元フランス代表MFのビカシュ・ドラソー(34)が11日、カナル・プリュス局を通じて現役引退を表明した。リヨン、ボルドー、パリ・サンジェルマン(PSG)などリーグ・アンの名門クラブを中心に412試合に出場、ACミランでもプレーするなど輝かしい経歴をもつドラソーだが、2006年10月に監督、経営陣との対立でPSGを解雇されて以来、ついにピッチに返り咲くことができなかった。

 PSG をクビになったドラソーには、ボルトンやフラムといった国外のクラブ、あるいはリーグ・アンの複数クラブからも誘いがあった。しかし左足首を故障してしまい、入団先が決まらないまま9ヶ月が経過。ようやく今季の7月にセリエAのリボルノと契約を結んだものの、ケガの回復が思わしくなかったこともあって、出番なしが続いた。昨年12月あたりからフランス2部のグルノーブルが熱心に獲得に動き、本人も当初は非常に乗り気だった模様だが、結局「個人的な問題」を理由にオファーを断った。

 ドラソーは、カナル・プリュス局のインタビューに「サッカーをやめる決意をした。これからは別のことをしようと思う。少し悲しいけれど、同時になかなか満足を感じてもいる。これがよい選択だと確信しているからだ」と答えている。「個人的な問題」については明らかにしていない。

 引退後の進路については、13日付の日曜紙「ジュルナル・ド・ディマンシュ」によると、ドラノエ・パリ市長(社会党)の再選に向けたキャンペーンに参加する模様だ。ドラソーは知的な言動で知られ、サッカー選手としては“変わり種”と見られていた。W杯で自らビデオを回してドキュメンタリー映画を制作し、その行為は物議をかもしたものの、作品のクオリティについては評価が高かった。スポーツ界の同性愛差別に対する反対運動を支援したこともある。

「自分はこれまでずっと左派の人間だった。サッカー選手としてはめずらしいんだ。ドラノエ市長は素晴らしい人物。パリ市の政策や、彼の姿勢を高く評価している」と語った。ただし、党員になるかどうかは思案中で、将来の政界進出については「興味がない」と話している。ドラノエ市長が再選された場合は、奉仕活動などを通じてパリ市に協力したい考えだという。