〈ヤクルト石川雅規、独占告白〉「200勝には未練タラタラです(笑)」25年の現役生活に幕…引退を決めた“肩が抜けた”あの日
現役25年の大ベテランがついにユニフォームを脱ぐ--。身長167センチの“小さな大投手”、東京ヤクルト・石川雅規はNPB通算200勝を目前にして引退を決意し、球界全体が労いの空気に包まれている。引退発表から1ヶ月が経ち、10月3日の引退試合を直前に控える今、彼は何を思うのか。今年でその役目を終えた2軍本拠地、戸田球場で最後の練習を終えた石川投手に独占インタビュー。
【画像】若手時代から汗を流した戸田球場で最後の練習をする石川雅規投手
「8月27日にすべてを懸けていた」
--まずは25年間お疲れさまでした。今季初登板となる8月27日の巨人戦では左肩痛もあって、1回を投げ切れずに降板。肩の状態はその後いかがでしょうか……?
石川雅規(以下、同) 1ヶ月も経ってるので炎症もだいぶおさまってきて、テーピングでガチガチに固めてれば投げる分には今のところ大丈夫です。
とはいえ、(肩が)抜ける怖さはあって引退試合はどうなるかわからないですけど、もういっぱい投げることはないので……はい。
--引退を発表して約1ヶ月。改めて決断を振り返ってください。
すっきりした、楽しかった引退会見ではありましたが、その後に1軍のゲームを見てると「またあの舞台で投げたいな」って気持ちは正直芽生えてきますよね。
でも、いろんな方に「おつかれさま!」と言っていただいたり、こういう取材を受けていく中で、「あ、やっぱり辞めるんだな」と実感が湧いてきたというか。
--引退を撤回していただいてもファンは怒らないかと。
いやいや、日本にいられなくなりますよ(笑)。
10月3日はファンのみなさまやお世話になった方々にユニフォーム姿でご挨拶ができる最後の機会なので、それをしっかりとこなせるように今は頑張って調整しているところです。
--8月27日の登板を振り返ります。先発としてマウンドに上がりましたが1アウトしか取れず、6失点という内容でした。
大城(卓三)選手にデッドボールを与えた時に肩が抜けたような感覚があって、それ以降は腕に力が入りませんでした。
25年やってますけど、緊張感に負けたのかな。マウンドで肩肘飛ぶまでがんばりたいとは言っていても、実際に起こってほしくなかった。でもそれが現実になったので、これがひとつの引き際かなとも思えました。
--そのくらいこの日の登板に懸けていた。
今シーズンはなかなか状態が上がらず8月27日まで1軍に呼ばれずに迎えた試合で、本当にこの1試合に懸けるしかないと思っていました。それだけに、投げる前から頭の隅では「この試合で勝てなかったら……」という覚悟はありましたね。
「妻が一番落ち込んでいる」
--ケガが非常に少なかった石川投手。しかし、今年3月4日、JR九州との実戦初登板で左内腹斜筋の肉離れを起こしてしまいました。
あの瞬間は自分にすごくガッカリしました。そこから自分のプランと現実のギャップを最後まで埋められないという1年になってしまい……。
--石川投手はケガをしない秘訣について、「アスリートは常にどこかしら痛いけど、敏感になってケガを防ぐ時と、鈍感になってでもファイティングポーズをとる時がある」とおっしゃっていました。
そうですね。それまでは敏感と鈍感の綱渡りをうまく渡れていたはずなのに、3月の登板では敏感にならなきゃいけないところで鈍感になってしまった。
正直、投げる前から違和感はあったんです。でも(今季キャンプから)2軍スタートなのもあって、今季初登板でなんとしても結果がほしかった。いい年こいて焦ってたのもあるかもしれません。そういう意味ではプロじゃなかったと思います。
--「野球が大好き」が口グセですが、競技人生を振り返って野球が嫌いになりそうだった瞬間はありますか?
めちゃめちゃありますよ。スポーツ選手って自分に期待しなくちゃいけないんですけど、その期待に自分自身、何度も裏切られてきましたから。
それは小さい頃から何度もあったわけですが、だからといって大好きな野球を辞めるという選択に踏み切る勇気を僕は持てなかった。辞める勇気があるなら練習とかもっとやれることがあるだろうと。
--今まで下せなかった決断がついにここで……。引退を報告したときのご家族の反応は?
