明秀学園日立vs石岡一
先発した高崎大幹（石岡一）
ひたちなか市民球場で行われた、秋季茨城大会準決勝第2試合は、第3シード・明秀学園日立と第2シード・霞ヶ浦を破った（試合レポート）石岡一というカード。勝てば関東大会の出場権が得られる大一番は、3時間30分にも及ぶ延長13回の死闘となった。
石岡一の先発は背番号11の高崎大幹（1年、玉造中）が、明秀学園日立の先発はエース・孫大 怜也（2年・尼崎ボーイズ）がそれぞれ任された。
9回までの試合展開を振り返ると、まず石岡一が1回表に先頭の1番・土井活平（1年、鉾田南中、オール茨城）が四球で出塁すると、4番・岩本泰樹（2年、八郷南中）の適時レフト前ヒットで1点を先制する。（石岡一1対0明秀学園日立）
追いかける明秀学園日立は、3回裏、先頭の7番・糸野雄星（1年、和歌山キングタイガース）が左中間二塁打で出塁すると、返球がもたつく間に三進。9番・内田智也（1年、いわきシニア）のレフト犠牲フライで同点に追いつく。（石岡一1対1明秀学園日立）
4回以降、石岡一は3度、明秀学園日立は1度だけスコアリングポジションにランナーを進めるが、両者一歩も譲らない。試合は1対1のまま延長戦に突入する。
二番手のエース・木村玲央（石岡一）
ここまで石岡一は6安打を放ちながらも、牽制刺殺や盗塁失敗などがあり、得点に結びつけられない。一方、明秀学園日立が放った安打はわずかに1本。5回から投入された石岡一エース・木村 玲央（2年、土浦三中）の前にノーヒット。出塁できたのは四球のランナーのただ1人だけだ。ここまではどちらかというと、試合の流れは石岡一に傾いているようだ。
10回表、石岡一が虎の子の1点を奪う。一死から1番途中交代・濱田虎太郎（1年、八郷中）がライト越え二塁打で出塁すると、2番・飯泉 拓郎（2年・取手シニア）の三遊間を破るレフト前ヒットで1点を勝ち越す。なおも3番・本多 啓直（2年、園部中）が四球で出塁し、一死一、二塁とチャンスを広げる。ここで、明秀学園日立は先発の孫大を諦め、2番手に津山裕希（2年・加美ウイングス）を送り、後続を断つ。（石岡一2対1明秀学園日立）
10回裏、ここまで1安打の明秀学園日立に2本目のヒットが生まれる。先頭の4番・中村健（2年・埼玉SPベースボールクラブ）がレフト線寄りのヒットを放つと、長打警戒でフェンス際まで下がっていたレフトの捕球が遅れるとみるや、一気に二塁を落とし入れる。
続く5番・永濱 滉汰（2年・水戸東シニア）が送って一死三塁から、この日、4番から6番に降格した有住隆哉（2年・山形七中）が、前進守備の一・二塁間を抜き、同点に追いつく。
なおも盗塁と犠牲フライで二死三塁と一打サヨナラのチャンスを迎えると、三走・有住は、8番・津山の2球目でホームスチールを試みる。しかし、津山に走塁のサインが伝わっておらず、捉えた打球はファールとなる。スタートのタイミングが絶妙だったのでもったいない。なおも、カウント1ボール2ストライクとし、三走・有住は、4球目で再びホームスチールを敢行する。しかし、今度はスタートのタイミングが悪く、ホーム手前で悠々タッチアウト。この回を同点で終える。（石岡一2対2明秀学園日立）
3番・本多啓直（石岡一）
11回表、同点に追いつかれた石岡一は、先頭の田中悠也（2年、府中中）がフルカウントからライト脇に落とす二塁打で出塁すると、送って一死三塁の大チャンスを迎える。しかし、後続が倒れ勝ち越せない。
12回表、先頭の1番・濱田が四球で出塁すると、2番・飯泉の送りバントが相手のエラーを誘い、無死一、三塁のチャンスを迎える。ここで、3番・本多は飛距離十分のセンター犠牲フライを放ち、1点を勝ち越す。（石岡一3対2明秀学園日立）
12回裏、明秀学園日立は1点を勝ち越されながらも、二死無走者となりもう後がない。しかし、ここからとてつもない粘りを見せる。4番・中村が三遊間を抜くヒットで出塁すると、広めのワンウェイリードで石岡一・木村に相当のプレッシャーをかけ、8個もの牽制球を投じさせる。
