財産がなくても相続で揉めるワケ

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相続財産がないと思っている家庭ほど揉める現実

平成27年1月1日の相続税の改正を控え、相続に関する相談が増えてきました。遺産分割に関するトラブルは、平成11年で年間8300件程度だったものが、平成21年には年間1万6600件と、10年で2倍になりました。

平成24年度の最高裁判所のデータによると、遺産分割案件で揉めている人の32%は、相続財産が1000万円以下、43%は5000万円以下の人です。つまり、全体の75%は相続財産が5000万円以下の人となります。現在の相続税の基礎控除が5000万円+1000万円×相続人の数ですから、揉めているケースのほとんどが、相続税のかからない人たちなのです。「相続財産がないと思っている家庭ほど揉める」というのが現実です。

遺産に関する話し合いは「争族」にならないよう、できれば円満に解決したいもの。司法書士の業務の実体験から回避策を考えてみます。


相続で揉めるのは「金銭の勘定」ではなく「心の感情」

相続人の間で互いに納得していても、その相続人には配偶者がいます。そして、話をややこしくしているのは、意外にも、その配偶者。つまり、第三者です。「お隣に聞いたけど、こんなケースはもっともらえるらしいわよ」や「会社の顧問弁護士に相談してみようか」など、当事者以外の人が話を複雑にしてしまうケースが非常に多く見受けられます。「縁遠い関係者が増えれば増えるほど揉める」という実態があります。

さらに、相続で揉めるのは「金銭の勘定」ではなく「心の感情」であるケースが多いのです。遺産分割協議書の押印時に話を聞いていると、どんどん話が逸れることがあります。「お義父さんの面倒を今まで必死でみてきたのに、私は1円も貰えない」「兄は私立の医学部に入れてもらったのに、私は公立大学でアルバイトもしてきた」「小さい頃、父と一緒に○○さんを尋ねると、いつも無視されていた。それが許せない」など。取引先同士なら金銭問題も折り合うところを見つけられますが、相続人は「身内」であるために、取引とは全く違った「感情」が入り混じります。そして「なぜ今、そんな話を持ち出すのだろう」ということが多々起こります。「相続」というキーワードがきっかけで、今までの思い、辛かった出来事、不満が溢れ出すという感じです。

いったん「争族」となると、財産だけではなく、大切な家族をも失ってしまうことになりかねません。相続で揉めないためには、普段から、家族のコミュニケーションをよくはかり、互いの距離を埋めておくことがとても大切です。記念日などに会う機会を増やすことなどから始め、エンディングノートを一緒に気楽に書くことなども良いと思います。


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