画像は「野球日本代表侍ジャパンオフィシャルサイト」より

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 侍ジャパンvs欧州選抜の強化試合が、3月10日より東京ドームで行われる。日本代表はシーズン開幕前のため、若手中心の代表選出。しかも相手の欧州選抜にはメジャークラスがいないこともあり、先日の日米野球と比べると盛り上がりに欠けているのは否めない。

 しかし、近年の欧州の野球事情は、MLBからの出資で環境が整い野球人気が上昇中。それに伴い、選手の実力は確実に上がっている。前回のWBCでは、オランダ代表がベスト4、イタリア代表がベスト8に入っているのがその証拠だ。

 そこで、今大会の見所、注目すべき選手を紹介してみたい。

チーム最年少の松井祐樹は躍動できるか

 まずは、侍ジャパンが今大会で掲げたテーマじから、注目の日本人選手を紹介。今大会は、今シーズン後に開催されるWBCプレミアム12に向けての強化にほかならない。会見の席上、小久保監督は、「全選手をしっかりと使い切るということを一つのテーマに挙げながら2日間、しっかりと戦いたい」と述べている。つまり、若手選手を試す事に重きを置いているのだ。

 まず、投手では、初選出でチーム最年少の楽天イーグルス・松井祐樹。昨シーズン、新人ながら開幕ローテーション入りし27試合に投板。制球に苦しみ2軍落ちを経験しながらも4勝を挙げる活躍を見せた。特筆すべきは、その奪三振の多さだ。昨シーズンは116イニングで両リーグの新人最多の126奪三振。視界から消えると称される縦スライダーが、欧州代表にどこまで通用するのか楽しみなところだ。

 また、第1戦の先発が予想される、広島カープの大瀬良大地にも大いに注目したい。昨シーズンは10勝をあげ新人王を獲得したものの、シーズン中盤で安定感を失い防御率は4.05と決して高水準とは言い難い。しかし、シーズンを通してローテーションを守った事や、CSで見せた快投から今シーズンのさらなる進化に期待が高まっている。欧州代表をねじ伏せる快投を期待したい。

 ほかにも、昨シーズン新人ながら67試合に投板した中日ドラゴンズの又吉克樹、侍ジャパンのクローザー候補、読売ジャイアンツの澤村拓一らの活躍に注目が集まっている。

投手から転向した雄平に期待

 野手では、昨シーズン大ブレークしたヤクルトスワローズの雄平。雄平は、高校当時NO.1左腕と騒がれ、2002年のドラフト会議で競合の末に投手として入団。最速151kmの速球で期待されたが、制球難が克服できず7年間で18勝と、結果を残せず2009年に打者に転向した。そこから5年、ケガを乗り越え昨シーズンついに爆発。.316/23本塁打/90打点でベストナインを獲得するに至った。154kmという驚異的なスイングスピードが武器の思い切りの良い選手。欧州相手にも、その思い切りの良いバッティングでの活躍が期待される。

 そのほかの野手では、カープの菊池涼介、スワローズの山田哲人の両二塁手にも注目だ。先の日米野球でメジャーリーガーたちも驚愕した菊池の守備。昨シーズン、セ・リーグ日本人最多、28本塁打を放った山田の長打力。共に3割打者という事で甲乙つけ難く、どちらが侍ジャパンの正二塁手となるのかという点にも注目が集まる。

メジャー予備軍がひしめく欧州代表

 対する欧州選抜は、あくまで挑戦者というスタンスで挑んでくる。欧州でもテレビ中継が行われるため、野球人気のためにも無様な試合はできない。欧州選抜は、オランダ14人、イタリア6人、スペイン4人、ドイツ2人、チェコ1人、フランス1人という人数構成で、オランダを中心にした布陣になっている。

 オランダは前回WBCでベスト4に入る等大旋風を巻き起こす活躍を見せるなど、その野球レベルの高さは周知の事実。また、領事地区である中南米のキュラソー島、アルバ島からは、多数のメジャーリーガーを輩出している事でも有名。本塁打日本記録保持者ウラジミール・バレンティン(スワローズ)もキュラソー出身の野球選手だ。

 そんな欧州オランダ勢の注目選手は、まずは投手陣を支えるベテラン、ロブ・コルデマンス。この名前を覚えている方は、相当の野球通だ。コルデマンスは、2013年WBCで、オランダ代表のエースとして侍ジャパンと対戦。勝てば最終ラウンド進出がかかる一戦を任されたのは、当時38歳のコルデマンス。アトランタ五輪から代表入りしているオランダの大黒柱に最終ラウンド進出の夢を託したオランダであったが、結果は16-4の歴史的惨敗。先発を任され大炎上となったコルデマンスは「この敗北は私の経歴の汚点となった」と、コメント。悔しさを滲ませた。

 あの敗戦から2年、41歳となったコルデマンスは再び侍ジャパンと対戦する機会を得た。前回の対戦のリベンジを果たすべく燃えているのは間違いないだろう。ベテランの投球に要注目である。ほかにもオランダからは有能選手が多数来日。長打力と勝負強さが売りのカート・スミス。2013年WBCでキューバを沈めた男、カリアン・サムス等に注目してみたい。

欧州の二刀流選手が来日

 オランダ以外では、ドイツから選出された、ルーク・ソマー。このソマーは、ドイツリーグで二刀流選手として活躍しているのだ。投手としては10試合登板で8勝0敗1セーブ、防御率は1.05と圧倒的。投板日以外は外野手として出場。打撃成績は.362の高打率とリーグ2位の5本塁打、投打共に一流の成績を収めている選手なのだ。侍ジャパン相手に二刀流を披露できるのか注目してみたい。

 才能溢れる選手が大挙来日する今大会。侍ジャパンも、決して楽観視できる布陣ではない。また、近い将来メジャーや日本でプレーする選手がいるかもしれない。今大会で目をつけておくのも楽しみ方のひとつと言えるだろう。

(取材・文/井上智博)