ライバルキャリアのSIMカードが利用できることは一見すると自社の利益を損ねるように感じられる。しかしこのデュアルサービスは1枚のSIMカードは必ず自社CDMAのものを利用することになる。もう1枚のSIMカードに自社GSMのものを利用してもらえばより収益増につながることはもちろんだが、中国移動のGSM SIMカードを利用できるということは、逆に言えばライバルの顧客を取り込むことも可能になるのだ。ユーザーにとっても自分の利用状況に応じて2種類のSIMカード、もしくは2社のキャリアを使い分けられるわるメリットがあり、この利便性からビジネスユーザーを中心に利用者が増えているとのことだ。


この世界風とは別に、この1-2年の動きとして中国内の中小メーカーも同様の"デュアルSIMカード対応"端末を続々と発売している。ただしこちらはGSMのデュアル端末で、キャリアとは無関係に各メーカーから発売されている。1台の端末内にGSM携帯電話ユニットが2つ搭載されており、挿入した2枚のSIMカードで同時待ち受けできるようになっている。もちろんSIMカードごとに音声通話やSMSを利用したり、電話帳を分けることもできる。2つの電話番号の組み合わせはSIMカードを入れ替えるだけであるから自由自在であり、通信キャリアに別途サービスを申し込む必要もない。また海外渡航時も自国のメインSIMカードと現地のSIMカードを両方同時に利用できるため利便性は高い。キワモノ製品のようにみえるが、実はしっかりした実用性を備えているのだ。
 
大手メーカーからはまだこのようなGSM端末はほとんどなく、これらは中小メーカー製品が中心となっている。これには中国携帯電話メーカーの乱立という背景がある。中国の携帯電話の生産は、2005年2月からそれまでのライセンス制を廃止し認可制となった。以来メーカー数が急増する一方で、中国内での中国メーカーのマーケットシェアは年々減少し現在では3-4割程度にまで落ち込んでいる。このためブランド力や技術力に長けている大手メーカー以外は、低価格化や大手メーカーにない機能の搭載による差別化を行う必要性に迫られることになってしまった。その差別化の一つの答えが、このデュアルSIMカード対応端末なのだ。
バッテリーをはずすと、SIMカード挿入口が2つ用意されている。ここに2種類のSIMカードを装着可能待ち受け画面左上にはアンテナマークが2つ。また画面中央上には通信キャリア名が2段で表示されている


当初は大手メーカーとの差別化として搭載されたこの機能も、続々と端末が登場していることから市場では一定の評価を受けているようだ。中国は国土が広く、地域を移動して携帯電話を利用すれば国内ローミング料金となり、通話料は割高となる。また同一地域内でもプランにより受信無料や発信が安い、などの料金が複数存在している。このため2枚のSIMカードを常時利用することで利用料金をより安く上げることも可能になるのだ。また日本のように携帯料金にインセンティブといった見えない料金が含まれていないため、基本料金や通話料金も安く手軽に2枚目のSIMカードを所有することもできる。"2つの電話番号を使いたければ2つの携帯電話を1台に入れてしまえばよい"という逆転の発想ともいえるこの端末、インセンティブ制度の変更やメーカーブランド端末が発売されるようになれば、いつかは日本での登場もあるかもしれない。


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山根康宏
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