東北楽天ゴールデンイーグルス星野仙一監督が7日の全体練習で、枡田慎太郎銀次両内野手に和式トイレの使用を推奨した。

 前日の対阪神タイガース第4回戦では、枡田が2失策。銀次も記録に残らない守備のミスを犯した。
 試合は先発の田中将大の好投で勝利したものの、相次ぐ若手野手のミスに指揮官は、「生活習慣が変わっているかもしれんけど、若い選手は洋式便器に慣れとるから股関節が硬い。内野手は和式でせい」と檄を飛ばした。

 本城雅人の「スカウト・デイズ」(PHP研究所)は、球界のスカウトたちにスポットを当てた野球小説だ。
 もちろんフィクションだが、筆者の本城はサンケイスポーツ出身。同書の執筆にあたっても、西鉄ライオンズ(現在の埼玉西武ライオンズ)の元スカウトである宇高勲氏をはじめ、実際のスカウトたちのエピソードなどを参考にしている。
 それだけに、球界にその人ありと言われた名スカウトである堂神恭介のスカウティングには迫力がある。ライバル球団との騙し合いあり、盗聴あり、脅しまがいの選手の説得ありのスカウティングは、まさに戦争だ。

 そんなスカウティングだが、星野ゴールデンイーグルス監督が枡田・銀次両内野手に勧めたように、和式トイレの重要性を紹介している。
 近年、投手の重心が高くなったことと生活様式の変化の関係を指摘し、「昔の日本は、どこの家も和式便所だったろ。毎朝、用を足すたびに、こうやって股関節が柔らかくなって、下半身が鍛えられたんだ」と指摘している。

 このため堂神スカウトは部下に、目を着けた選手がいたら、必ずその選手の自宅に上がることを命じている。
 選手の自宅に上がれば、選手がどのような環境で育ったのかを知るヒントを掴める。選手が両親のどちらに似ているか、両親の職業や経歴が選手にマイナスにならないかが、わかる。家具から、両親の趣味がわかり、交渉の糸口を掴むことができる。
 さらに食事をご馳走になれば、両親の出自もわかる。堂神スカウトは、「先祖代々、関東でずっと育った人間より、大阪や九州の選手の方が活躍している。大阪や九州の血が入っている選手は性格も体の強さも違う」と時論を展開している。

 そんな堂神スカウトが最も好む選手は、「生まれてこの方、ジャンケンで負けたことがない選手」だ。今でいう「持っている選手」で、こればかりは天賦のもの。努力して改善するものではない。堂神スカウトは、「そんなヤツがいたら、オレはすぐさま獲りにいく」としている。

 また、「戻る場所が無い選手」の評価も高い。家族が深刻な経済的問題を抱えている、近所から鼻つまみ者にされている、家族が離散しているといった境遇から這い上がって来た選手を、高く評価している。

 もちろん、このようなスカウティングは堂神スカウトの主観によるところが大きい。昨年映画公開され、わが国でも話題なったマイケル・ルイスの「マネー・ボール」では、オークランド・アスレチックスビリー・ビーンGMが主観に依存する従来のスカウティングを否定する様子が描かれている。
 またマジックと言われる堂神スカウトも、必ずしも百発百中とはいかない。

 だが、現在メジャーリーグで活躍しているテキサス・レンジャーズダルビッシュ有をはじめ、プロ野球選手の中にスカウトの目にとまらなかった選手は一人もいない。

 スカウトたちは今日も、鋭い眼光を光らせている。