カラフルな虹は、多様性の象徴として世界的にLGBTの象徴となっている。セクシャル・マイノリティーの問題は、同時に社会の多様性への寛容性の問題でもあるのだ。写真は東京レインボープライド2012の様子(撮影:Kanako Baba)

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性同一性障害、おネエという言葉は今やすっかり市民権を得ているが、それらの言葉を聞いた時どういう印象を持つだろうか。自分とは縁のない人、テレビの中の人というように思う人が多いかも知れない。確かに身の回りにおネエ言葉を使う人がいない人は多いだろう。しかしセクシャル・マイノリティーはあなたが思っているよりはるかに多い。

LGBT。

レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字。近年性的マイノリティーを表すのに使われることが増え、少しずつではあるが浸透してきている言葉だ。おネエもLGBTに含まれるが、外見だけではそうとはわからない人も多い。
2012年に電通ダイバーシティーラボが行った調査(約70,000人にスクリーニング調査)では、約5.2%の人がLGBTだという結果が出た。この数字は国際的に行われている多くの調査と大体一致する。国立競技場に満席の5万人の入場者がいれば、約2600人のLGBTがいるはずということになる。

そのLGBTの祭典とも言える東京レインボーウィーク(TRW)がゴールデンウィークに東京を中心に開催される。昨年このコーナーでも紹介した東京レインボープライド(TRP)を筆頭にに10以上ものイベントが立て続けに行われるが、周辺は大きな熱量に満ちている。

「今までバラバラに活動していた元気のいい7つの団体が集結して、LGBTのコミュニティー全体としてプレゼンテーションしているので盛り上がっています」

話を伺ったのはTRPの共同運営委員長の乾宏輝さんだ。

「アルファロメオ、フィリップス、トムソン・ロイター、ゴールドマン・サックス、日本IBM、Googleなど世界の錚々たる企業がスポンサーについてくれ、アメリカ、イギリス、フランス、イスラエルなど8カ国の大使館が支援してくれています。関心の高まりは感じられます」

LGBTの権利を尊重するのは現在世界的な潮流だ。今年に入ってからだけでも、オバマ米大統領が第2期就任演説でも同性婚やLGBTの権利について言及したり、イギリスでも同性婚を認める法案が下院で可決されたりしている。3月にはFacebookやTwitterで、赤地にピンクのイコールマークが配されたアイコンをプロフィール写真に使っている人を見かけた人も多いかも知れないが、これは米最高裁判所が同性婚にまつわる判決を出すことを受けての運動だった。

こうした世界的な動きに日本も無縁ではない。2月には毎日新聞が「境界を生きる: 同性愛の今」という連載を紙面で行っている。「全国紙で『性同一性障害』ではなく、『同性愛』そのものを取り上げたのは初めてのことです」と乾さんはいう。

また昨年8月に見直された自殺総合対策大綱では初めて「性的マイノリティ」という文言が入った。「一般の人には大したことに感じられないかも知れませんが、政治でLGBTが焦点化されたというのはコミュニティーにとっては画期的なことなんです」

政治といえば、民主党の海江田万里代表や保坂展人世田谷区長がTRPに応援のメッセージを寄せている。他にもタレントのソニンさん、作家の石田衣良さん、角田光代さん、批評家の東浩紀さん、北京五輪フェンシングの銀メダリストの太田雄貴さんなど支援する人は多い。

LGBTシーンは大分盛り上がりを見せているようだが、TRP、TRWとはどのようなイベントなのだろうか。

「イベント自体は難しいことを考えず楽しめるものが多いです。たとえば4/28に代々木公園を中心に開催されるTRPですと、プライドパレードと呼ばれる華やかな仮装パレードの他、ステージパフォーマンスや屋台を含めたブースの展示があり、お祭りのような騒ぎになります。また5月1日に行われる『カラフルラン 東京』では元オリンピック選手のアスリート・為末大さんと一緒に都内を走る予定になっています。その他にも映画がお好きでしたら『東京国際レズビアン&ゲイ映画祭』(4/29上映)や映画『The Hope of Love』(5/6上映)が、のんびり気の合う人と寛ぎたいだけでしたら、葉山に『カラフルカフェ』という期間限定のカフェもあります。LGBTコミュニティーの方でなくとも楽しんで頂けるイベントがたくさんありますので、とにかく気軽に楽しんで欲しいですね」

他方で、様々な差別を受けて苦しんでいる人への救済となるようなイベントや啓蒙を兼ねたイベントも行われる。

『ハートをつなごう授業』(5/5開催)では作家の石田衣良さんやミュージシャンの中村中さんを迎え、セクシャリティーに違和感を持つ子どもたちを対象に特別授業が行われ、アメリカ大使館で開かれる『LGBTA学生シンポジウム』(4/30開催)では様々な家族の在り方についての討議がされる。

LGBTAをめぐる環境は日本でも徐々に開かれてきているのだろうか。

「残念ながら日本における理解はまだまだ低いのが現状ですね」

務めて明るく答える乾さんの様子は、却って現状の厳しさを際立たせているように思えた。(後編に続く)
(鶴賀太郎)