「私に務まるの?」NHK鈴木奈穂子アナ 『あさイチ』MC抜擢で抱えた苦悩…転機となった大先輩・小野文惠アナの“金言”
「私に務まるの?」NHK鈴木奈穂子アナ 『あさイチ』MC抜擢で抱えた苦悩…転機となった大先輩・小野文惠アナの“金言”
ニュースで培った確かな技術による安心感と、飾り気のない素直な笑顔や人間味で人気の鈴木奈穂子アナウンサー(44)。NHK『あさイチ』3代目女性MCとして活躍する彼女の魅力と番組の舞台裏に迫る。
■「私は番組で何を担当するんですか…!?」 それは突然の打診から始まった!
2021年4月、NHK『あさイチ』の3代目女性MCに就任した鈴木奈穂子アナウンサー。それまでニュースや報道番組を中心に担当してきた彼女にとって、その打診はまさに青天の霹靂であった。
「上司から最初に『あさイチを担当できる?』と聞かれたときは、本当に驚いてしまって。『あさイチで私は何を担当するんですか…?』と聞き返してしまったほどです。自分がまさかあの番組のMCを担当するなんて、夢にも思っていませんでした」
出演者たちの軽妙なフリートークやアドリブ、視聴者からのリアルタイムなメッセージによるライブ感が魅力の『あさイチ』。鈴木アナにとって、その自由さは憧れであると同時に、大きな不安の種となる。
「ずっと見てきた大好きな番組でしたし、NHKを代表する番組に関われるのはありがたいお話。家庭との調整も踏まえ、『ぜひやらせてください』とお返事はしました。
でも、そこからどんどん『本当に私に務まるのだろうか』という不安が押し寄せてきて、放送が始まるまでの数カ月間は不安に飲み込まれそうになる毎日でした」
当時、鈴木アナは育児休業からの復帰直後というタイミングでもあった。
「子どもが生まれてからは、それまで以上に『あさイチ』を身近に感じるようになっていたんです。だからこそ、自分がその中に入ったときに、これまでの井ノ原快彦さん(50)、有働由美子さん(57)、柳澤秀夫さん(72)、そして、華大さん(博多華丸(56)・大吉(55))や近江友里恵さん(38)たちが築き上げてきた素晴らしいチームワークや独自の空気感を、畑違いの自分が何かの拍子に台無しにしてしまうのではないか……という恐怖がいちばん大きかったですね」
■「アナウンサーとしての正解」にとらわれ、思い悩んだ日々
2021年春にMCに就任したものの、最初の数カ月間は「難しさ」や「正解のなさ」に直面し、試行錯誤の連続となる。
「担当する前は、出演者の皆さんがスタジオで本当に自由に、その場のアドリブでバンバン鋭く意見を交わしているイメージでした。
でも実際に中に入ってみると、ディレクターなど制作陣が何カ月も前から取材し丁寧に構成を練り、しっかりとした台本が用意されている。台本から外れることがあっても、それは制作陣の思いや意図を汲んだうえでの展開なのだと理解しました。
そこで今度は、『じゃあ、その中でアナウンサーである私は何をすべきなのか』という壁にぶつかったんです」
報道の現場では、一つのコメントを発するのにも、先輩やスタッフと熟考しながら準備していくのが当たり前であった。
しかし『あさイチ』では、制作陣から「鈴木さんが日々感じていることや、実際の体験、思ったことを放送中にどんどん言葉にしてください」と求められる。
「NHKのアナウンサーが自身の経験や生活実感を言葉にするというイメージがそれまでなかったので、すごく戸惑いました。『私が自分の個人的な話をすることが、見ている視聴者の皆さんにとって何のメリットがあるんだろう?』と、その意味が分からなくて深く悩んでしまったんです」
■霧を晴らしてくれた大先輩・小野文惠アナの一言
そんな鈴木アナの転機となったのは、就任から半年ほどが経ったころ、局内の廊下で偶然出会った『鶴瓶の家族に乾杯』を担当する大先輩・小野文惠アナウンサー(58)からの言葉であった。
「スタジオの廊下のソファで、お話しする機会があり、思い切って『アナウンサーとしての役割や、自分の出し方にすごく悩んでいるんです』と打ち明けました。
そうしたら小野さんが、こんな言葉をかけてくれました。『鈴木さんがそこに座っている意味は、ただ情報を伝えるだけじゃないのよ。40代の一人の女性として、いま画面の向こうにいる人たちの疑問やお悩みを代弁するためにいると思う。
だから、自分がどう思われるかじゃなくて、視聴者を代表して“これを聞かなきゃ”“これ困っているよね”と思ったことであれば、臆せずどんどん言っていけばいいんじゃない?』」
