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増税は国民からの反発を招きやすく、政治家にとっても打ち出しにくい政策です。一方、税率を引き上げなくても、経済成長や物価上昇などによって税収が増える「自然増収」という現象があります。令和7年度の一般会計税収は当初予算の見積額を約6兆4,000億円上回りました。増税を避けながら税収を増やす「自然増収」とは何なのでしょうか。消費減税の決定を受け、『食料品消費税1% 減税×給付付き税額控除の真実』を緊急出版した矢内一好氏が解説します。

税率を変えずに増える「自然増収」

消費税の減税が、秋の国会における重要法案の一つとなっています。政治の世界では、増税は国民からの評判が悪く、議席数の減少にもつながることから、人気のある減税は歓迎されやすい傾向があります。

国の財政において、予算は歳出額を実額で計算したうえで、その歳出に見合う歳入(税収など)を見積もって編成します。したがって、4月から始まる新年度の予算における歳入は、あくまでも見積額です。実際の歳入額が判明するのは、翌年の決算においてです。

国の歳入を増やす方法として、まず挙げられるのが増税です。しかし、増税には国民からの反発が伴うため、議員側から積極的に増税を打ち出すことは難しい状況にあります。現在の政治状況を考えると、増税を掲げて政策を推進する政党は現れにくいのではないでしょうか。

国の歳入を増やすもう一つの方法があります。それは、国民からの直接的な反発を受けることなく、税収が増加する「自然増収」です。自然増収とは、税率を変更しなくても、経済成長や物価上昇などによって自然に増える税収を指す財政用語です。

令和7年度の予算では、当初予算ベースの税収見積額は77兆8,190億円でした。その内訳を見ると、消費税が24兆9,080億円、所得税が23兆2,870億円、法人税が19兆2,450億円となっています。

ところが、一般会計の税収実績額は84兆2,226億円となりました。当初の見積額を約6兆4,000億円上回ったことになります。これが、「自然増収」です。

日本では、バブル経済の崩壊、リーマン・ショック、新型コロナウイルスの感染拡大による経済停滞など、税収増につながる明るいニュースが続いてきたわけではありません。しかし、最近では消費者物価指数の上昇や株価の上昇などを背景に、税収が自然増収となっています。

結果として、自然増収は国民から見れば税負担の増加につながります。しかし、税率そのものを引き上げる増税と比べれば、自然増収に対する反発は限定的です。税率を引き下げるべきだという意見は出ても、税率を引き上げる増税ほど強い反対運動にはなりにくいのです。

高度成長期には「自然増収」が当たり前だった

財務省がまだ大蔵省と呼ばれていた昭和40年代は、日本の高度経済成長期にあたり、年間の経済成長率が10%近くに達することもありました。経済成長に伴って税収も増加し、自然増収が生じていた時代です。

日本が本格的に国債発行に依存するようになるのは昭和50年代以降です。当時は現在ほど財政規律が問題視されることもなく、大蔵省主税局にとっては、増税ではなく減税の規模をどうするかに頭を悩ませるという、現在からすれば夢のような時代でもありました。

経済が成長すれば、税率を引き上げなくても税収が増える--。高度成長期には、こうした自然増収が財政を支える重要な要素となっていたのです。

積極財政は自然増収につながるのか

高市政権が掲げる積極財政が、今後、経済成長や物価上昇などを通じて自然増収という結果につながるのであれば、政府の思惑どおりということになるでしょう。

一方で、自然増収によって税収が増えたとしても、それが国民の実質的な負担増につながる可能性については、注意して見る必要があります。

増税は、税率を引き上げるだけではありません。税率を変えなくても、所得や消費、企業収益などの増加によって税収が膨らめば、結果として国民や企業の税負担は増えていきます。

増税をめぐる政治的な扉は重くても、自然増収という形で税収が増える扉は、それほど重くないのかもしれません。今後、積極財政と経済成長、そして税収の推移がどのような関係になるのか、注目されます。

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員