モヤモヤ女子の理論武装「女子会2.0」
そう話すのは、先ごろ発売された『女子会2.0』の著者の一人、西森路代さん。
「『この恐ろしい本』という言い方を社会学者の古市（憲寿）さんが”つかみ”としてまえがきで書いてくれているので、怖い女性たちが吼えている本だと思われがちですが、男性を責めているわけでもないですし、全然悪意のある本ではないですよ」
同書はNHK Eテレの『ニッポンのジレンマ』の関連サイト『ジレンマ＋』の企画で開かれた座談会『ジレンマ女子会』からスピンオフして生まれた本だ。座談会が掲載されたページにはアクセスが集中し、一時はサーバーが落ちる程だったという。
なぜこの座談会はそこまで注目を集めたのだろうか。
「近年昭和的価値観が崩壊し生き方に多様性が出てきたのと同時に、旧来型の価値観との軋轢が生まれて困惑している人が増えてきています。特に女性は働き方や結婚の問題でそうした断絶に直面することが多いので、『女性性』の問題に関わるコンテンツへの注目はかつてない程高まっており、その結果注目されたのだと思います。女性芸人の番組に人気があるのも同じ理由じゃないでしょうか」
『女子会2.0』では、座談会で語られた「結婚で幸せになれますか？」「男性に選ばれないと『かわいそう』ですか？」などのテーマの他、社会学者の石崎裕子さん、作家の白河桃子さんを加えた5名の著者陣によるコラム - 「あなたの『ロールモデル』は？」「恋愛と結婚はつながっているのか？」「モヤモヤ女子に捧ぐ」など - も加えられ、現代女性の置かれている状況が包括的かつ具体的なデータに基づいてわかりやすく理解できるようになっている。そうした丁寧で真摯な本書の作りは、タイトルの「2.0」にも込められている。
「『女子会』といえば、集まることが目的で、あまり生産的な話ができなくてもいいというイメージだと思うんです。もちろん、私もそういう女子会も必要だなと思っています。でもこの座談会ではそのもう一歩先を行き、モヤモヤとした悩みの原因がわからない人にとっての手助けになってくれればと思って、現実に横たわっている問題をできるだけわかりやすく具体的に話しています」
たとえば近年女子大生の専業主婦志向が高まっていると言われているが、専業主婦というテーマひとつをとっても、日本における専業主婦の歴史から現状、リスクに及ぶまで様々な角度で語られている。
女子大生が読んでも様々な気づくことのできる内容になっているのと同時に、部下に女性を持つ男性中年管理職が彼女たちの置かれている状況や悩みなどを客観的に知るためにも最適だ。しかも堅苦しい論考ではなく、座談会やコラムという読みやすい形の語り口なので、どんどん読み進めることができるのも嬉しい。
「モヤモヤとしている女性が、この本によって問題を客観的に理解して楽になってくれればいいと思いますが、女性だけに留まらず様々な断絶の解消に役立ってくれればいいなと思っています」
ネット炎上に象徴されるように、現代の日本では対立的な論争を好む人が増え断絶が生まれていると西森さんはいう。
「でも男性と女性、未婚女性と専業主婦、高齢者と若者などの対立の問題ってどちらかが正しくて、どちらかが間違っているということではなく、問題に対してそれぞれの立場によっての見方があるというだけのことだと思うんです。この本で客観的に問題を認識し、少しでも不毛な対立から解放される手助けになれたら嬉しいですね」
（鶴賀太郎）
