映画独自解説家・守鍬刈雄が、YouTubeチャンネル「守鍬 刈雄のお暇なら映画でも」にて動画を公開した。ホメロスの神話『オデュッセイア』第5歌から第8歌を対象に、クリストファー・ノーラン監督による再解釈版の映画が原作から何を削り、どう改変したのかを解説。ノーラン版は原作の根底にある思想を大胆にカットし、主人公が自らの記憶と向き合う孤独な旅へと変貌させていると結論付けている。

※この記事には映画のネタバレが含まれています。

冒頭で守鍬氏は、ノーラン版が「ホメロスの映像化ではなく、ノーランによる再解釈である」と定義。その最たる例として、原作の思想である「人はひとりでは帰れない」というメッセージが、ノーラン版では完全に排除されていると指摘した。原作では主人公オデュッセウスの帰郷に神々や人々の助けが不可欠だったが、映画では自力で困難を乗り越える孤独な構造に変更されているという。

具体的な変更点として、神々の会議や伝令の神ヘルメスの全カットを挙げる。原作では神の命令によってしぶしぶオデュッセウスを解放した女神カリュプソだが、映画では二人の関係性の中で決着がつく展開に改変された。さらに、パイアキア人の王女ナウシカアが登場し、古代ギリシャの掟である「客人の歓待(クセニア)」を描くエピソードも全て削除されている。

また、原作に登場する「ロートパゴイ(ハスを食べる者)」の描写の違いにも言及。原作のハスは帰郷の意志を忘れさせるものだが、ノーラン版では過去の辛い記憶をなくす精神的な役割として描かれている。守鍬氏は、原作のオデュッセウスが永遠の幸福を捨てて死すべき人生に戻るのに対し、ノーラン版では「苦痛のない忘却を捨てて、苦しい記憶を持つ自分に戻る」決断を下していると解説した。

他者との関わり合いを示す「客人の歓待」すらも省き、英雄の孤独な内面へと焦点を当てたノーラン版『オデュッセイア』。神話の壮大な冒険譚を、一人の罪人が記憶と向き合う心理劇へ昇華させた監督の独自解釈が浮き彫りになる、映画ファン必見の解説となっている。

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