ワクチンの正しい知識を身につけて、感染を予防しよう

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6月1日、日本記者クラブで「ワクチン予防医療フォーラム」が開催された。

このフォーラムは、今後の日本の予防医療をめぐる環境を充実させていくことを目的として開催されている。

7回目となる今回は、独立行政法人国立病院機構三重病院院長の庵原俊昭氏による「ワクチンのABCからXYZまで 〜ワクチンの基礎から臨床応用まで〜」と題した講演が行われた。

庵原氏は厚生労働省の「新型インフルエンザワクチンの流通改善に関する検討会」の座長を務めたほか、2010年12月には、インフルエンザワクチンの治験調整医師として治験を主導。

国産ワクチンの開発を実現させたことが評価され、第23回人事院総裁賞(個人部門)を受賞した経歴をもつ。

ワクチンは、感染予防のほかに、感染しても発症を予防したり、発症したとしても重症化を防ぐ効果があるという。

また、一人が感染、発症しても、周囲の人がワクチンを接種していれば、流行を防げるとのこと。

現在、麻疹が局地的に出ているが、日本全国に広がっていないのは、多くの子どもたちが麻疹のワクチンを受けているからだと、庵原氏はワクチンの効果をあげた。

ウイルスの感染症には、潜伏期間が2週間程度の全身性ウイルス感染症と、潜伏期間2〜3日の局所性ウイルス感染症がある。

全身性ウイルス感染症には、種痘、麻疹(別名はしか)、水痘などがあり、感染しても、急いでワクチンを接種することで、発症を予防することができる。

一方で、インフルエンザウイルスやロタウイルスなど、局所性ウイルス感染症には、ワクチンを接種しても効果はない。

流行する前に接種することが必要だ。

では、ワクチンを接種すれば、完全に発症を予防できるのだろうか。

庵原氏によれば、ワクチンを受ける側とワクチン側、両方の免疫をつくる力や、作られた免疫が持続する期間、そしてワクチンで作られた免疫でカバーできる割合や範囲を考えなければならないそうだ。

最近では、子宮頸(けい)がんを予防するワクチンや、肺炎球菌を予防するワクチンなど、新しいワクチンがあるが、子宮頸(けい)がんをおこすウイルスは15種類あり、ワクチンに入っているウイルス2種類ではカバーできるのが70〜80%にとどまる。

肺炎球菌も90種類以上あるが、ワクチンでカバーできるのは75%程度。

しかし、100%ではなくても、予防効果があることはたしかだ。

ワクチンを接種したのに発症した場合、血清型や遺伝子型の流行を監視してワクチンの改良に役立てているという。

ワクチンは、当然のことながら、その疾患の発症リスクが高まる前に、必要な回数を接種することが大切だ。

接種による副反応出現リスクが高くなる前であり、適切な免疫が獲得できる時期に接種することが望ましい。

新生児は生後2カ月から6カ月までに、BCG、ポリオ、DPT(三種混合ワクチン)、インフルエンザ、肺炎球菌、ロタなどのワクチン接種が必要。

ワクチンによっては、半年の間に3回の接種が必要なものもある。

そこで庵原氏は、同時接種を提案。

ワクチンと不活化ワクチンを同時に行っても、個別接種時と免疫原性はかわらず、副反応の増加もない。

また、人の免疫力にはゆとりがあり、一度に多くの抗原が入っても、対応する能力が十分あるのが同時接種をすすめる理由だ。

庵原氏が病院長を勤める三重病院では、注射ワクチンの単独接種のスケジュール例のほかに、2種類同時接種、3種類同時接種のスケジュール例を作成。

母親と相談して接種スケジュールを決定している。

もし、複数回の接種が必要なワクチンで、2回目、3回目の接種を逃してしまったとしても、気づいたときに病院で相談することを庵原氏はすすめる。

例えばロタワクチンの場合、1回しか接種していない場合では、効果が60%程度なのに対し、2回の接種では81%、3回の接種で88%の効果が報告されているとのこと。

3回できなくても、2回接種するだけで、効果がかなりアップするのがわかる。

「接種し損ねたことで、子どもに対する負い目を感じるお母さんは多いですが、気にする必要はありません。

子どもから大人まで感染症予防のために、ぜひワクチン接種をうけてください」と庵原先生は講演を締めくくった。