イマドキの60代、70代は健康なうえに気持ちも若々しい。ほとんどの人は自認が「おじさん」「おばさん」で止まっているだろう

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 9月21日は「敬老の日」。長寿を祝い、長年の労をねぎらう--その心はありがたい。だが、祝われる側が素直に「ありがとう」と喜んでいるとは限らない。

 自分ではまだ若いつもりなのに、周囲からはすっかり“お年寄り”。親切のつもりの気遣いや、何げないひと言に、腹が立ったり、ショックを受けたりする人もいる。

 そこで全国の60代・70代の男女300人に「“年寄り扱い”されて腹が立った、あるいはショックだった経験」を尋ねた。そこには、シニア世代の複雑な胸の内が浮かび上がった。

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最多はやっぱり「席を譲られた」

 自由回答を内容別に分類すると、具体的なシーンとして最も多かったのは「電車やバスなどで席を譲られた」の21人だった。

イマドキの60代、70代は健康なうえに気持ちも若々しい。ほとんどの人は自認が「おじさん」「おばさん」で止まっているだろう

「初めてバスで高校生に席を譲られた時」(北海道・66歳・女性)

「60代前半、電車の中で席を譲られ、ありがたいやら腹が立つやら」(神奈川県・75歳・女性)

「どう見ても自分より年上の方からの座席の譲り。断るべきか、受け入れるほうが良いのか?」(神奈川県・76歳・女性)

 なんとも難しい。譲る側は100%善意なのだが、譲られた側にとっては「私は座らせてあげなければいけないほど老けて見えるのか」という“抜き打ち老化判定”にもなってしまう。

「地下鉄で席を譲られたとき、白髪を染めていないから老けて見られるのかも、と落ち込んだ」(宮城県・79歳・女性)

「バスで席を譲られたとき」(神奈川県・76歳・男性)

 と、男女を問わずショックを受けている。

 さらに、

「目の前の女性が明らかに70代なのに、当時63歳の私に席を譲ってきて困った」(富山県・66歳・女性)

「自分より年寄りだと思われる人が近くにいたのに、自分に席を譲られた」(兵庫県・76歳・男性)

 という回答も。「なぜあの人ではなく私?」。席をめぐって、本人の頭の中では思わぬ“老け見え選手権”が始まっていたようだ。

「まだできる!」に水を差す“先回り介護”

 席問題と並んで多かったのが、体力や能力を心配されることへのモヤモヤだ。

「甥の子供と階段を下りようとしたら、『じいちゃん、危ないから来なくていいよ』と言われた。腹が立ったというより、少しショック」(佐賀県・63歳・男性)

「ツアー旅行で添乗員が過度に気を遣い、少し歩く距離が長い見学スポットだとバスに残るよう言われた」(千葉県・78歳・女性)

「地域の祭りの準備で、力仕事を免除された」(大阪府・74歳・男性)

「自治会の奉仕作業で高所の作業時、『危ないですよ』と注意された」(兵庫県・74歳・女性)

「宅急便屋さんから荷物を受け取ったとき、『重いけど持てますか』と言われた」(東京都・76歳・女性)

 気遣いのつもりでも、元気な本人には「もうできない人」と決めつけられたように響くことがあるらしい。

 なかには、

「耳は聞こえているのに、ちょっと大きな声でゆっくりと話しかけられた」(大分県・76歳・女性)

「尿漏れしてない? と聞かれたこと。失礼な! まだしてない!」(兵庫県・71歳・女性)

 という回答まで。本人が助けを求めていない段階での“先回り介護”は、親切と失礼の境界線がなかなか難しい。

免許、シニア料金…制度が突きつける「あなたは高齢者

 もう一つ目立ったのが、免許更新やシニア料金など、年齢によって線を引かれる場面だ。

「免許の更新で高齢者講習を受けなければならないこと」(滋賀県・73歳・男性)

「免許更新の高齢者講習がそもそも腹が立つ」(愛知県・73歳・男性)

 道路交通法上、運転免許証の更新期間が満了する日の年齢が70歳以上の人は、更新時に高齢者講習を受ける必要がある。安全のための制度とはいえ、それまで普通のドライバーだった人にとっては、「高齢者」という札を突然ぶら下げられたように感じるのかもしれない。

 割引だって複雑だ。

「レストランの会計で、シニア割になっていた」(北海道・65歳・男性)

「食べ放題の焼き肉店で精算の際、70歳以上の料金を申告したら、証明書の提示も求められず普通に精算してくれた。安くなるのはいいけれど、自分では年より若く見えるつもりでいたので、ショックだった」(奈良県・70歳・男性)

「映画館でシルバー割を使ったが、受付で証明を求められなかった。見るからに高齢者だと思われたに違いない」(東京都・73歳・女性)

 証明書を出せと言われれば面倒だが、何も聞かれなければ「見ればわかるのか」と傷つく。店員さん泣かせではあるが、この“確認されなかったショック”は複数の回答に登場した。

「おばあちゃん」と呼ぶのは誰?

 そして破壊力抜群なのが、知らない人から突然「おばあちゃん」「おじいちゃん」と呼ばれるケース。

「私はまだおばさんと思っているのに、前を通る小学生たちにおばあさんと言われた」(京都府・75歳・女性)

「バス停で後ろの人から『おばあちゃん』と声をかけられた。振り向くと相手も杖をついた立派なおばあちゃん。他人に声をかけるときは『奥さん』とか『あの、ちょっと』とか言ってほしかった」(東京都・76歳・女性)

 子供から言われるのとはまた違い、自分と同年代に見える相手からの「おばあちゃん」には、いっそう納得がいかなかったようだ。

 さらに70歳女性は洋服店で「店頭でババくさい衣類を店員に勧められた。不愉快」(大阪府・70歳・女性)。78歳女性も、ボトムスを探していたところ若い店員から「ウエスト総ゴム、通院用の膝までファスナー」のコーナーへ案内されたという(神奈川県・78歳・女性)。

 またカラオケの場面でも……。

「演歌や80年代の曲が好きだと勝手に思われ、曲をかけられた。今の曲しかテンションが上がりません。洋楽派でもあります」(大阪府・61歳・女性)

 敬老の日を前に、周囲は「いたわらなくては」と思いがちだ。しかし今回の回答で見えてきたのは、「年寄り扱いされたくない」というより、年齢だけで「できない」「弱い」「こういうものが好きなはず」と決めつけられたくないという思いだ。

 一方、「年寄りだから気にしない」(栃木県・71歳・男性)、「今の年齢を楽しんでいる」(神奈川県・78歳・女性)という達観派も少なくない。

 とはいえ、目の前の人が「年寄りですが、それが何か」と達観しているのか、まだ「年寄り」という呼び名を受け入れられないのかは、周囲からは判別できない。

 敬老の日に「まだまだお若いですね」と言うのも、「年齢の割には」という意味に聞こえる恐れがある。結局のところ、敬うべきなのは年齢ではなく、その人自身なのかもしれない。

※全国の60~79歳の男女300人を対象にアンケート調査。件数は自由回答を編集部で分類・集計した。

取材・文/ガンガーラ田津美

デイリー新潮編集部