AKB48の楽曲を手掛けるヒットメーカーが、ミュージカルを手掛ける！ モーツァルトは実は女性だった？
ところで皆さん、「楽曲派」なる言葉を御存知でしょうか？ アイドルの容姿やキャラクターのみならず、曲の良さを重視。そのクオリティに注目し、評価して応援する。そんなファンの姿勢が、存在するらしいのです。
では、AKB48に話を戻して。大メジャーとなった彼女達だけれども、同時にその楽曲に目を向けないのは損。私にも、いくつか好きな曲があります。特に、「大声ダイヤモンド」と「RIVER」は出色のデキだと思う。
実は上記2曲、同じ人物が作曲していましてですね。AKBファンから「よすす」なる愛称で親しまれる、作曲家でありシンガーソングライターの井上ヨシマサ氏。AKBの楽曲を最も多く手掛けているのは、紛れもなくこの人です！ 昭和のゴールデンコンビが“秋元康＆後藤次利”だとしたら、平成のゴールデンコンビは“秋元康＆井上ヨシマサ”か……？
福山庸治氏の漫画を下敷きにした同作、ストーリーがかなり興味深くてですね。何しろ内容が「モーツァルトは、実は女性だった」という、妙にトリッキーなもので……。
じゃあ、ここで本音を言わせてください。個人的に、ミュージカルに抵抗感が無いわけではない。タモさんも言ってるじゃないですか。「脈絡もなくいきなり歌いだすのが不自然」、「何で歌うのかが分からない」と。その上、この複雑怪奇なストーリー。……大丈夫か？ 凄くディープなんじゃないんですか？
「音楽座ミュージカルは、よく『他のミュージカルのような違和感がない』と言われます。急に歌いだしたり踊りだしたりせず、人物の感情や物語の流れを、自然に歌やダンスで表現していくからです。一般的なエンターテイメント色が強いミュージカルとは違う“ドラマミュージカル”という、独自のステージを創り続けています」（同劇団・担当者）
もっと、掘り下げていこう。同劇団には、実績があるらしい。そこで91年初演の、この作品を紹介させてください。今回と同様に、福山氏の漫画を原作にした『マドモアゼル モーツァルト』。このミュージカルを観に来たお客さんのリアクションは、以下のようなものでした。
「この時の観劇をきっかけに、ずっと音楽座ミュージカルを観てくださっている方がたくさんいます」（担当者）
ミュージカル初心者のハートを、ガチっと掴んでいる模様。
でも、不思議ですよね。なぜビギナーが大挙して、『マドモアゼル・モーツァルト』を観に行ったのか。それには、理由がある。実は同作の音楽を担当したのは、何と小室哲哉なのです！
当時の小室氏はTMネットワーク（TMN）のメンバーとして活動しており、要するにTMファンが音楽を目当てに観劇に訪れたというわけ。そして結果的にミュージカルが小室ファンの心をキャッチ、リピーター化させてしまった。
それを考えると、井上氏の起用は感慨深い。ヒットメイカーからヒットメイカーへ、バトンが渡されたわけなのだから。ところで井上氏は今回、どんな楽曲を作ったのでしょうか？
「提供していただいた楽曲は、モーツァルトらしくもなく、AKB48らしくもなく、ご本人のオリジナリティ溢れる楽曲になっています。彼は素晴らしいメロディメーカーだと思います」（担当者）
その他にモーツァルトの名曲（「トルコ行進曲」「魔笛」「フィガロの結婚」など）をアレンジしたナンバーも劇中ではふんだんに使われているそうで、ミュージカルファン、クラシックファン、どちらも楽しめるミュージカルになっているとのこと。
「もちろんAKB48のファンの方にも体験していただきたいです。きっと、深く心に残るステージになると思います」（担当者）。ストーリーには面食らうし、ミュージカルに対する免疫もない。私と同じ状況の人、きっと多いと思います。しかし井上氏によるキャッチーな楽曲が、そのハードルを下げてくれるに違いない。氏の楽曲は、世間に受け入れられまくっているのだし。
『マドモアゼル・モーツァルト』では小室氏と、『21C：マドモアゼル モーツァルト』では井上氏と、それぞれタッグを組んでいる。
時代と並走する同作、ちょっと気になります。
