作品も存在感もビッグ！ 世界を魅了する写真家の日本初個展
ドイツを代表する写真家、アンドレアス・グルスキーの日本初の個展『アンドレアス・グルスキー展』が国立新美術館で開催中だ。マドンナやエルトン・ジョン、F1のミヒャエル・シューマッハまでセレブたちにも愛されているグルスキーの作品だが、近年でもっとも話題を呼んだのは、1999年の作品『ライン川 II』が2011年当時のレートで3億4千万円という、現存する写真家の作品としては史上最高額で落札されたことだ。
なぜ、彼の作品がこれほどまでに注目を集めているのだろうか？
今回は、数百人もの場立ち（売買注文を行う人）が画面の隅々まで配置され、その熱気がひしひしと伝わってくる『東京証券取引所』（1990年）など、グルスキー氏が厳選した約65点の作品が堪能できる。同展覧会のポスターなどでおなじみのゴールドの円形が模様のように画面を埋め尽くす『カミオカンデ』（2007年）は、岐阜県の神岡鉱山の地下1000mに設置されていた“ニュートリノ検出装置”をモチーフにしたものだ。
先に挙げた『ライン川 II』は、川と周辺の芝生を左右一直線に切り取ったもので一見かなりシンプルに見えるが、対岸に見える建物を加工で消し、ライン川の雄大さを抽出して表現しているのだそう。2箇所から撮影した画像を組み合わせて1000室余りの巨大アパルトマンの窓をモザイク模様のように見せた『パリ、モンパルナス』（1993年）などを含め、デジタル技術を駆使した作品群には“写真を使った画家”と評されるグルスキー氏の作品の妙が詰まっている。
作品たちはもちろんのこと、展覧会の構成もかなりユニーク。
「グルスキー本人のアイデアによる構成で、１つの壁には基本的に１つの作品しか掛けられていません。実際にグルスキーが現場で作品を並べ替えたりしながら配置を決めていたのですが、1点1点の作品にじっくり向き合うことができる、非常に計算し尽くされた内容になっています。また作品は年代順に並んでおらず、大小さまざまな大きさの作品を上手く組み合わせた展示になります。シリーズ作品も一箇所に固められているのではなく、散らして配置されているのも特徴的ですね」
作品の周囲にゆったり空間をとり、1点1点に観客の意識が集中するよう計算されている一方で、会場全体がひとつのインスタレーション（空間演出）のようにも見える。まさに作品のように演出された空間といえるこの展覧会、来るたびに違う印象を楽しめそうでもある。
ここまで読んでもらっておいてなんだが、グルスキー作品の魅力を文字で伝えるのはかなりナンセンスな気がしている。最大で1辺が5m（！）を超えるビッグプリントの1枚1枚を、全体から細部まで緻密に作りこんだ作品群は、やはり生でこそ楽しんでほしい。私たちにとってとても身近な“写真”というアートの持つ新たな可能性に、きっと出会えるはずだ。
（古知屋ジュン）
『アンドレアス・グルスキー展』
会場：国立新美術館 企画展示室1E
会期：7／3（水）〜9／16（月・祝）※毎週火曜は休刊日
開館時間：10：00〜18：00 ※金曜は20：00まで、入場は閉館30分前まで
観覧料：当日一般1500円、大学生1200円、高校生800円
●7／19（金）・8／2（金）18：30〜19：00にギャラリートーク（作品解説）を開催。
詳しくはオフィシャルHPまで。
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