若者と海外在住者、どちらの投票率が高い？
2012年に行われた第46回衆院選において、在外選挙可能な有権者数は10万5,836人いた。そのうち投票者数は2万1,565人、投票率は20.38％だった。財団法人明るい選挙推進協会によれば、この時の全体投票率は59.32％。全体を年齢別で分けた時の最も投票率が低い年齢層（20〜24歳：35.3％）、地域別に分けた時の最も低い都道府県（高知県：53.89％）と比べても、在外投票の投票率はかなり下回っている。
各選挙の10万5,836人および11万3,230人というのは在外選挙人名簿に登録されている人数であり、成人した在留邦人全体の数ではない。在外投票するには自分が住んでいた市町村役場に転出届けを出し、海外の住所がある地域を管轄する在外公館に在外選挙の登録申請を行わねばならない。受理されると在外選挙人名簿に名前が載る。また海外の住所に3ヶ月以上住んでいることも必要だ。これら手続きを踏んで初めて投票を行える。
在外選挙登録して参加するほど選挙へ対する意識は高いのに、なぜ投票率は低いのか。それは投票時のさらなる不便さも関係している。
海外在住者の中でも大都市に住まいがあり、近くの在外公館へすぐ投票に行ける人はいいが、地方在住の場合、最寄りの在外公館まで長距離を移動して出向かねばならない。最寄りの在外公館に投票所が開かれない場合や、日本の在外公館が設けられていない国もある。在外公館へ行かずに投票する場合、郵送で行うことになるが（日本へ一時帰国している場合は日本の投票所でも行える）、ここでまた一手間かかる。
郵便投票を行うには、まず投票用紙を日本の選挙管理委員会へ請求し、その返送を待って公示日以降に記入。選挙日の投票所閉鎖時間までに届くよう日本の選挙管理委員会へ送り返して完了する。しかし、外国では日本のように郵便事情が良い国は少なく、到着まで予想外の日数がかかることも多い。「登録はしたけれど、そこまでしないといけないのなら今回は……」という人も多い。
選挙は自らの意思を政治に示す機会であり、投票できる制度がある以上は利用すべきだが、海外に住む日本人にとって在外投票制度はまだまだ参加しやすい環境とは言えないのが現状だ。
（加藤亨延）