この言葉を聞いた瞬間、鈴木アナの目の前を覆っていた霧が突然パッと晴れたという。
「ハッとしました。自分個人を出すのではなく、視聴者の“代弁者”としてそこにいればいい、自分が感じている事は、同じ課題を抱える視聴者の皆さんも感じている事なんだ、と思えたら、一気に肩の荷が下りました。盛り上がっているトーク中、どのタイミングで言葉を挟めばいいのか、という迷いもなくなり、そこから番組がものすごく面白くなっていったんです。
視聴者の皆さんと一緒に生活の悩みを共有し、人生を豊かにしていこう!というマインドにチェンジできました」
自分の等身大の生活が、そのまま番組のテーマとフィットする喜び。それこそが、現在の鈴木アナの大きなやりがいへとつながっている。
「20代、30代のときにはできなかった、40代の今の自分だからこそ、背伸びせずに視聴者の皆さんと共有できる実感がある。今でも毎日『今のタイミングでのコメントは違ったかな…?』などと反省することもありますが、みんなで一緒に番組を進めていくあの温かい空気感の中で、毎日を過ごせていることが本当に楽しいです」
■打ち明けて心が軽くなった「白髪特集」と、視聴者に寄り添うテーマ
『あさイチ』のMCを務めて丸5年が経過し、現在は6年目を迎えた鈴木奈穂子アナウンサー。これまで膨大なテーマを扱ってきた中で、特に忘れられない放送回について尋ねると、「視聴者の共感がぶわーっと集まった回」を挙げた。
「親の介護、家族関係、女性の引きこもりといった、普段の日常会話ではなかなか話しにくい、でも多くの人が心に抱えているテーマは、本当に印象深いです。番組がテーマとして掲げることで、全国から800~900件、多い時には数千件のメールやFAXが届き、『実は私もそうなんです』『誰にも話せないので、あさイチで聞いてもらえますか』という声が寄せられます。
そうした声を紹介しながらみんなで共有したり、一緒に考えていったりする、そんな場を作れていることに、『あさイチ』ならではの大きな意義を感じます」
具体的に忘れられない回として、2024年12月2日に放送された『想定外だらけ 令和の親の介護』を挙げる。
「うちの両親はまだ元気なのですが、親の介護にかかるお金のことや、事前に親とどんなことを話しておくべきか。番組スタッフが具体的な取材映像をもとに、とても丁寧に描いてくれました。
40代の私にとっても、5年先、10年先の将来を具体的に考える契機になり、視聴者の皆さんと同じ目線で未来を共有できた感覚がありましたね」
そしてもう一つ、鈴木アナ自身の心を軽くしたというのが、2025年4月9日に放送された「白髪対策」の特集。
「みんなで白髪事情について語ろうという回だったのですが、実は当時、私自身も気になり始めていて……。家族とは話せても、友達や仕事仲間にはなかなか話しづらかったところ、本番前にスタッフから『出演者の皆さんの白髪事情を教えてください』という演出を提案されたときは、『えっ、テレビで自分の白髪の話をするの』かと、かなり躊躇しました」
しかし、その不安を吹き飛ばしたのは共演する博多華丸・大吉の2人であった。
「打ち合わせの段階から、華丸さんが『いや、僕はもう7割白髪ですよ』とあっけらかんとおっしゃって、大吉さんも『僕は染めてないけど、ほら、ここにあるでしょ?』って見せてくれて。お二人がそんなにオープンに話しているのを見て、私も本番で自分の悩みを素直に打ち明けてみようかな、と思えて。
そうしたら、放送終了後にすごく心が軽くなっていることに気づきました。 その日は視聴者の皆さんからもたくさんの共感が届きましたし、後輩から『奈穂子さん、白髪隠し何使っていますか?』『実は私も気になっていて……』と相談されて、白髪仲間が一気に増えました(笑)。
自分の悩みを思い切って吐露することで、コミュニケーションが生まれたり、自分も誰かの心も軽くしたりする。番組が目指している双方向の価値を、自分自身が身をもって体験できた大好きな回です」
【PROFILE】
鈴木 奈穂子(すずき なおこ)
神奈川県横浜市出身。2004年にNHKに入局。高松、松山放送局を経て東京アナウンス室へ。これまで『NHKニュースおはよう日本』『ニュースウオッチ9』『NHKニュース7』など、同局を代表する報道番組のメインキャスターを歴任。確かなアナウンス技術と安定感で信頼を集める。2021年4月より朝の情報番組『あさイチ』の3代目女性MCに就任。番組での自然な進行で、幅広い世代から、親しまれている。
