ミランでの未来を嘱望され、20歳でセリエAデビューを果たしたFWボリエッロだったが、インザーギやシェフチェンコ(当時)らとポジション争いをして勝てるわけがない。
 毎年、ミランからレンタル放出の一番手とされ、エンポリやレッジーナ、トレビゾなどマイナーチームをさすらう辛酸を舐めた。そして移籍した先々でのディスコ通い(とナンパ)は半ば恒常化し、近年彼の名前が上がるのは女性がらみの話題のみという有様だったのだ。

 これまで1シーズン7ゴールの個人記録しか持っていなかったFWが、今季から加入したジェノアで大ブレイク。コンスタントに16得点を重ね、目下得点王レースをリードしている。これをサプライズと呼ばずして何と言おう。今夏のユーロに向けて、彼を見つめるイタリア代表監督ドナドーニの視線も熱い。ボリエッロは言う。

「これから先の2か月が勝負さ。人はシーズンの最後に起きたことしか憶えていないもの。ジェノアでやっと連続して出場する機会を得たんだ」

「俺は酒も飲まないし、タバコもやらない。今の自分はチームを映す鏡さ。責任を与えられたとき、何千もの人間を動かすクラブのセンターFWになったとき、人として成熟する必要に迫られるんだと知ったよ」

 あの“女たらしFW”が改心して、模範的なストライカーに生まれ変わろうとしているのだろうか。否、本人も認めるナルシストの本性は隠せない。

「俺だって普通の人間だ。一般人と同じようにディスコには通い続けるよ。俺がイケメンすぎるから、ファンがサッカー選手として真剣に評価してくれないって? だったら、よりゴールするだけさ」

 いやはや、ビッグマウス癖も治っていないが、現在彼の移籍市場価値が1500万ユーロ近くまで跳ね上がっているのは事実なのである。

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