「俺もこの1点で喜んでる場合じゃない」劇的初ゴールも満足なし 塩貝健人が貫く“野心家の流儀”「僕はライバルだと思っている」

ウルグアイを下す値千金のゴールを決めた塩貝。「この1点で黙らせたい」という意味を込めたポーズに気持ちの強さを感じさせた(C)Getty Images
2026年北中米ワールドカップ(W杯)から約3か月。第3次森保ジャパンが9月24日のウルグアイ戦(宮城)から本格始動し、初キャップの松木玖生(サウサンプトン)、代表4戦目の塩貝健人(ヴォルフスブルク)、エース・上田綺世(リール)がそれぞれゴール。3-1で勝利し、2027年アジアカップ(サウジアラビア)に向け、幸先のいい一歩を踏み出すことに成功した。
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1-1のまま終了のホイッスルが鳴るかと思われた後半アディショナルタイムに、ドラマが待っていた。それを演出したのが、83分からピッチに立った塩貝である。
ご存じの通り、彼は3月のスコットランド戦(グラスゴー)で代表デビューし、途中出場ながらいきなり伊東純也(ゲンク)の決勝点をアシスト。1度の猛アピールで2026年W杯メンバーの座を射止めた。かつての本田圭佑(FCジュロン)や岡崎慎司(バサラ・マインツ)のようにガツガツ感を前面に押し出す21歳の若武者に、森保監督も賭けてみたくなったのだろう。
しかしながら、本大会は初戦・オランダ戦(ダラス)で84分からピッチに立っただけ。得点にも絡めず、ブラジル戦(ヒューストン)直前には「ブラジルは昔は強かったというイメージ」とストレートに発言したことが、自動翻訳により国境を超えて拡散され、まさかの炎上。本人は「今さら撤回しようとかはない」と淡々としていたが、さまざまな批判や脅迫が届くなど、本当に苦い経験をする羽目になった。
さらに、今季のヴォルフスブルクはドイツ・ブンデスリーガ2部に降格。そのチームで思うように出番を得られていないため、一部からは厳しい視線も注がれていた。
「代表にふさわしいから森保さんも呼んでくれたと思うので、クラブの結果はまず置いといて、ここで結果を残して、その後(チームでも)いい結果を残せるようにやっていきたい」と全体練習初日だった22日にも強調。「ここまでの紆余曲折を跳ねのけるような活躍をしたい」と凄まじい闘志を燃やしながら、宮城スタジアムのピッチに立ったに違いない。
そして90+1分、勝利を引き寄せる2点目をついに叩き出した。伊東の右からのパスを受けた塩貝はシンプルに上田にはたいて前に走り込み、スルーパスを受けて右足を一閃。「この1点で黙らせたい」という意味を込めて、右手人差し指を口元に当てたポーズを披露。長い長いVAR判定の末にゴールと認められ、心からの安堵感を覚えたはずだ。
「所属クラブでも点が取れていなくて、代表でもすごい期待してもらってW杯に行ったのに、自分の実力が足りなくて出れなくて、納得してなかったし。この1点はすごく自分にとって大きかったですけど、まだまだ上を目指さなきゃいけない。僕はライバルだと思っているんですけど、上田綺世選手が3点目を決めて、なんか涼しい表情をしていたんで、『俺もこの1点で喜んでる場合じゃないな』と。もっともっとうまくなって、もっと点を取れるようになりたいなと思います」
そういう野心を口に出す若者は今の時代、かなり珍しい。そういう意味でも塩貝は見所がある人材だ。代表1年目でこれだけの天国と地獄を味わった人間もそうそういない。ここから一気に突き抜けてくれれば理想的だ。
[文:元川悦子]
