未来の音声通話、VoLTE を紹介しよう

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携帯電話に関する新たなビッグニュースは、キャリアとスマートフォンメーカーにとっては非常に朗報だ。消費者にとってはどうなのだろう?

VoLTEという名称にはまだ馴染みがないかもしれないが、この携帯電話の新基準 については直に色々な情報を耳にするようになるだろう。VoLTEとは「Voice over LTE」の略だが、実際にこの言葉が意味するところは、インターネット用に開発されたものと同じ技術により、間もなく音声通話が電波を使って飛び交うようになるということだ。

VoLTE の文字は手元の携帯電話の広告にもそのうち現れるようになるだろう。消費者にとっては2つの利点がある。1つ目は、これまでよりも通話が途切れにくくなり、クリアな音声になること。2つ目は、通話とデータサービスを同時に使えることだ(一部のキャリアではすでに提供されている)。キャリアにとっては、割り当てられた無線スペクトルをより効率的に使えるようになることを意味する。つまりネットワークに追加投資をしなくても、より多くの顧客にサービスを提供できるようになるのだ。

(VoLTE の到来によって電話料金が下がることはほぼ確実にないと言えるだろう。実際にはコストを下げることになるネットワークの改善に対し、キャリアはより多くチャージする傾向にあるからだ

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なぜVoLTE によってこのような改善が実現するかを知るためには、従来の LTE が音声を伝達できなかった理由を理解する必要がある。

回線交換対パケット交換

LTE はモバイルデータのスタンダードだが、「4G」としてのほうがなじみがあるかもしれない。LTE は前身の3G ネットワークに比べて,
インターネットビデオをはるかに高速にダウンロードしたりストリームしたりできる。しかし現行の LTE は、音声の伝達はしない。 通話の際には古い2G や3G のネットワークに戻されてしまうのだ。

VoLTEの登場によってこの状況が一変する。

LTE の速度のメリットはデータの扱い方から来ている。UMTS、CDMA などの標準的な3G ネットワークは基本的に音声、テキスト、データを扱うためにノード間に専用チャネルを開く。「回線交換」と呼ばれる技術だ。これはシンプルだが、ネットワークにとってはかなり贅沢なやり方である。まるで朝の自動車通勤時に、自分だけが通れる専用レーンを使うようなものだ。あなたは快適かもしれないが、周りはひどい迷惑である。

それに対して LTE は、パケット交換と呼ばれるインターネット技術を基にしている。送信側は、電子メール、ウェブページ、Netflix ストリームなどのデータを同じサイズの小さなパケットに分けるのだ。それぞれに最終目的地を示す「アドレスラベル」が付いている。送信側はそれらのパケットをネットワークに投げ込み、それらはあらゆる岐路、つまり「ノード」で目的地を選択して進んでいく。最終的にすべてのパケットがその目的地で一緒になり、再構築されて受信側に渡される。

これは実際の朝の通勤風景に近い。そこでは他の人たちと道路を譲り合いながらどこかへ向かっている。パケット交換は少しばかり行き当たりばったりのように思えるし、実際そうかもしれないが、同時に素晴らしく効率的で、柔軟性があり、確実な情報伝達方法だ。しかしこれまでは、携帯電話の音声通話には使われてこなかった。音声通話にはまだ独自の回線(そして回線交換)が必要だったのだ。

LTE がアメリカでデビューしたとき、キャリアは、4G スマートフォンを顧客に押し付ける一方で、どうやって音声通話を動作させるかを考え出さなければならなかった。多くのキャリアは「回線交換フォールバック」と呼ばれる一時しのぎの方法を採用した。LTE がすべてのデータ接続を扱うが、通話するときは3G ネットワークに切り替えるという方法だ。VoLTE の登場によって、このハイブリッド技術は事実上時代遅れとなる。

