今年のTRPでは35人のドラッグクイーンがステージパフォーマンスし、野宮真貴さん、中村中さんも登場する。ブースも昨年の4倍近くになり、盛り上がりは必至だ。とにかく楽しんで欲しいと共同運営委員長の乾さんはいう

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あなたは同性愛者を容認できますか?

容認できなくても私は不寛容なのかしら?と、必要以上に自分を責める必要はこの国ではないのかもしれない。なにせ政権与党が「同性愛者への人権施策の必要はない」と言い放つような国なのだから。

レインボープライド愛媛が2012年に各政党向けに行ったアンケートの「性的少数者の人権を守る施策の必要性」という質問で、自民党は「性同一性障害者への施策は必要だが、同性愛者には必要ない」と答えているという。ことほどにわが国のLGBTに対する理解は低い。

政治だけではない。一般的にもまだまだ差別の対象になっている。4月29日に代々木公園を中心に開かれるLGBTの一大イベント、東京レインボープライドに多くの企業スポンサーがついたことは前編で触れたが、そのすべては外資系の多国籍企業である。「日本企業はなかなか門戸を開いてくれないですね」と共同運営委員長の乾さんはいう。

「でも別にLGBTの人権をことさらに主張したいわけじゃないんです。誰もが自分らしく生きることのできる社会を実現させたいだけなんです」と付け加えるのも忘れない。

実はこの表現、LGBTの取材をすると耳にすることが多い。日本でLGBTの権利を少しでも主張しようものなら凄い批判が多方面から飛んでくるので、一般論で話をせざるをえないのだ。抑圧されていてもそのことさえ訴えられない状況にこの国の少数者は置かれている。

企業の意識といえば4/27から開催される東京レインボーウィーク(TRW)では『LGBTが働きやすい職場とは』(5/3開催)というトークイベントが開催されるが、このようなイベントが開かれなければならないということは日本企業の多くがまだまだLGBTにとっては働きにくいということの裏返しに他ならない。「ダイバーシティー」や「国際的に通用する人材」を標榜する企業も多いが、国際基準で言えばお粗末極まりない人権意識しか持たない企業がこのようなお題目を掲げることは片腹痛い。

先ごろ日本の女性議員の割合が対象世界190カ国中162番目という調査結果が出たり、このままでは日本は世界的に人権意識の低い途上国という印象が定着しかねない状況だが、世界的にもLGBTの人権が守られるようになったのは比較的最近のことだ。

アメリカでも1980年代初頭には当時のニューヨーク市長エド・コッチの性的指向が大きな政治問題になったし、映画化されたことでも有名なハーヴェイ・ミルク元サンフランシスコ市議は、性的指向ゆえに暗殺されたとも言われている。

そのアメリカもオバマ大統領が同性愛者の人権を明言するまでになり、今年には保守政党共和党のロブ・ポートマン上院議員が同性婚を容認するまでに状況は変わった。ポートマン議員は息子にゲイであることを告白され悩んだ末に政治的リスクを省みず容認に周ったのだ。

そう、人口の20人に一人がLGBTである限り、あなたの近くにも社会の不寛容さゆえに一人思い悩んでいる人がいるかもしれないのだ。世界でLGBTの人権が認められてきたのは、身近な大切な人が苦しんでいるのを看過できない人が増えているからでもある。

国内でも一部状況は好転している。前編で触れた自殺総合対策大綱におけるLGBTへの言及は大きな一歩だし、東京都でも「みんなの人権」という冊子の中でも性的マイノリティーのことについて丁寧に説明している。

先述のTRWでは「いろんな家族にやさしい街、シブヤを考える」(5/4開催)というワークショップがNPO法人シブヤ大学によって開かれ、街が多様性とどう向き合うかが熟議される。

また自分の性的指向に違和感を感じ悩んでいる若者向けには、「ピアフレンズ」という交流イベントや「ピアフレンズ」という交流イベントや「ハートをつなごう授業」(5/5開催)というイベントもTRWでは用意されている。もし身近に苦しんでいる人がいればイベントの存在を知らせてあげるだけでも大きな救いになるかもしれない。

GW、楽しく過ごす合間に、TRWを利用して普段あまり考えない問題を考えてみるのもいいかもしれないが、肩肘を張る必要もない。

「好きな言葉に"The revolution without dance is not worth having."(ダンスが湧き起こらないような革命なんて、起こしても意味がない)というものがあります。心から楽しめないと何も変わらないと思います。TRPのステージには野宮真貴さんや中村中さんなどのビッグアーティストも登場しますので、とにかく参加して大いに楽しんで欲しいですね」(TRP乾さん)
(鶴賀太郎)