関連画像

写真拡大

改正道路交通法が6月1日から施行され、自転車への取り締まりが強化される。新しいルールでは、14項目の「危険行為」が定められ、3年の間に2回以上の摘発を受けた人には、安全講習を受講することが義務付けられる。

健康志向の高まりから、自転車を利用する人が増えているが、自転車に乗りながらスマートフォンを操作したり、信号無視を繰り返したりするなど、危険な運転をするサイクリストが問題視されている。

今回の改正で、無謀な運転は厳しく取り締まられるのだろうか。改正のポイントについて、道路交通法にくわしい池田毅弁護士に聞いた。

●講習の制度が整備された

「今回、新たに危険行為の類型が定められたのは、道路交通法そのものではなく、自転車の講習に関する『道路交通法施行令』の改正によるものです。

ですから、6月1日以降も、これまでどおり、自転車による悪質な交通違反は、刑事裁判を受ける可能性があることにかわりはありません」

(6月2日コメント削除・追記)

警察庁に取材したところ、講習の義務づけは、(1)危険行為について警察から受けた「指導警告」に従わず、刑事処分の対象となる「赤切符」を切られた場合、(2)危険行為が原因で事故を起こして刑事処分の対象になった場合、の2つに限定して運用される。

●「よくみかける違反類型」が対象に

今回規定された14項目の危険行為には、どんなことが定められたのだろうか。

「現在でもよくみかける違反類型です。

たとえば、自転車は原則として一番左の車線を走行しなければなりませんが、中央よりの車線を走行している自転車も少なくありません。

また、自転車が歩道を走行する場合、徐行することが原則です。速く走るために警笛を鳴らして歩行者をどかせることはできないはずですが、そのような光景をよくみかけます。一時停止や信号に従わない自転車も少なくありません。

このような違反を、3年の間に2回、警察に摘発されると、講習を受ける義務があり、講習を受けないと罰金となってしまうこともあります」

この講習制度は、自動車の反則金制度のようなものだろうか。

「自動車の反則金制度は、反則金を払えば訴追されないと明文上規定されています。これに対して自転車の場合は、そのような条文はありません。

ですから、講習を受けるかどうかとは関係なく、重大な違反ありとして摘発されれば刑事手続となる可能性はあります。その意味では、全く異なる制度です。

軽微な違反については、ただちに刑事手続にせず、講習を受けてもらうという運用が行われれば、実質は反則金制度のようなものになるかもしれません」

池田弁護士はこのように述べていた。

<コメントの削除・追記について>

6月1日に警察庁に取材したところ、記事作成時点では明らかではなかった運用を予定しているとの回答を得たため、以下のコメントを削除。警察庁の見解を追記しています。

「これまでは、自転車の交通違反で摘発された場合、反則金制度がなく、すぐ刑事手続となってしまうため、重大でない違反については、警察も摘発をためらうことがあったようです。しかし、今回、講習の制度が整備され、いきなり刑事手続にせずに講習で済ませることができるため、これまで摘発されなかった、重大でない違反も、摘発されやすくなるということが考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
池田 毅(いけだ・たけし)弁護士
現在、(公財)日弁連交通事故相談センタ−本部嘱託や、裁判所の公職などを務める。得意案件は交通事故のほか、相続問題、不動産取引、離婚事件、少年事件など。
事務所名:東京つばさ法律事務所
事務所URL:http://tokyotubasa.com