引退に関しては、妻が一番落ち込んでいるかもしれません。大学時代からお付き合いをしてきて、ずっと野球をしている僕を見ていただけに受け入れられないというか、心に空いた穴は僕よりももしかしたら大きいのかもしれません。
子供たちに対して夏休みに遊んであげることもできず、そのあたりはすべて妻がやってくれました。家族、妻には本当に感謝しています。これまでは家族が僕の一番の応援団だったので、これからは僕が家族の一番の応援団になります。
「200勝には未練タラタラです(笑)」
--200勝へ強いこだわりがあった石川投手。正直、未練は……?
未練タラタラです(笑)。そりゃあと12勝したい。でも年々ひとつ勝つ難しさが増していく中で、それがあと12となると……気持ち的にもしんどかったです。
岸(孝之。石川投手引退後、NPB最年長投手)や涌井(秀章)に200勝の夢は託します。
--石川投手は188勝(9月30日時点、以下同)だけでなく、1年目から24年連続勝利&安打、3165回(2/3)投球回、日本シリーズセ・リーグ投手史上最年長勝利(41歳)といった数字を記録しました。一番勲章に思っている記録は?
投球イニングですね。1軍のマウンドで3100以上のイニングを任せてもらえた、イニングを食えたっていうのはチームに貢献できた証かなと。もしかしたらこちらのほうが188勝よりもうれしいかもしれません。
だって3000イニングとなると単純計算、150イニングを20年やらないといけないじゃないですか。それだけチームのローテーションにいられたのは誇りです。
--チームが第一という、石川投手らしいコメントです。
やっぱりチームスポーツですからね。プロとはいえ、チームがあっての自分です。
--では、25年間で一番の思い出は?
ヤクルトに入ったことが一番の思い出です。入団会見でスワローズのユニフォームに初めて袖を通したとき、夢だったプロ野球選手になれたあの瞬間は忘れられません。
--来季以降、石川投手が期待している投手を教えてください。
プロになる選手はみんなポテンシャルが高いので1、2年活躍できる選手は出てくると思いますが、それを続けていくのがものすごく難しいのがこの世界。その中で今季12勝した山野(太一)だったり、初めて規定投球回をクリアした奥川(恭伸)には期待したいです。
あとは何と言っても(高橋)奎二。今季は苦しいピッチングも多いですが、すごく練習する子なんで、なんとか自分で乗り越えてほしいですね。
とにかく投手のみんなは規定投球回を何年も継続してクリアすることを目標にしてほしいです。イニングを食わないと勝った負けたもついてきません。そのためには心も体も技術も伴わないといけませんが。
気になる今後は…?
--引退後に何をするかは決まってますか?
解説に限らず、野球に関するお仕事をできたらと考えてます。ひとまずコーチなどで現場に残ることはなさそうですが、ヤクルト球団とは関わりを持ちながら野球の普及だったり、いろんなことに携わっていきたいです。
--まずは現場を離れてひと休み?
まぁ俗にいう、外から野球を見て勉強するという感じですね。でも働かないと食べていけませんから、なんでもやりますよ!
--ゆくゆくは現場に戻ってきたい?
もちろん戻ってきたいです。やはり育ててくれたスワローズに恩返ししたい気持ちが強いので。ご縁とタイミングだと思いますけど、呼んでもらえるようにしっかりと勉強します。
--では最後に、引退試合となる10月3日にどのようなピッチングを見せていただけるか、教えてください!
レギュラーシーズンの中での引退試合で相手との兼ね合いもあって何球投げられるかわかりませんが、しっかりとマウンドに立って投げる姿をファンのみなさんにお見せすることが恩返しだと思ってます。
僕もこの一日を楽しみたいですし、できれば打席に立ちたいですね。
みなさんのご声援のおかげでここまでがんばってこれました。25年間、本当にありがとうございました!
--最後の登板、そして打席を楽しみにしています!
取材・文/武松佑季
撮影/榊智朗
