売手法を目指していく可能性がある。<取材・文・写真/都市商業研究所>

【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中
・ダイエー「旗艦店級」28店舗、3月1日からイオンに転換
・2016年度に閉店予定の主な商業施設
・ネット通販大手「駿河屋」初のリアルショップが高槻に開店-その出店理由とは?