経営者になりたい人が、助走期間で意識しなければいけないこと、【適正チェック】も必見!

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多くのベストセラーを世に出してきた出版エージェント代表による、小さな会社の経営論、生成AI時代の働き方の書『会社は大きくするな! 小さな会社の経営論』より、「なぜ多くの会社では、規模を拡大しようとすると、苦しくなるのか?」「自分たちは何のために働いているのか?」「フリーランスで働くのと小さな会社の違いは何か?」など、具体的なノウハウもご紹介します。

規模を追わず、より深化させる。クリエイティブで社員も経営者も幸せな、強い会社を目指すためには。

独立までの、助走期間

経営者になるつもりなら、次に考えるべきは「助走期間」の問題です。

結論から言うと、いま勤めている会社に所属したまま、助走期間を取ることを強くお勧めします。どれだけその仕事に情熱を抱いていても、何の準備もなく飛び出すのは無謀すぎます。

私の感覚では、助走期間は最低2年、できれば3年が望ましいと思います。独立しようとしている仕事と同じ、もしくは類似する仕事に就いて、その期間を徹底的に使ってください。

でも、ただ在籍しているだけでは、3年は長いだけの時間になってしまいます。助走期間を本物の準備期間に変えるために、意識しておいてほしいことが、いくつかあります。

一つめは、「会社の幹」になるような働き方をすること。

あくまでも独立を視野に入れている場合ですが、何も考えず仕事をしていると、つい業務を器用にこなし、余計な仕事は引き受けない、という働き方になりがちです。しかし、それは一番もったいない過ごし方です。

むしろ逆に、社内の誰かが困っていたら、「手伝いましょうか」と手を貸す。「何か困っていますか」と自分の担当外の相談にも乗る。小さな頼みごとを断らない、いや、むしろ率先してする。そうやって「気の利く人」「信頼できる人」として社内での存在感を育てていくと、いろんな立場の人から相談や雑談が集まってきます。重要なことは相談に乗るだけでなく、実際に手を動かすということです。すると、その仕事を自分の担当業務だけから見るのではなく、営業の視点、経理の視点、経営者の視点と、複眼的に理解できるようになります。独立後、この複眼の有無が、判断の精度を決めます。

二つめは、率先して残業をすること。

いまの時代の流れには逆行しています。しかしこれは、会社に時間を奪われるという話ではなく、自分のために時間を使うという話です。同じ仕事を定時で終えるのと、自分の意志で深く突っ込むのとでは、3年後に身についているものが、まったく違います。独立後は、誰もあなたに仕事を教えてくれません。教えてもらえるうちに、遠慮せず、何にでも対応できる人になってください。

助走期間は、単なる我慢の時間ではない

三つめは、飲み会にもできるだけ出ること。

これも、時代にそぐわないと感じる方がいるでしょう。強制されるべきものではないことも、前提として書き添えておきます。

しかし、酒の席でしか生まれない話は確かにあります。普段は聞けない先輩の失敗談。社外の方との偶然の出会い。その場で軽く交わされる「いつか一緒に仕事しようよ」の一言。独立後、こうした人脈が、最初のお客様になり、最初の相談相手になり、最初の協力者になります。

飲み会だけではなく、一緒にランチというのもいい手です。「午前中、あなたの会社の近くで商談があるので、その後に一緒にランチはいかがですか?」と声をかけるのです。

四つめは、人脈作りと並行してSNSを続けること。

対面で築いた関係を、日常的に温め続ける手段として、SNSはとても相性がいいものです。

たびたび会える相手ばかりではありません。一度名刺交換をしただけの方、飲み会で一度話しただけの方とも、SNSで緩やかに繋がっておけば、相手の近況が自然と目に入ってきます。新しい仕事を始めた。本を出した。転職した。こちらから「おめでとうございます」と一言コメントするだけで、関係は温まっていきます。

この「普段の緩やかな交流」が、実はとても大切です。長く連絡を取っていなかった相手に、いきなり「お願いがあるのですが」と連絡するのは、お互いに気まずいものです。しかし普段からSNSで「いいね」を交わしている相手なら、いざというときに連絡しても、自然な流れで話を切り出せます。

独立前のうちから、この「緩やかに繋がり続ける習慣」を作っておいてください。独立後、あなたを支えてくれるのは、派手な宣伝ではなく、こうした地味な日常の積み重ねです。

私の会社のいまの基盤も、独立前の5年間で築いた出版社の編集者との関係の上に成り立っています。

たとえば、私が独立した2001年のことです。オフィスに家具を入れるとき、日曜日だったと思うのですが、ある出版社の編集者が無償で、家具備えつけなどの力仕事のお手伝いに来てくれました。その彼とはすでに30年以上の付き合いになります。

