「神社は撮影スタジオではありません」七五三で相次ぐ“映え撮影”トラブル…撮影費20万円、ママ友同士の「もっとかわいく」が過熱
秋の七五三シーズンを迎え、神社では晴れ着姿の子どもを撮影する家族の姿が目立つ。出張カメラマンを利用したり、SNS映えを意識したりする撮影が広がる一方、場所の占有や参拝者への声かけなど、撮影マナーをめぐるトラブルを理由にルールを設ける神社も出てきている。華やかさを増す七五三撮影の裏側を取材した。
【写真】レフ板に出張カメラマン…神社で広がる“本気すぎる七五三撮影”の現場
七五三撮影で相次ぐマナー違反
「神社は撮影スタジオではありません」
東京・中央区の水天宮は今年9月、公式ホームページで、外部カメラマンによる境内での撮影を事前申請制にすると発表した。水天宮の担当者は「どなたがお越しになられてもお参りができる場所というのが、神社として求められる前提」としたうえで、制度を導入した理由についてこう話す。
「もともとは自由に撮影いただいておりましたが、ご参拝の方やカメラマンのマナーをめぐって、さまざまなトラブルが見受けられるようになりました。
その都度お話をして理解を求めてきましたが、それ以上に自由に振る舞われる方が増えてきたため、参拝者が嫌な気持ちにならないようカメラマンには事前申請をお願いし、当日は受付で認証を確認したうえで撮影いただく形にしました」
撮影そのものを否定しているわけではない。水天宮が求めるのは、あくまで参拝を優先することだ。
「神社はそもそも静かに祈りを捧げていただく場所です。撮影スタジオではありませんから、美しい建物の前で撮影をするという感覚とは少し違います。神社という場所の本来の意味を皆さんにも知っていただいたうえで、思い出を残していただければと思います」(前出・水天宮)
では、実際に境内ではどのようなトラブルが起きているのか。
都内で40年以上神職に就く60代の男性Aさんは、七五三の撮影に夢中になるあまり、周囲への配慮を欠いてしまう家族やカメラマンをたびたび目にしてきたという。
「七五三の撮影中に一般の参拝者が通りかかると、『映り込んでしまうので、どいていただきたい』というようなことを言うカメラマンもいます。レフ板などの撮影機材を境内に持ち込んだり、場所を占領するように撮影したりする方もいらっしゃいました。
子どもをあやすために、大人たちが静かな境内で突然大きな声を出して、周囲の参拝者が『どうしたんだ』と振り向いてしまうようなことも珍しくありません」
さらに、神社側が対策を講じても、ルールをかいくぐるカメラマンもいるという。
「神社によっては、プロのカメラマンが入る場合、有料にしたり、事前に申請して腕章を着けてもらったりするところもあります。それでも、明らかにプロのカメラマンなのに『親戚です』と言い張る方もいました」(前出・Aさん)
都内で七五三の参拝先として人気の高い明治神宮や大國魂神社などでは、そもそも外部カメラマンによる撮影を控えるよう求め、神社内の写真館で七五三撮影に対応している。
撮影費20万円も…“映える七五三”に高まる親たちの熱
一方で、外部カメラマンを制限する神社ばかりではない。都内のある神社の神主は、七五三の予約を1日1組に限定したうえで、「参拝者が少ないからこそ、出張カメラマンの同行や柔軟な撮影に対応しています」と語った。
実際に、出張サービスが利用される代表的な機会の一つになっている。
今年5月、3歳になる娘の七五三の前撮りを行ったアイカさん(仮名・28)は、SNSで見つけたカメラマンのモニターに応募し、撮影場所には、いわゆる“インスタ映え”を意識した寺院を選んだという。
「カメラマンとは事前に打ち合わせがあり、『周囲に迷惑をかけた場合は撮影中止』『完成した写真へのクレームは受け付けない』など、30項目ほどの注意事項がありました。
カメラマンだけで10万円ほど、メイクや着物を含めると全部で20万円くらいです。七五三は時間をかけて準備するので、やっぱり気合いは入りますね。1年くらい前から用意するママ友もいます」
ただ、事前に準備を重ねても、撮影当日は予定通りにはいかなかったようだ。
「子どもが着物を嫌がってぐずったこともあり、準備に1時間、撮影に1時間半ほどかかりました。『着物を着た子どもと一緒に撮りたい』と外国人観光客が集まってくることもあり、人見知りの子だと大変だと思います」
アイカさんは、周囲への配慮からも「カメラマン選びが大事」と話す。当日は、同行したスタイリストが子どもをあやし、撮影場所への誘導も行われたという。
カメラマン歴7年の30歳男性は、「一般の参拝者を優先することは当たり前」としたうえで、近年は撮影の要望にも変化があると話す。
「最近は写真だけではなく、いわゆる『メイキング動画』も一緒に撮ってほしいという要望が増えています。結婚式などでよくあるようなものですね。
僕らも参拝されている方がいる中で撮影しているので、周りにはかなり気を使います。撮影しているだけで、あからさまに嫌な顔をされたり、『なんやこいつら』みたいなことを言われたりすることもありますが、ルールを守って撮影していれば、そこからトラブルになることはほとんどありません」
一方、カメラマン歴30年以上の50代男性は、SNSやママ友同士の張り合いが、撮影への要求を高めていると指摘する。
「ママ友のコミュニティの中での、ライバル心みたいなものが影響しているのか、よその子の写真を見せられたときに、『うちの子はもっとかわいく撮りたい』となって、要求が過剰になってしまう傾向があります。
昔はきれいに撮れば『ありがとうございます』で終わっていたのが、今は『なんでこの角度なんですか』『もっとキラキラした感じにならないんですか』と言われることが増えました。
加工アプリなどできれいな写真を見慣れていることも、求める写真のハードルを上げているのかもしれません。子どもの数が少ない分、節目の行事も大がかりになっているように感じます」
子を持つ親にとって、特別な晴れ舞台である七五三。華やかな思い出を残すことに夢中になるあまり、参拝の場への配慮を忘れてはならない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
