なぜアナログレコードを特典に？Scoobie Doリーダーに聞いてみた
「今回はライブ映えするアルバムにしたいというのが最初にありました。前作まではスタジオワークで作品性を構築していく方向のアルバム作りが続いていました。しかし年間70ー80本のライブを行っていると、お客さんの求めているものはそれだけじゃないと感じ取れるんです。スクービーは基本的にはライブバンドなので、今回はライブで盛り上がるアルバムにしようと思いました」
マツキさんは「ライブバンド」であることに強いこだわりを見せる。バンド結成か
ら18年経ってもなお新しいことに挑戦し続けられるのはライブでのカタルシスを求め続けているからだと語る。
「お客さんの前でありのままの自分を表現する快楽が好きなんですよね」
そのライブへの思いからスクービーは2006年にメジャーレーベルを離れ、自らのレーベルChamp Recordsを立ち上げた。他レーベルと契約を結ぶ選択肢もあったが、あえて自主レーベルの道を選んだ理由のひとつは思う存分ライブに取り組めるからだった。
「メジャーとの契約は多くの場合、一定期間で何枚以上のアルバムを作らなければいけない、という内容があるのでどうしてもアルバムありきになるのですが、現在はライブのためにアルバムを作ることができます」
実はこのスタイル、現在の音楽業界のトレンドを先取りしている。日本のCDセールスは1998年をピークに減少のトレンドにある。そのトレンドは深刻で、現在はビッグアーティストでもCDセールスだけで十分な収益を挙げるのは難しいと言われている。他方、ネット空間とは異なるリアルの場の需要の高まりに伴い、ライブやフェスのシーンが近年盛り上がりを見せてきている。そのため、各アーティストはライブやそこでの物販に力を入れてきているのだ。
以前はYoutubeに楽曲が違法アップロードされると、目くじらを立てて削除していたレコード会社や音楽事務所が、今ではオフィシャルアカウントでPVを自らアップするようになったのは、ライブへ来るきっかけになって欲しいという思いからだ。
もちろんスクービーはCD不況を見込んでいたわけではなく、目の前にいるファンと一緒に盛り上がりたいという原初的な欲求からライブに力を入れていたのだが、結果的に時代がスクービーに追いつく形となった。
「若いファンも増えてきてます。大学の軽音サークルでスクービーのコピーバンドが増えているという話を聞くのですが、そういうのは嬉しいですね」
『かんぺきな未完成品』はCDの他、アナログLP盤も発売している。またCDの先着特典として7インチのアナログレコード(EP盤)をつけている。DJのためにアルバムのアナログ盤をプレスすることは珍しくないが、特典にEPをつけても再生機を持っていない人も多いのではないだろうか。
「持ってないですね(笑)。でも自分自身がレコードで一番聴きたいんですよ。データで音楽を聴くのも便利でいいのですが、音楽は単に音を聴くだけのものじゃないと思うんです。レコードの袋を開けて、針を落として音が出てくるまでの『時間の経過』も含めての音楽を楽しんで欲しいという思いで付けました。プレーヤーを持ってなくても盤さえ持っていればそのうち聴く機会もあるでしょう（笑）」
ライブバンドだけあって、体験としての音楽を大切にしているのだ。
なんだか久しぶりにライブに行きたくなってきたぞ。まずはスクービーのライブスケジュールをチェックしてみるとするか。
（鶴賀太郎）
