Wixを利用すれば、ウェブサイトの構築にコード学習は必要ない!
誰もがコーダーになるべきだという考え方は、プログラマー崇拝へとつながる。
私は自分のことをコーダーだとは全く思わない。ただ、以前AngelfireやGeoCitiesのような使いづらいサイト構築ツールを試した際に、これなら自分で作ったほうがよっぽどマシだと思った。
そこで私はWebの共通語であるハイパーテキスト・マークアップ言語、すなわちHTMLを勉強した。また、ウェブサイトのレイアウトを定義する基本ツールであるCSSと、ウェブサイトをインタラクティブなものにするための比較的シンプルなプログラミング言語であるJavaScriptも学んだ。こうした技術を取得したことで私をコーダーと呼ぶ人がいたとするなら、私はそのお世辞をありがたく受け止めよう。
オンラインのウェブサイト構築サービス「Wix」のことを耳にしたとき、私は懐疑的な気持ちだった。ウェブ開発者やデザイナーは、この類のサービスを馬鹿にする傾向がある。Wixの主な機能は、誰もが簡単にウェブサイト制作を行えるというグラフィカル・ユーザー・インターフェースだ。だが、そのようなツールに頼ってしまっては「DIY精神」が台無しになるのではないか?
コーディングするには忙しすぎる?
Wixのメインページを開いてみると、ページに掲載された写真に写っているのは裁縫師、園芸家、料理人など、専門的な職業に就いている人たちばかりだ。彼らはおそらく多忙な日常生活をこなすために、コード学習などという時間のかかる作業はスキップする必要があるのだろう。
そういう人は世の中にたくさんいるようで、4700万人以上の人々がWixを利用してサイトを構築している。Wixの広報責任者であるエリック・メイソンによれば、そこがこのサービスのポイントだという。
「私たちの提供するサービスはHTMLとCSS、JavaScriptから成り立っていますが、私たちの目的は、ユーザーがこうした単語の意味すら知らなくても済むようにすることなのです」
コーディングを学ぶべきなのは誰か?
我々の日常生活におけるソフトウェアの重要性は高まる一方だ。店頭での販売システムとしてiPadを利用している店員も、建設計画の変更をスマートフォンで確認する建設作業員も、ほとんど全ての職業が何らかの方法でコンピューターと繋がっている。我々は誰もが皆、プラグラムで制御された世界に住んでいるのだ。
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コード学習を行うことは、あらゆる面からソフトウェアを通じた調整、管理、改善が行われている我々の世界に対する理解をより深い、より豊かなものにしてくれるだろう。しかし、だからといって全ての人々がコーダーになる必要はあるのだろうか?
メイソンにしてみれば、これは階級差別になりかねない問題だという。彼の考えでは、コーディングというのは何年もの訓練を必要とする専門スキルである。スモールビジネスを展開する全ての経営者に、それをマスターするだけのリソースや時間的な余裕があるわけではない。
「未だコンテンツが力を持つ世界において、ビジネスブランドの構築というのはフルタイムでの作業が要求される仕事です」とメイソンは言う。「それに加えてコード学習までしていたら、外に出て仕事をする時間などなくなってしまいます」。
「気がかりな事もあります。開発者やデザイナーを頂点とするヒエラルキーが生まれてしまい、その考え方が、単にウェブを必要としているだけの普通の人々にも浸透しているのです。私はコーディングを非常に重要だと思っていますし、Wixで働いている700人の従業員の半数はエンジニアです。しかし、エンジニア以外の人々のためのソリューションを持つことも、同じく重要だと思うのです」。
この民主的なアプローチの欠点は、コーディングによって生計を立てている人たちの支持を得にくいという点だ。Wixは経験豊かなコーダーに対し、彼らのスキルをWix Arena(ウェブデザイン・サービスのマーケットページ)を通じて提供することで、何百万という顧客にアピールする機会を提供している。しかしメイソンによると、これは難しい商売だという。理由の一端は、Wixのウェブサイトの全てが芸術品というわけではないからだ。Wixでは誰もが自分の望んだ通りのものを作り出すことができるので、こうした洗練されたテンプレートは時として邪魔になってしまいかねない。
Wixで手軽にウェブサイトの構築を
Wixは2006年に、Flash専用のウェブサイトを生成するためのツールとして誕生した。今となっては遠い記憶だが、かつてはウェブサイトにアニメーションやインタラクティブな機能を追加するためのテクノロジー、Adobe Flashが一世を風靡した時代があったのだ。しかしこのテクノロジーはモバイル端末に対応しなかったため、その利用率は急速に減退した。Flashの影響力が衰えるにつれてWixもまた廃れていったため、同社は2012年に、ウェブサイトをHTMLの最新バージョンであるHTML5で構築できるツールをリリースした。
Wixでウェブサイトを作るには、まずビジネスの種類(保育から法務コンサルティングまでどんなジャンルでも良い)に応じたテンプレートデザインを選択するところから始める。あとはドラッグ&ドロップを繰り返してサイトをカスタマイズしていくだけだ。サイト内のページ数が30ページ以下で特にプラグインも必要ないなら、無料で利用できる。
Wixで作成したサイトは全てレスポンシブ・デザインとなり、スマートフォンでもタブレットでもラップトップでも、人々が閲覧するデバイスに合わせてレイアウトが調整される。カスタマイズ可能なモバイル・バージョンのデザインも無料で含まれており、デスクトップ・バージョンと全く違う見た目にすることも可能だ。音楽や動画、画像など、静的なサイトに配置できそうな要素は何でも追加することができる。
「Wixはただのテンプレート・サイトではありません」とメイソンは言う。「テンプレートはブロックで構成されていますが、Wixはレイヤーで構成されています。ユーザーはサイト上のあらゆる要素をドラッグ&ドロップで移動させることができ、その結果がコードに変換されるのです」。
私の記憶にある初期のサイト構築ツールとは異なり、Wixのカスタマイズ機能は際立って優れている。色々といじっているうちに思ったのだが、もしこのツールにもっと早い段階で出会っていたら、自分でHTMLを学ぼうとは思わなかったのではないだろうか。
だが、メイソンによれば、Wixユーザーの多くは次第にウェブサイトのコードの基本を理解していくのだという。
「Wixを卒業した人は、コードに対する理解を深めています」と彼は言う。「その後、ウェブデザイナーと一緒に仕事をするようになった場合にも、自分たちの要求をよりはっきりと伝えることができるようになるのです」。
HTML5によって柔軟性が増したおかげでWixは、オンラインでビジネスを展開したいけれどコードを学ぶ時間がないという人々にとって、手っ取り早い近道となった。コーダーにとっては受け入れ難いものであるかもしれないが、これはインターネットにおける新たな需要なのだ。コーダーが王として君臨する世の中に、Wixが民主化の革命をもたらすのである。
画像提供:Wix
Lauren Orsini
[原文]