全ての道はPrimeに続く:アマゾンが音楽配信サービスを開始

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Amazon Prime Musicは音楽主体の事業ではなく、Amazon Primeサービスの一環として行われるようだ。

アマゾンが正式に音楽配信事業に参入した。Amazon Primeの利用者は今後、音楽配信サービスが利用可能となる。新サービスは、往年のヒット曲や古いタイトルを中心とした約100万曲および9万のアルバムでスタートする。

アマゾンは、「Amazon Music」として展開していた別の音楽資産もPrime Musicの一部として統合する。新しいAmazon Musicは、「Cloud Player」や「Amazon MP3 ストア」等の音楽サービスに置き換わることになるだろう(実質的にはそれほどの変化はないだろうが)。現在「Amazon vinyl AutoRip」を利用しているユーザーは、Amazon Musicになっても特に変化を感じないはずだ。

Prime Musicのユーザーは、自分の所有する楽曲に加えてPrimeのカタログ上にある楽曲も聴けるようになり、予め用意されている数百の「Prime プレイリスト」も利用可能になる。Primeメンバーになれば広告も入らない上、Prime プレイリストに含まれる楽曲をモバイル端末にダウンロードして聴くこともできる。Kindle Fire HDかHDXを持っていればアップデートでPrime Musicを入手可能だが、iOSやAndroid用のアプリもリリースされる予定だ。

Prime Musicは、Amazon Primeのメンバーになれば利用できるようになる。Amazon Primeは会員制のサービスで、メンバーになるとAmazonストアで購入した商品の翌日配送、「Amazon Instant Video」のビデオ・ストリーミング・サービス、Kindleライブラリのレンタル・サービスなどが利用可能となる。アマゾンは今年の初めにAmazon Primeの年会費を今年度から値上げすると発表し、79ドルから99ドルになっている。

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Primeでコンテンツサービスを行う意味

Prime Music自体は特筆すべきサービスではない。サービス開始時の楽曲は比較的古いものに限定されているし(Instant Videoが古い映画や番組に限られているのと同様だ)、ニューヨーク・タイムズによれば、現時点では世界最大規模のレコード会社であるユニバーサル・グループの楽曲は取り扱わないという。

音楽配信サービス「Spotify」に加入している人であれば、Prime Musicの品揃えにはがっかりするだろう。アマゾンはどうやら、Prime MusicでSpotifyや他の音楽配信サービスと勝負する気はないようだ。Amazon Primeの年会費を値上げしたため、Amazon Prime自体の価値を引き上げてユーザーの獲得と維持をはかるのが目的なのだろう。

Amazon Musicの品揃えや機能の優劣だけを見ていては、アマゾンがPrimeコンテンツ全体を通して打ち出している戦略を読み解くことはできない。次のように考えてみよう。年間99ドルを支払えば、様々な映画や番組を無制限で閲覧したり、大量の楽曲を無制限で聴くことができる。さらに他のKindleユーザーと書籍を共有したり、Amazon.comで販売されているほぼ全ての商品を翌日配送で購入できるのだ(※)。

※Amazon Primeのサービス内容は日本と米国で異なる。本記事に含まれるサービス内容は米国のもの。

Primeが備えている全ての側面を他のサービスと比較してみよう。例えば、ビデオ配信サービスの「Netflix」は月間7.99ドル、音楽配信のSpotifyは月間9.99ドルだ。HBO GoやHulu Plus、Pandoraの広告無し有料版については割愛するが、Primeが一選択肢としてそれなりに有りだということが分かるだろう。Primeの問題点はコンテンツが古いものに限られてしまうという点だが、それでも月に100〜200ドルの節約ができると考えれば妥協するユーザーは多いだろう。

結局のところ、Amazon Primeのコンテンツサービスというのは、Primeの本来の目的とは関係がないのだ。Primeの本当の目的とは、より多くの人々にアマゾンの倉庫から実在する商品を買ってもらうことである。アマゾンは、翌日配送サービスやあらゆるコンテンツサービスで自社のサイトに多くの人々の目を惹き付け、商品の購入を促しているのだ。今回の楽曲提供がその目的達成の役に立つなら、アマゾンにとっては安いものなのである。

Dan Rowinski
[原文]