2月29日夜、伊サッカー協会規律委員会は、カリアリのリーグ戦勝ち点3剥奪と2万ユーロの罰金、同チェッリーノ会長に1年間の職務停止処分及び1万ユーロの罰金処分を下した。今季最下位が定位置のカリアリにとって、セリエB降格に向けてとどめに等しい処分だ。

 しかし、一体何がカリアリに起きたのだろうか? 事の発端は1年前に遡る。カリアリで長くプレーしていたDFジャンルカ・グラッサンドニア(現在35歳)が、日刊紙「イル・マッティーノ」紙のインタビューに応える形でクラブと同会長を糾弾した。糾弾の内容は、ドーピング検査の際チームメイトの身代わりに排尿行為を強いられたこと、さらにクラブが一部のウルトラス・グループを使って選手たち、特にグラッサンドニアに対して暴力行為を行っていたというものだった。彼の車はウルトラスから燃やされ、彼らから直接暴行を受けた事件も起きた。

 インタビューの糾弾を受け、逆にクラブと同チェッリーノ会長はグラッサンドニアを即刻告訴したのだが、これが協会の怒りをかった。協会は選手、クラブを含む協会登録者間の一般法廷闘争が相次ぐことに飽き飽きしており、規約内に厳しい仲裁条項を定めている。今回の事件は、カリアリ側がそれを無視して協会に伺いを立てることもなくグラッサンドニアを訴え、さらに彼の訴えが無視できる内容ではなかったため、協会は容赦なくカリアリに鉄槌を下したのだ。

 処分を受けたチェッリーノ会長は「大いなる誤解だ」として、同日中に協会内スポーツ裁判法廷へ上告した。カリアリの盟主となって久しい同会長は、地方都市の名士然としているが一癖も二癖もある人物として知られており、「つねに法規を遵守してきた」という彼の言葉を額面通りに受け取ることは難しい。同会長は今季かぎりをもって同職を退く、と再三くり返している。

 2日のジェノア戦では勝利を収めたが、今季のカリアリは選手間で暴力沙汰が起きるなど醜態を晒し続けている。もちろん事の真偽はまだ定かではないが、“クラブがウルトラスを使って(気に食わない)自チームの選手を脅迫”という、にわかには信じがたい事件も“さもありなん”と思わせる前時代性が、イタリアの地方チームにあるのも確かだ。いずれにせよ、カリアリのB転落を止める手立ては少ない。