山梨県勝山の菱山地区で取れた甲州種のワイン。土壌と品種を知れば国産ワインはもっと楽しい。

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近年、ワインツーリズムを通して国産ワインの人気が高まっている。特に山梨県は国内を代表するワイン生産地として有名だ。山梨県産ワインを手に取った時、しばしば目にするのが「甲州」というブドウ品種。シャルドネやメルローなど外国生まれの品種は聞いたことがあるけれど、甲州種とはどのようなものなのだろうか? 山梨県勝沼で甲州ワインを醸造し、「グレイスワイン」のブランド名で親しまれている中央葡萄酒株式会社でお話をうかがった。

「甲州種とは日本固有の白ワイン品種です。元々、山梨県はブドウを食用として約千年にわたり栽培してきました。そして、明治時代の殖産興業をキッカケにワイン生産も始めました。2010年には国際品種として、甲州種がヨーロッパにある国際的な審査機関OIV(葡萄・ワイン国際機構)に品種登録され、本格的に輸出も始まったのです」

じつは世界的にも認められた品種だったのだ! そこで質問。甲州種はどのような食事に合わせたら良いのだろうか? 

「和惣菜にとても良く合います。寿司やダシを使った料理との相性はもちろんのこと、酸味は塩でいただく天ぷらに、ミネラル感は魚介ともマリアージュします。日本でいただくフレンチやイタリアンにもぴたりと合いますよ。なぜなら、国内のフレンチなどは日本で取れた食材を使い日本向けの味付けをしています。つまり生まれた風土が甲州種と同じです。ゆえに、相互に良さを引き出してくれます」

今、世界的なヘルシー志向に乗って、日本食が注目されている。山梨県では、それに合わせられる甲州種を、世界に向けて発信しようとプロジェクトも進行中だ。

「特にワインの本場EU圏へ甲州種の良さを広めていきたいです。2009年からは山梨県内のワイン生産者15社とKOJ(Koshu of Japan)という団体を立ち上げ、海外でPR活動を展開しています。2010年は世界のワイン情報の発信地であるロンドンで高評価をいただきました。また弊社では、オーストラリアへの輸出もおこなっています」

中央葡萄酒の場合、JAL国際線のファーストクラスで甲州種から造られたワインが、ANA国際線のファーストクラスには、甲州種ではないがシャルドネ(白)とメルロー(赤)から造られた国産ワインを提供している。そこで味を知った外国人や客室乗務員の方々が、直接ワイナリーを訪れたりもするそうだ。

ますます認知度を増している甲州種と国産ワイン。造り手も「ハレの日には甲州ワインを飲もうと言われるように認知度を上げていきたい」と意気込みも高い。今後も国産ワインと甲州種に注目だ。
(加藤亨延)