電子書籍化で大化け! 気になる本はアノ分野
先日、電子書籍化されてヒットした本として、『ヤクザ的な人々に学ぶ 負け知らずのススメ』(太田出版)についてご紹介したが、同社においてもう1つ、電子書籍化で大化けした本があるという。
タイトルは、『ぼくらはみんなハゲている』(藤田慎一)。
やっぱりみんな気になる、ハゲの話題。そもそもの書籍は、2005年9月。企画当初の狙いはどんなものだったのだろうか。担当者に聞いた。
「フジテレビで放映された同名ドキュメンタリー番組がものすごく真剣、かつ面白い内容だったので、すぐに番組ディレクターに声をかけて書籍化しました。日本では4人に1人が薄毛に悩んでいる、という統計データがあり、『これは身近な問題として読んでくれる人が何百万人もいるのでは…!?』と期待したのですが……」
ドキュメンタリー本としての評価は高く、新聞や雑誌で書評も結構出たものの、売り上げの面では当時は初版の五千五百部止まりだったという。
「完全に予想外だったのは、女性からの反響が男性より明らかに多かったことです。ハゲというより、毛髪問題から『老い・美容』を扱った本として読まれていたようです」
それが、今年6月末の電子書籍化によって、1万ダウンロードと、急激に売り上げを伸ばした。
「弊社のアプリで1万ダウンロードを越した初めてのケースで、驚かされました。アプリ版を期間限定価格で85円にしたとき(本来は350円)、すでに品切れになっていた紙書籍版のユーズド価格が、本来1500円なのに、突如4000円近くまで高騰しました。デフレ化とプレミア化の同時発生ともいえ、出版社としても大変興味深いケースでした」
紙書籍は入手困難になって数年経ってからも、年に数件の問合せが来続けていたそうだが、電子化によって「立ち読み気分」で買うことができるようになったのか、反響数が激増。「最終的に、紙書籍時のマイナスは取り返してお釣りが来た」というほどのヒットになったという。
それにしても、なぜ電子書籍化によって、突然大化けしたのだろうか。
「この本には複数の大手カツラメーカーの『無料ヘアチェック』現場に著者がマイケル・
ムーアのように突撃して実態をレポートする場面があり、これがツイッターで話題になりました。ツイッターは、紙書籍刊行時はまだ存在せず、つぶやきに向いた題材と電子化のタイミングとがマッチしたかもしれないですね」
また、ツイッターのソーシャルリーディングサービス「ツイパブ」へのコンテンツ提供に踏み切ったのも、タイトルの露出という面で効果的だったのではないかという。
「一方で、昨年弊社で新設したアプリ・電子書籍部署の担当者(女性)が、たまたま個人的にハゲへの偏愛が強い人物で、意地でも売ろうと愛のあるプッシュをしてくれたことが実は大きいんです。その熱が各関係者を動かし、最終的に読者にまで伝染したのではないかと思います。電子でもアプリでも、結局は担当者の『これを売りたい!』という愛情に尽きる、と出版の原点を再認識しました」
ちなみに、同社で紙書籍から電子書籍化したことで、売り上げが変わった例には他に、ガラケーの電子書籍があるそうだ。
「10代20代の女性ユーザーが多いということも一因だったかと思いますが、書店(ネット書店ですら)買いにくいエロやダークなコミックは、紙では初版止まりでもロングセラーで常に売れ続けています」
出版不況が続くなか、出版社はどこもあの手この手で工夫している。それでも、やはり原点にあるものは変わらない、「本に対する愛情」なのかも。
(田幸和歌子)
タイトルは、『ぼくらはみんなハゲている』(藤田慎一)。
やっぱりみんな気になる、ハゲの話題。そもそもの書籍は、2005年9月。企画当初の狙いはどんなものだったのだろうか。担当者に聞いた。
ドキュメンタリー本としての評価は高く、新聞や雑誌で書評も結構出たものの、売り上げの面では当時は初版の五千五百部止まりだったという。
「完全に予想外だったのは、女性からの反響が男性より明らかに多かったことです。ハゲというより、毛髪問題から『老い・美容』を扱った本として読まれていたようです」
それが、今年6月末の電子書籍化によって、1万ダウンロードと、急激に売り上げを伸ばした。
「弊社のアプリで1万ダウンロードを越した初めてのケースで、驚かされました。アプリ版を期間限定価格で85円にしたとき(本来は350円)、すでに品切れになっていた紙書籍版のユーズド価格が、本来1500円なのに、突如4000円近くまで高騰しました。デフレ化とプレミア化の同時発生ともいえ、出版社としても大変興味深いケースでした」
紙書籍は入手困難になって数年経ってからも、年に数件の問合せが来続けていたそうだが、電子化によって「立ち読み気分」で買うことができるようになったのか、反響数が激増。「最終的に、紙書籍時のマイナスは取り返してお釣りが来た」というほどのヒットになったという。
それにしても、なぜ電子書籍化によって、突然大化けしたのだろうか。
「この本には複数の大手カツラメーカーの『無料ヘアチェック』現場に著者がマイケル・
ムーアのように突撃して実態をレポートする場面があり、これがツイッターで話題になりました。ツイッターは、紙書籍刊行時はまだ存在せず、つぶやきに向いた題材と電子化のタイミングとがマッチしたかもしれないですね」
また、ツイッターのソーシャルリーディングサービス「ツイパブ」へのコンテンツ提供に踏み切ったのも、タイトルの露出という面で効果的だったのではないかという。
「一方で、昨年弊社で新設したアプリ・電子書籍部署の担当者(女性)が、たまたま個人的にハゲへの偏愛が強い人物で、意地でも売ろうと愛のあるプッシュをしてくれたことが実は大きいんです。その熱が各関係者を動かし、最終的に読者にまで伝染したのではないかと思います。電子でもアプリでも、結局は担当者の『これを売りたい!』という愛情に尽きる、と出版の原点を再認識しました」
ちなみに、同社で紙書籍から電子書籍化したことで、売り上げが変わった例には他に、ガラケーの電子書籍があるそうだ。
「10代20代の女性ユーザーが多いということも一因だったかと思いますが、書店(ネット書店ですら)買いにくいエロやダークなコミックは、紙では初版止まりでもロングセラーで常に売れ続けています」
出版不況が続くなか、出版社はどこもあの手この手で工夫している。それでも、やはり原点にあるものは変わらない、「本に対する愛情」なのかも。
(田幸和歌子)