すでにパリは回転ずし新時代に突入中!? 元ロブションのシェフが作る回転フレンチ
しかし近年は、英国のすしチェーン「ヨー！スシ（YO! Sushi）」に代表されるように回転ずしは海外の都市部でも見られるようになった。もちろんパリにも回転ずしはあり、日本語で「カイテン」と言えば「料理がコンベヤーに乗ってぐるぐる回る」という意味でフランス人に通じる場合もある。しかし「カイテン」は常に「スシ」とセットだった。
「回転ずしの手法は、店の色々な料理を少しずつ試せるフランス料理の注文スタイル『デクヴェルト』に適していると思いました。それが『フレンチ』と『回転ずし』を合わせた理由です。『回転ずし』のシステムはすでに知られているため、お客様も問題無く受け入れています」（同店担当者）
値段は1皿2.5ユーロ（約330円）から6.5ユーロ（約860円）。各皿の量は少ないが同じ分だけ値段も安い。他のフランス料理店と同じくバゲットは無料で付く。夜はバーとして、タパスの手軽さで注文できるので日本の居酒屋のような使い方もできる。
ただし「回転フレンチ」という奇抜さと価格の手軽さだけがこの店の看板ではない。同店のシェフは以前「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」ロンドン店に勤め、2012年のフランス鉄板焼きコンクールではファイナリストになった腕の持ち主。料理の味や盛りつけも細部まで気が配られている。
心配なのは回っている間に冷めてしまう料理の温度だが、回転レーン上の品物はサラダやカルパッチョ、冷製スープなど本来冷めた状態で提供される前菜かデザートだ。主菜となる温かい食べ物は、注文すると正面にある大きな鉄板を備えたオープンキッチンで調理され、客のもとへ運ばれる。
客の評判も上々で、今年4月下旬にオープンして以来、手頃な値段と種類、整ったクオリティで受けている。もし今後も同店が成功を続ければ「皿は回転するけれど、すし屋じゃない」という同じコンセプトを持つ店も増えてくるだろう。日本ではすし屋にとどまっている「回転」システムが、海外ではどのようなジャンルのレストランでも見られるという日が来るかもしれない。
（加藤亨延）