VoIP 対 VoLTE

自分のスマートフォンを見て、「今でもデータ接続を使って音声通話ができているけど? Skype や Google Hangouts を使っているから」と言う人がいるかもしれない。その通りだ。実際そのようなアプリを使えばデータ通信を使って音声通話をすることができる。これは携帯電話業界では「over-the-top(OTT)」サービスと呼ばれている。キャリア独自の音声やメッセージサービスに取って代わるものだからだ。

これらのアプリでは確かに音声通話に LTE を使っているかもしれないが、VoLTE を使っているわけではない。Skype、Hangouts、WebEx、Fuze のようなサービスは、「VoIP」すなわち「インターネットプロトコルによる音声」と呼ばれるものだ。これらのサービスはインターネット経由でデータ接続を使っており、キャリアが提供する従来の音声ネットワークは使わないので、3G や4G LTE デバイスで動作する。

米国の携帯電話キャリアネットワークが展開を進めるにつれて、VoLTE はより直接的には Skype などのOTT サービスと競合するようになるのだ。

VoLTE のメリット

T-Mobile は米国で最初に VoLTE 音声通話を始めた携帯電話キャリアの1つだ。T-Mobile の最高技術責任者ネビル・レイは、会社の VoLTE 提供に伴う背景技術について次のように語っている。

基礎となる技術について詳しく知りたいなら、動作の仕組みを教えよう(興味がないならスキップしても構わない)。VoLTE の音声は、4G HSPA + ネットワークの回線交換の代わりに LTE ネットワークの IP [インターネットプロトコル、またはパケット交換] を使って運ばれる。これは電話を優れた高速 LTE ネットワークに接続したまま通話ができるという点で優れている。この技術が優れている点は、様々な無線層の間をなめらかに移動できることだ。Enhanced-SRVCC(eSRVCC)は新しいLTE の拡張機能であり、アメリカで最初にそれを導入できることにわくわくしている。要は基本的に、LTE エリアを離れて4G HSPA+ や2G の対象に切り替わっても音声が途切れないことを確約してくれるということだ。

Enhanced-SRVCC という単語は、VoLTE の中心的信条を説明するのに良く使われる。音声とデータは初めて同じ無線層で仲良く一緒に暮らすことができるようになるのだ。つまり、両方の機能を扱うために、3G や他のスペクトル周波数に戻す必要がなくなるのである。

今後、LTE が米国で広まるにつれて、CDMA や HSPA+ 等の古い3G ネットワークは廃れていくだろう。Verizon は昨年、その3G ネットワークを2014年の始めから徐々に減らすと発表し、他の米国のキャリアも同じような引き下げを計画している。米国の音声とデータ通信の将来は LTE(および拡張 LTE のような将来的に拡張されたもの)にあり、キャリアはコストのかかる古いインフラを維持する必要を感じていない。

携帯電話のオペレーターは LTE の進化に伴う市場キャンペーンを始めたばかりだ。T-Mobile は「HD Voice」(携帯電話によるクリアな音声通話)という名前を付け、Verizon は XLTE と呼んでいる。既存の LTE ネットワークを操作するための余分なスペクトルだからだ。Sprint のSpark ネットワークは LTE の拡張ではなく、単に様々なスペクトルと LTE の種類(TD-LTE と FD-LTE)を、従来の4G が提供するものよりも効率的なパッケージに集める方法を刷新しただけだ。

スマートフォンメーカーにとっては、スマートフォンの中に入れる受信機の数を減らすことができるのでメリットがある。さまざまなチップセットでいろいろな種類のネットワークをサポートしなければならなかった代わりに、特定のキャリアのスペクトル要件を指向したチップセットを備えた電話を展開することができる。

一方、消費者のメリットは少々分かりづらいかもしれない。VoLTE は電話で音声とデータを同時に同じキャリアで使えないという問題を解決し、通話はよりクリアになり途切れにくくなるだろう。VoLTE はモバイルコンピューティングの重要な革新的前進なのだが、それでも多くの消費者は変化にほとんど気が付かない可能性があるのだ。

Dan Rowinski
[原文]