「こんな時はポケット本や!」

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映画『神様のカルテ』にて医師役で主演する嵐の櫻井翔が、試写会で行われたトークショーにおいて「医師役をやって一番驚いたのは、お医者さんが本をポケットに入れているのを初めて知ったこと」と言っていた。彼自身も収録中、2冊の本を入れていたらしく、「これが医師の持つ不安の重さ、命の重さかと感じた」という言葉に、会場に集まったのだそうだ。医師の方々を支えるその本は、一体どんな本なのだろうか?

知り合いの医師の方に聞いてみたところ、「私の場合は、診断基準、治療法などが簡単にまとめてある本を入れていました。また、当直中は自分の専門外の患者さんを見ないといけないこともあるため、救急対応の本を入れていたこともあります」とのこと。入れている本は通称「ポケット本」と呼ばれるものであり、ちょうど白衣のポケットに入るくらいの大きさで、治療に必要な知識をコンパクトにまとめた本があるのだそうだ。治療に当たっては膨大な量の知識が必要となるが、分厚い専門書をいつも持ち歩くわけにはいかない。ポケット本は医師の強力なサポートツールなのである。

ポケット本は医師の専門分野にもよるが、100ページ程度の比較的薄いものから500ページほどもあるずっしりしたものまで様々。内科の場合は『ワシントンマニュアル』という本がかなり有名なポケット本がなあるのだが、ページ数はなんと1000ページを超えており、また価格は8820円(税込)と、質量ともに我々の想像を遥かに超えたポケット本となっている。

ちなみに、日々命を向き合う医師の方は精神的な負担も相当あると思われるのだが、例えば自分の好きな小説といったような、医学知識とはまた別の、自身の精神的な支えとなるような本をポケットに入れたりはしないのだろうか? 筆者が調査した範囲では、そのような医学分野とは違った本をポケットに入れている医師には巡り会わなかった。「ポケットの数や大きさも限られていますし、治療に関係する本を入れるだけで精一杯です」というのが多くの医師の方が持っている実感のようである。

ちなみに冒頭で触れたトークショーには約130名の看護師が観客として参加しており、参加したある看護師さんによると「ポケットの中には薬のあんちょこ(参考書のことをこう呼ぶらしい)のほか、患者さんに見せてあげたい折り紙など、治療に関係ないものも入っている」のだそうだ。医療の現場では今日も、医師や看護婦が命と向き合っている、ポケットに本を入れて。
(エクソシスト太郎)