相撲人気復活なるか

写真拡大

大相撲九州場所の最大の話題だった逸ノ城が若さをさらけ出している。そのうえ負けた取り口に対して専門家から厳しい批判が相次いでいる。

逆風にホープも戸惑い気味だ。

立ち会いに変化し、自滅

批判の嵐が吹き荒れた一番は8日目(2014年11月16日)の栃煌山に敗れたとき。それも立ち会いに変化し、自滅。

「なんというケチな相撲なんだ」

こんな痛烈な声が親方たちから出た。栃煌山戦では立ち会いで突っかけ、待ったの状態の後、変化した取り口で、先場所何度も成功した手を使った。

上位に対してこんな作戦が毎場所通じるわけはなく、新聞でもその取り口を厳しく指摘された。

「(変化は)頭にあった」と栃煌山はそう振り返った。読まれていたのである。

さらに親方たちの声が飛ぶ。身内だけに、その内容は激しい。

「ああいう相撲を取っていたのでは、とても綱(横綱)は無理」
「魅力半減だな。育てるという気にならないよ」

新入幕だった9月の秋場所で横綱鶴竜を破り、大関陣にも勝った。豪快な取り口で、一躍ヒーローとなった。新進の遠藤がもたもたしていただけに、逸ノ城への期待はより高まった。

逸ノ城ブームを察知してか、協会は一気に関脇へ大躍進させた。それだけに風当たりは半端ではなく、きっかけがあれば批判が吹き出す状態での今場所だった。

大相撲の世界に入ってまだ2年

翌日の横綱白鵬との一番では、組んだとたん投げ飛ばされた。

「(オレと)長い相撲を取るのは、まだ早いな」

白鵬は軽く言い放った。先場所優勝した後、白鵬逸ノ城の健闘をたたえ、大相撲人気の復活のヒーローとまで言った。それがこうまで言わせることになったのは失望したからだろう。モンゴルの後輩として期待しただろうから、なおさらきつい言葉になったのだと思う。

「変化して勝っても次につながらない」
「汗もかかずに楽をして勝ったら出世などできない」

こんな指摘もある。確かに大関、横綱になった力士は正攻法の相撲を取ってきた。そうしないと上位力士の強さが分からないし、稽古の仕方も違ってくる。

ただ逸ノ城大相撲の世界に入って2年ほどしか経っていないことも周囲は考慮する必要がある。まだ右も左も分からない状態だし、相撲の取り方も未熟だ。今は大きな体とパワーを生かした力ずくの相撲でしかない。

おそらく逸ノ城は、とにかく勝つ、ということしか頭にないのだろう。プロだから当たり前のことなのだが、大器ゆえに周りの声はかまびすしい。直属の親方の指導は、本人、大相撲のために重大である。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)