--過激な表現は深夜アニメならではですね。

田中:
深夜アニメということで、夕方アニメと差をつける必要がありました。原作の良さがありますから遠慮しないほうが良いということです。ダークファンタジーと銘打っておきながら全然ダークじゃないとか(笑)。血が出るからダークかっていうとそうではありませんが、一つの要素なのかなと思いますね。



--そんなダークファンタジーの世界で生きる主人公クレアですが。

田中:
いま主人公クレアの声を1話以降で聞き比べてみると、違いが有ると思いますよ。
クレア役の桑島さんには、1話は怖そうな雰囲気を演じてもらいました。
このあとテレサ編で純人間のクレアが登場するのでキャラクターとしての魅力をアピールしておかないとテレサ編へいく前に視聴者が離れてしまうんじゃないかと懸念が出て、怖いところじゃない部分も出すよう2話目から変えていきましたね。
1話を観ている視聴者は、得体の知れない存在を目の当たりにした、普通の村人の立場に近いと思うんです。それ以降はクレアについていくラキ少年の感覚に近くなりますよね。
そういう意味では、1話の怖めな演技は有りと言えば有りです。
ただし、「感情が無いわけじゃない」ということですね。
半人半妖で人の部分も残っているので、普通とは感情が若干違うってだけです。そこは履き違えないように流れを作りました。現実にもいるじゃないですか、強面で近づきがたいけど実は優しい、とか(笑)。その範疇から外れないようにしましたね。

--ラキと交流することで、人間らしい部分が現れるようになったのかなと感じました。

田中:
3話以降から、ラキはじめ人に対してクレアがどう動くか如実にわかるようになりますね。いままでは、妖魔に襲われました助けました、ってだけですが、情が移ったのか、普段は冷たいのにいざって時は身を挺して守ってくれるようになります。ツンデレなんです(笑)
ラキは村人に捨てられ人間不信になりつつあるけど、恩人であるクレアにはついていく。2人の関係が深まっていくいい部分でしたね。
当初シナリオ制作で、いきなりテレサ編から始めたほうが良いんじゃないかって案もありました。クレイモアの世界観にぐっと惹き込まれるのはテレサ編からなので、第1〜4話を1〜2話に短縮してテレサ編に入ってしまおうと。そのほうが視聴者の感情に入りこむものがあるんじゃないのかって。
でもやっぱり、「クレイモア」って存在は何なのかっていうのをテレサ編に入る前に表現しておかないと、テレサ編に入ったあといろんな仕込みが必要になるので、第1〜4話の導入部分をしっかり極力コンパクトにやりました。そうしないと、クレアの優しい部分も見えなくなっちゃいますからね。




--他の戦士たちの存在が明らかになったのもテレサ編からでしたが、そこで知らされたのはクレアが戦士たちの中で最弱ということですが。

田中:
戦士の中で最弱のクレアですが、普通の人やザコ妖魔に比べれば強いんですよ。なので、比較対象が必要でした。最弱戦士だからといって戦闘をスローにするわけではなくピシュっと切り裂きましたが、対クレイモア戦のときは、相手をいままでのクレアより早く強く動かしたり、クレアの表情を変えて苦戦を表したり。

--厳しい戦士たちの序列関係でしたね。

田中:
しかも最下位ですからね。チーム戦のときは弱いの使えないのと蔑まれ、それでもついていく。その姿はテレサ編の幼少クレアとラキに被るものがあります。そういえば原作ではラキにようやく会えましたね。集英社さんから毎号送られてくるので、いつも読ませていただいてます。

--原作をアニメ化するにあたり、工夫はございましたか?

田中:
原作が連載している中でアニメが始まりましたから、どこで収束させるのがいいか悩みました。テレビシリーズにファンがついてくれたのに「続きは原作で!」は無かろうと(笑)半年かけて宣伝したみたいになってしまう。なので、途中からアニメオリジナルストーリーに分岐させてもらっています。商売としては、「これからどうなる!?続きは原作で!」ってしたほうが美味しいのでしょうけど(笑)
アニメファンがマンガも絶対観るとは限らないので、物語としてひと区切り終わらせたかったという感じですね。

--アニメオリジナルストーリーに進むのはいかがでしたか。

田中:
原作側から、一歩も変えてほしくないというオーダーがある場合もあるのですが、今作はそうではありませんでした。
ただ「敵のプリシラを殺して終わりにはしないで欲しい」というオーダーがあり、そういう結末でなければOKということでした。おそらく、原作でプリシラを追いかけている状態ですから、アニメでひと区切りついてしまわない方が良いということでしょうか。

--深夜アニメの中では、視聴率が高かったと聞いています。

田中:
前の番組が『デスノート』だったので、1時間ジャンプ作品枠だったんです。デスノートは3クール分あって、その3クール目と『クレイモア』が続いて放送されていました。デスノートはすでに視聴者がついていましたから、アニメ好きは続けて観ていたんでしょうね。棚からぼた餅です(笑)。今より深夜枠のアニメが多かった時期なのに、好成績でした。
原作をぎゅっと詰め込んだ内容でしたから、原作ファンも見応えがあったんじゃないかと思います。
あとはシナリオの段階で尺をまとめて、いいところで「また次週!」として来週の視聴につなぎ、毎週観ていただくために工夫しました。