藤代vs霞ヶ浦
茨城大会決勝は、第2シード・霞ヶ浦と、第5シード・藤代の顔合わせとなった。この両チームは昨秋県大会3回戦で対戦し、8対0で霞ヶ浦がコールド勝ちを収めている。
今大会、霞ヶ浦は、ここまで5試合全てにエースの上野 拓真（3年、取手シニア）が、全42イニングのうち34イニングに登板し、防御率は1.30。打線は中軸に快音が今ひとつ聞こえず、チーム打率は.289と低迷し、予想外の接戦を強いられ、なかなか上野を温存することができなかった。
一方、藤代は、ここまでの5試合、全44イニングのうち、エースの竹内 悠（3年、中根台中）が29イニングに登板。こちらも防御率は1.24と、申し分のない成績を残した。また、チーム打率は.363と霞ヶ浦のそれを大きく上回る。
加えて、2回戦では今大会注目の下館工・谷中 規彦に打ち勝ち、準決勝では茨城2強の一角であり、好投手・金子 雄太、高畑 悠を擁する常総学院を5対1で下すなど、県内でも指折りの右腕に対して、強力打線で打ち勝ってきた。
前日の準決勝では両チームともエースが9回を完投している。疲労の抜け具合が心配されるところだが、この決勝の大舞台でも両エースが先発を任されることとなった。
試合は序盤から藤代強力打線が霞ヶ浦・上野を襲う。
1回表、藤代は一死から、2番・文成太紀（3年、城西中）がセンター前安打で出塁。3番・飯塚 幸大（2年、野田二中）は死球で一死一、二塁とすると、4番・根本 文弥（3年、取手シニア）が一・二塁間を抜けるライト前安打を放ち、1点を先制する。さらに、5番・小林慧太（3年、守谷シニア）はレフト前安打で1点、この日1番から6番に下がった古谷 勇斗（3年、取手シニア）は四球でつなぎ一死満塁とする。続く7番・濱渡遼（3年、取手シニア）は押し出しの四球で1点。8番・高橋卓久真（3年、取手シニア）はキャッチャーファールフライに倒れるが、二死満塁からさらに9番・竹内がセンター前2点適時安打と続き、4つの短打と3つの四死球で、この回一挙に5点を先制する。
藤代の猛攻はさらに続く。3回表、藤代は先頭の5番・小林がエラーで出塁すると、送って一死二塁とする。迎える7番・濱渡は初球のインハイストレートを強振。打球はレフトへのホームランとなり、藤代が2点を追加する。
序盤に7対0と大量リードを許した霞ヶ浦だったが、ようやく反撃に出る。二死から2番・村上孝太郎（3年、取手シニア）が四球で出塁すると、3番・菅原 直輝（3年、取手シニア）がレフト前安打で二死一、二塁とする。ここで、今大会打率1割台と不振にあえぐ4番・平瀬 翔梧（3年、龍ヶ崎シニア）がこの日2本目の安打となる適時二塁打を放ち、霞ヶ浦が1点を返す。
7対1と藤代リードのまま試合は中盤を迎える。
5回表、霞ヶ浦先発・上野が一死から四球を与えたところで、霞ヶ浦ベンチが動く。上野に代えて安高 颯希（2年、桃山中、オール茨城）がマウンドへ送られる。
藤代は、一死一塁から7番・濱渡がライト前安打でつなぎ、返球が逸れる間に走者・古谷が一気にホームを落とし入れ、さらに1点を追加する。
7回表、藤代は4番・根本がレフト前安打で出塁すると、ボークで2進。バント失敗と死球で一死一、二塁から、7番・濱渡がこの日3本目のヒットとなるレフト前適時安打で1点、さらに返球処理にもたついている間に走者・古谷まで生還し、1点を追加する。打者走者・濱渡は2進し、8番・高橋の初球で盗塁を成功させ、一死三塁とチャンスを広げる。9点差ある終盤、高橋はここで意表を突くスクイズを試みるも、ピッチャー正面の小フライとなり、意外すぎる奇襲策は失敗に終わる。
10対1と9点のビハインドで迎えた7回裏、霞ヶ浦は、またしても二死から連打が生まれる。1番・戸部将稀（3年、伊奈東中）がセンター前安打で出塁すると、2番・村上がライト前安打で続き、返球が逸れる間に二死二、三塁とする。ここで、3番・菅原はレフトオーバーの2点適時二塁打を放ち、霞ヶ浦が2点を返す。
ここで今度は藤代ベンチが動く。先発の竹内に代えて、大型右腕・山崎 誠（2年、流山ボーイズ）をマウンドへ送る。続く4番・平瀬は四球で出塁し、ダブルスチールで二死二、三塁とするが、5番代打・佐野如一（1年、土浦霞ヶ浦ボーイズ）はファーストゴロに倒れ、この回を2点で終える。
8回表、藤代先頭の1番・織田 航平（2年、取手シニア）がレフト線二塁打を放ったところで、霞ヶ浦ベンチは安高に代えて3番手に綾部 翔（2年、取手シニア)を投入する。綾部は後続を無安打に抑え、この回を無失点で凌ぐ。
9回表、藤代はなおも手を緩めない。先頭の5番・小林賢二郎（3年、都和中）が四球で出塁すると、送って一死二塁。迎える7番・濱渡はレフト前適時打を放ち、1点を追加する。濱渡はこの日4打数4安打1四球の活躍だ。さらに送って二死二塁とすると、9番・竹内がセンター前適時打でもう1点追加。12対3とその差を9点に広げる。
大差をつけられ迎える最終回。霞ヶ浦は9番代打・清水達希（2年、土浦三中）はセンターフライ、1番・戸部はセカンドフライ、2番・村上は見逃し三振に倒れ、試合終了。
第96回全国高等学校野球選手権茨城大会を制したのは第5シード・藤代となった。藤代は2011年以来、3年ぶりの3度目の甲子園となるが、前回は初戦で徳島商に敗れている。菊地一郎監督は2度目の甲子園となる今回は、持ち前の強打を発揮して、ぜひとも甲子園で1勝以上していただきたい。
下館工・谷中を攻略し、準決勝で昨夏と今春の覇者である常総学院を破り、決勝では昨秋の覇者・霞ヶ浦を破った。5季連続決勝同一カードの「茨城2強」状態。その牙城を崩した藤代の実力はホンモノである。
一方、霞ヶ浦は、2年連続の決勝戦敗退となった。夏の決勝戦敗退はこれで5度目となる。1年時から活躍している上野、菅原の世代を持ってしても、悲願を達成することは叶わなかった。敗戦後は、選手・関係者のみならず、スタンドの霞ヶ浦ファンも多数涙していた。それほど今回こそはという想いが強かったのだろう。積年の悲願は、近い将来必ず達成してもらいたい。
（文＝伊達 康）
