人間と動物の中間の生物が生まれる可能性も!? iPS細胞が踏み込む未知の領域
すでに日本中の誰もが知っている情報だが、山中伸弥京大教授らがIPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究でノーベル医学生理学賞を受賞した。とはいえ、最近のワイドショーなどでiPS細胞がらみのネタと言えば、山中氏よりも森口尚史氏を見かけることが多い。
iPS細胞を臨床で応用したと虚偽の発表をした件もさながら、森口氏がキャラ立ちしていることもあり、面白半分で取材されているようにも見える。確かに森口氏の虚偽は問題だが、彼の研究実績をロクに確認もせず、大々的に報じていたのは誰だったのだろう?
で、話題のiPS細胞である。どんな細胞なのかは、ここでは説明しきれないので、ネットで検索して調べてほしい。筆者が気になるのは、この細胞が「万能」であるという点だ。「万能」であるがゆえに、ノーベル賞にたどりついた。しかし、「万能」とは毒にも薬にもなる両義的な存在、すなわち「ファルマコン」になりうることも意味する。
東京新聞を読んでいて、気持ちが悪くなってきた。2012年10月11日の1面に掲載された「再生医療 危うい倫理」と言う記事だ。「人間並みの記憶力を持つマウスや人間の皮膚を持つサルなどがあらわれるかも」という書き出して始まるのだが、記事の中のある記述を読んでなんともいえない気分になったのである。
それは、iPS細胞の研究により「人間と動物の境界があいまいになるという倫理的な課題が浮上した」という部分だ。すでに「マウスとラットが合体した動物」は生まれていると言う。また、「豚で人間の膵臓を作る」研究も進んでいる。今年6月には横浜私立大学の谷口英樹教授らが「マウスに人間の肝臓を作った」と発表した。
記事によれば、「国の指針では、動物の受精卵に人間の細胞を移植し、子宮に戻して個体を作り出すことを禁じている」。その理由は、「人間と動物の中間の生物ができてしまう恐れがあるから」である。一方、「人間の細胞や組織を、動物へ移植することは認められている」と言う。
「合体」とか「中間」と言う単語が登場しているが、ロボットの話ではない。人間を含めた、生き物同士を「合体」させたり、ある生き物と別の生き物の「中間」の生き物ができる可能性がある、という話である。というか、技術的にはそれが可能な領域にまで、研究が進んでいると見ていい。
そうなると、記事が指摘するとおり、「やっていいことといけないことを、どのように線引きするかという問題に直面する」のである。すでにそれをやる技術はある。しかし、それをやることは倫理的にどうなのか。つまり、生き物同士を「合体」させたり、「中間」の生き物を誕生させてよいのかということを、私たちは真剣に考えていかなければならないのである。
私たちが倫理的な部分を監視しなければ、研究者は暴走する。「人面魚」やら「人面犬」が都市伝説で話題になった時期があるが、iPS細胞によって本物の「人の顔を持つ魚」やら「人の顔を持つ犬」が誕生してしまうかもしれない。それがいいことなのか、いけないことなのか。筆者は、「いけないこと」だと考えている。
(谷川 茂)
