コルト一族40人が暮らす“Farm”(画像はdailytelegraph.com.auのスクリーンショット)

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性的暴行、虐待という言葉に加え、近親相姦という言葉までもが飛び交う、そんな裁判がオーストラリアで結審した。「この母親の親権を認めるか、計画のみで未遂に終わった誘拐を実刑判決とするか」が焦点となっていたその裁判。産みの母親にも法は実に厳しい判決を下したようだ。

豪ニューサウスウェールズ州モスベールでしばらく前にベティー・コルトという48歳の女が逮捕され、慎重なヒアリングが続いた末に、このほど懲役12か月の実刑判決が言い渡された。近親相姦、誘拐、レイプ、ネグレクトに盗聴。かつてないほど複雑な要素が絡み合った家庭内トラブルの事案に、モスベール裁判所の判事もかなり頭を悩ませたもようだ。

ベティーが逮捕された理由は、未遂に終わったものの、里親に育てられていたボビー君(16)、ビリー君(15)という実子の誘拐を企てたことにあった。息子たちは携帯電話を持っており、ベティーはこっそりと自分の番号を記したメモを忍ばせて贈り物を届け、ボビー君と極秘に連絡を取り合うようになっていた。そこでボビー君には、弟のビリー君をうまく説得して2人で里親の家から逃げ出すよう示唆したという。ベティー側は「息子たちと一緒に暮らし、親権を奪還したかっただけです」と主張しているが、検察側の「ベティーが子供たちを住まわせようとしていた場所は、不潔で家具すらない “Farm”と呼ばれる劣悪な環境で、ネグレクトおよび虐待に相当します」という主張に軍配が上がった。

その息子たちに精神遅滞、識字障がいなどが認められたことで、この誘拐未遂事件はさらに複雑なものへと発展した。その“Farm”ではコルト一族の約40名が共同で暮らしており、そこでは近親相姦が蔓延していたことから州の児童保護当局は彼らの通話を盗聴して監視を続けていたという。たとえばベティーは13人の子を出産したが、そのほとんどがレイプか近親相姦によるもので、特に遺伝子検査で近親相姦が証明された5人の子供には障がいが認められている。それにもかかわらずベティーの長女タミーさんは長男デレクさんと肉体関係を持ち続け、3女をなしている。

実子と一緒に暮らしたいというのが母親の純粋な願いだとすれば、情状酌量の余地はなかったのかと疑問の声もあるようだが、法が裁く以外にこのコルト一族の不潔で良識に欠けた暮らしぶりに活を入れる方法はなかったといえそうだ。仮釈放なしで最低9か月間は檻の中で過ごすよう言い渡されたベティーは、娘のひとり、レイリーンさんを強く抱きしめると刑務官に支えられながら法廷を後にした。

※ 画像はdailytelegraph.com.auのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)