続く5番・永濱のカウント1-1から、一走・中村はスタートを切りエンドランを仕掛ける。永濱が放った当たりは左中間に落ちるシングルヒットとなり、スタートの良かった一走・中村は、一気にホームを落とし入れ同点に追いつく。
なおも二死一塁から、6番・有住の初球で同じようにエンドランを仕掛けて二死一、三塁。盗塁で二死二、三塁とすると、7番・高橋雄太（2年、東海中）は敬遠で二死満塁のサヨナラのチャンスを迎える。しかし、8番・津山は空振り三振に倒れる。（石岡一3対3明秀学園日立）
13回表、またしても追いつかれた石岡一は、先頭の6番・田中がこの日3本目のヒットで出塁すると、7番・飛田直樹（1年、笠間中）はファースト前に送りバントを試みる。しかし、ファーストの猛チャージにより二塁封殺。送りバントは失敗に終わる。続く8番･土田は送って二死二塁とするが、9番・木村はレフトフライに倒れる。
13回裏、明秀学園日立先頭の9番・遊佐駿平（2年、古川南中）のショートゴロがファーストへの暴投となり、一気に二塁へ進むと、1番途中交代･佐藤侑耶（2年、戸倉上山田中）のサードへの送りバントが内野安打となり、盗塁を成功させ無死二、三塁とする。続く、2番・村瀬賢太（2年、仙台北シニア）は四球で無死満塁とし、迎える3番途中交代・塚原大成（2年、東京青山シニア）への2球目がベース上でバウンドするワイルドピッチ。三走・遊佐が生還し、試合終了となる。（石岡一3対4X明秀学園日立）
明秀学園日立が延長13回、石岡一に4対3とサヨナラで勝利し、8年ぶり2度目の関東大会出場を決めた。
9回まで、明秀学園日立打線はたった1安打と完璧に封じ込まれ、石岡一ペースで進んだ試合だった。しかし、延長に突入してからの明秀学園日立は、息を吹き返したかのように粘りに粘ってチャンスを作り、新チームから取り組んできた積極的な走塁技術を遺憾なく発揮して、得点に結びつけることができた。
10回に2度に渡ってチャレンジしたホームスチールは、一見無謀なようにも思える驚くべき作戦だったが、相手に足を使った攻めがあることを強烈に印象付けるものとして、効果を発揮した。
また、延長12回の得点につながる、二死一塁からの一走・中村健の離塁の速さとリード幅の広さは、ピッチャーにかけるプレッシャーが大きく、牽制を数多くもらう中で、ピッチャーの集中力をそぎ落とすことにつながった。石岡一・木村 玲央は通常スライダーとスクリューボールでピッチングを組み立てるが、このときばかりはストレート中心になった。そこを連打でたたみ掛けたのは見事であった。
先発のエース・孫大怜也（明秀学園日立）
2012年9月に監督に就任した金沢成奉監督は、当時の就任会見でこのような発言をしている。「守り勝つ野球を浸透させた上で最終的には攻撃型のチームを作り、3年以内に甲子園出場を果たしたい」この試合に勝利し、関東大会出場を決めた明秀学園日立。この発言がいよいよ現実味を帯びてきた。関東でも2勝し、一気にセンバツまで突き進んで欲しい。
敗れた石岡一は、終始試合のペースを掴んでいたものの、明秀学園日立・孫大 怜也の粘りの投球の前に、9回までに勝ち越し点が奪えなかった。先発した高崎大幹は、4・2/3を被安打1、与四球2、失点1と期待に応える投球だった。
また、5回途中からマウンドに上がったエース・木村は6回から9回を3者凡退に斬って取る素晴らしい内容で、明秀学園日立を完璧に封じ込めた。延長に突入してからは明秀学園日立の各ランナーからプレッシャーを受けながらも粘りっていたが、味方のエラーで出したランナーを、最後はワイルドピッチで返してしまうという、好投が報われない結果となってしまった。
先のことを言うが、石岡一は、今大会の内容によって、茨城県の21世紀枠推薦校になることはまず間違いないだろう。戦力的にも、近年の県推薦校の中では最強の部類なので、21世紀枠出場の吉報も楽しみにせざるを得ない。
（文＝伊達 康）
