柔軟剤などの強い香りで体調不良に… 「くさくて学校に行けない」 小学生から届いた1通の手紙 脱「香害」徹底する無添加石けんメーカー
柔軟剤などの強い香りで体調不良をうったえる「香害」。脱「香害」を目指す、石けんメーカーの取り組みとは。
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(香害に悩まされている人)
「外だと(マスクなしでは)生活できない」
「『うっ』ていう、なんだこの匂いはみたいな」
柔軟剤などの香料で、頭痛など体調不良になる香りの害「香害」。約10年前、香り付き柔軟剤の普及に伴って生まれた言葉で、アレルギー反応を起こす「化学物質過敏症」を発症する人もいます。
そんな中、無添加にこだわり香害への取り組みを行う企業が。
福岡県北九州市にある「シャボン玉石けん」。自然由来の原料を使った「無添加石けん」の製造・販売を行い、香害への啓発活動もしています。今回は特別に、工場の中を案内してもらいました。
石けんづくりの仕上げは“味見”で
(シャボン玉石けん 石けんアドバイザー 前田博昭さん)
「重要な部分もあるので、見られるところは限定されている。こちらが、石けんを作っている釜です」
油とアルカリ成分を混ぜてできるのが石けん。牛脂・パーム油・ヤシ油などの天然油脂にアルカリ成分を混ぜて炊きこんでいきます。工業的に精製された油を使えば数時間で出来上がりますが、ここではあくまで天然成分にこだわり、炊きあがりまで1週間かかります。
釜焚きを担当して14年の梅林さん。見た目や香り・手触りで状態を確かめながらの作業ですが、それだけではありません。
(シャボン玉石けん 製造部 梅林恭平さん)
「アルカリの刺激でピリピリするけれど大丈夫。石けんの状態を判断するために、味を確認しながら石けんのもとを作っている。シャボン玉石けんは原料が天然の油のみなので、味見しても安心」
「石けんのもと」どんな味?
味見で塩加減やアルカリの刺激を確認しながら、「石けんのもと」を完成させます。
(大石邦彦アンカーマン)
「人生で初めて石けんをなめさせていただきます。刺激がある、しょっぱい」
(シャボン玉石けん 製造部 梅林恭平さん)
「塩とアルカリが入っている」
この工場では、洗濯用やシャンプー・ボディーソープなど100種類を超える石けんを作っていますが、すべて天然成分。
(シャボン玉石けん 石けんアドバイザー 前田博昭さん)
「できたての石けんバーです」
(大石)
「温かい!柔らかい」
温かいうちに成形して、石けんが出来上がります。
「無添加石けん」切り替えで売り上げは10分の1に
昔は合成洗剤も売っていたという会社が、無添加石けん一本に絞ったのは52年前。先代社長の決断でした。
(シャボン玉石けん 森田隼人社長)
「元々は先代社長が一般的な合成洗剤を販売していたが、肌トラブルに見舞われた。注文されて作った無添加の石けんを使うと、肌荒れがきれいになった。調べていくと、無添加の石けんは、環境にも体にも良いと気付いた。1974年から無添加石けん一筋になった」
当時は、合成洗剤全盛期。売り上げは100分の1にまで落ち込み、100人以上いた社員もわずか5人に。
17年間も赤字が続きましたが、アトピーや肌荒れに悩む人から見直され、今では売り上げ100億円を超える安定経営になっています。
「くさくて学校に行けない」小学生から届いた相談の手紙
今は単に石けんを製造販売するだけでなく、「香害問題」の啓発にも力を入れています。
(シャボン玉石けん 森田隼人社長)
「北海道の小学生から手紙をもらった」
【手紙の内容】
学校がくさくて、じゅうなんざいのポスターも学校にはってるけど、みんなくさいふくをきて、学校に来てるから、ますます学校に行けなくて、こまってます。
Q.これを見た時どう思った?
「衝撃的、悲痛な叫びだと思った。学校に行けないような、ちょっと気分が悪くなるレベルではない人もたくさんいることを知った。なんとかしなければいけないと思った」
これを香害を啓発する広告として全国紙に掲載。さらに…
(シャボン玉石けん 森田隼人社長)
「1970~80年代の『公害』を連想させるようになっている」
柔軟剤のボトルから、ピンクの煙が出ている図柄。この二つの広告は、日本新聞協会の新聞広告賞に選ばれました。
(シャボン玉石けん 森田隼人社長)
Q.ほかの洗剤メーカーを敵に回してしまう可能性があったのでは?
「我々としては、やるべきことをやる。正しいことをやっていくスタンス。困っている人をなんとかしたい思いもあった」
専門家「香料も化学物質という認識を」
柔軟剤で現在主流の技術は、プラスチックのマイクロカプセルに香料を入れて香りを長続きさせるものですが、それが香りの害を悪化させる原因だという専門家の指摘も。
(明治大学 寺田良一名誉教授)
「香料も化学物質という認識を持ってほしい。(マイクロカプセルが)強制的に社会にばらまかれている状況。香りの徐放技術(長続きする技術)をやめてもらうことが重要」
明治大学の寺田教授は、より積極的な香害対策が必要だと強調します。
(明治大学 寺田良一名誉教授)
「香害は正式な医学用語になっていない。疫学的にこれを使えば、こういう症状が出るという事実はあるから、(行政には)予防的に対応していくスタンスをとってほしい」
行政も対策に前向き 広がる“脱香害”
こうした中、愛知では化学物質過敏症の患者やその家族で作る団体が、学校現場での啓発や給食用エプロンの共有をやめるなどの香害対策を県や教育委員会に要望。行政も前向きです。
(愛知県教育委員会 保健体育課 伊與田賢さん)
Q.声を聞いて、こんなことをやっていこうなどはある?
「(入学時の)保健調査票に化学物質過敏症の項目を追加するなどの対応をすることは可能」
(香害をなくすみんなの会 名古屋 石井知子代表)
「教育委員会の方から前向きに取り組むという言葉を聞いて、うれしく思った」
民間の調査によると、香りで不快感や体調不良を感じた人は全体の半数に上り、化学物質過敏症の患者数は推定1000万人といわれている状況の中、大手メーカーでつくる業界団体「日本石鹸洗剤工業会」に質問状を送ると…
「配合成分の安全性確認に加え、製品の特性、用途、使用方法などを踏まえた総合的な評価を行い、製品としての安全性確保に努めています」
安全性を確認したうえで製造販売を行っていて、多様なニーズに合わせた製品開発をしていくとコメント。
ヨーロッパではプラスチックのマイクロカプセルの使用禁止が決まった中、日本では今後も変わらないのが実情です。
においの良し悪しだけでなく、体調にもかかわる「香害」。日本でも社会全体での取り組みが求められます。