彼だけでなく、前職からの付き合いのある方が25人はいます。独立してから人脈をゼロから作ろうと思っても、実績もなかったり、一緒に働いた経験もなかったりするので、なかなか人脈構築はできないものです。

独立してから数年経って、ふと過去を振り返ったとき、こう感じるはずです。

「あの3年、あの会社で働いておいて、本当によかった」「あの頃に築いた人脈が、いま自分を支えてくれている」「あの時期に身につけたノウハウが、そのまま独立後の武器になっている」

助走期間は、単なる我慢の時間ではありません。独立後の自分を、いま勤めている会社のお金と時間と人材を使わせてもらいながら育てていく時間です。そう捉えれば、毎日の仕事の密度がまったく変わってきます。

焦って独立しないこと。腰を据えて、その会社の幹になるまで、自分を育てきってから次の一歩を踏み出してください。

経営者になる、5つの入り口

経営者になるには、独立起業だけでなく、いくつかの道があります。

①起業する(ゼロから会社を作る)

②昇格する(社員から社長になる)

③承継する(親や創業者から引き継ぐ)

④招聘される(外部から社長として招かれる)

⑤買収する(既存の会社を買う)

人それぞれ持っているものや境遇が違うので、どの方法がいいとは一概には言い切れません。

意外に面白い選択肢は会社を買うという方法です。

やりたいことがあるなら起業が最善だと思います。しかし、意外に面白いのが会社を買うことです。「事業承継マッチングサイト」(TRANBI、M&Aサクシードなど)を利用して、数百万~数千万円規模の中小企業を個人で買い、経営者になる人が増えています。

すでに利益が出ている仕組みを手に入れ、そこから自分の好きな事業に改善していく楽しさがあります。私もたまにこのサイトを見ています。買う予定はありませんが、見ているだけで楽しいからです。

小さな会社が向いている仕事

どんな仕事でもこのモデルが成立するわけではありません。向いているのは、おおまかには次のような仕事です。

まず、頭の中が主たる資産になる仕事です。設計、デザイン、編集、翻訳、コンサルタントなど。設備や人手より、判断力と経験が物を言う領域です。ただし、知的生産は今後、AIにとってかわる可能性があるので、動向を見極める必要があります。

さらに、一品ものが多い仕事も向いています。案件ごとに中身が違い、標準化しにくい仕事です。属人性が弱みではなく強みになります。

信頼が次の仕事を連れてくる仕事もあります。紹介と指名で回る世界。広告ではなく、人と人との関係が営業を担うような仕事です。

逆に、大きな資本を要する業種、価格競争の激しい業種、在庫を抱える業種、24時間対応が必要な業種は、小さな組織には向きません。これは優劣ではなく、構造の話です。

もう一つ、独立する方にお伝えしたいコツがあります。できるだけ産業の上流に位置取りすること。クリエイティブな仕事と言いかえてもいいでしょう。書籍なら企画と執筆、建設なら設計、商品なら企画開発。下流に行くほど競合が大手になり、小さな会社の属人性が通用しにくくなります。上流ほど、一人ひとりの判断と感性が直接価値になります。

自分の声を、聞いてください

最後に経営者としての適性チェックです。ご自身の現在地を確認してみてください。

あなた自身について

●自分が「好きだ」と言える仕事を、はっきり言葉にできますか

●お金よりも、自由や創造性を優先したいですか

●自分の判断で物事を動かしたいですか

事業について(該当する方)

●「自分にしかできない」と言える強みがありますか

●お客様は、価格より質と信頼で選んでくれていますか

●固定費を、無理なく抑えられていますか

迷いなく頷ける項目が多いほど、この本のモデルはあなたに馴染むはずです。逆に、引っかかる項目が多いなら、無理に進む必要はありません。社員として誠実に働く人生もまた、立派な道です。

人生は一度きりです。

社員として安定した人生を歩む選択も、独立して自分の城を築く選択も、どちらも立派な道です。大切なのは、人と比べることではなく、自分の心の奥にある声に耳を傾けることだと思います。

もしあなたの中で「自分の判断で何かを動かしたい」という声が、なかなか消えずに残り続けているのなら、その声を、無視しないでください。

アクションステップ  今日からできる3つのこと

Step1  「経営者になりたい理由」と「ならなくていい理由」を、それぞれ3つずつ紙に書き出す(所要時間15分)。書き終えたら、どちらの紙の文字に熱がこもっていたかを確認する

Step2  独立するならどの業界か、第一候補を一つだけ書く(複数挙げない)。なぜその業界かを200字で書き添える

Step3  今週中に、信頼できる経営者一人に「30分だけ話を聞かせてほしい」とメッセージを送る

会社は大きくするな! 経営者になるか社員でいるかーー決断前に必ず自分に問うておかなければいけないこと