「シルバーウィークはないほうがいい」不登校の子を持つ親が恐れる“9月の壁”…専門家が語る「休み癖ではない」理由
9月の大型連休はあいにくの空模様となったが、各地で秋の行楽を楽しむ人も多いだろう。一方で、不登校の子どもやその保護者にとっては負担もある。夏休みから間を空けず連休が訪れるため、「9月に登校できたとしても、また連休でリズムが崩れてしまうのではないか」と、“秋の壁”とも言えるシルバーウィークに不安を募らせる保護者も少なくない。その実態について、保護者や不登校経験者を聞き、対策を識者に尋ねた。
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不登校の親からは「連休はないほうがいい」という声も
9月の大型連休が始まり、不登校の子どもがいる保護者からは不安の声が聞かれる。都内に住む40代のある保護者はこう話す。
「小学生の子どもが不登校気味です。土日もそうですが、休み明けは特に登校のハードルが高いようです。せっかく夏休みを乗り切ってなんとか9月から登校できたと思ったら、すぐにシルバーウィークがやってきてしまうので、逆戻りしてしまうのではないかと不安ですね。2学期は学習発表会や運動会などの行事も多いので、親としてはなんとか行ってほしいのですが…」
なかには、「連休はないほうがほういい」という声もある。ある保護者はこう訴える。
「9月のシルバーウィークを挟んだら、また学校に行かせるのが大変になるなあと。せっかくの連休ですが、ないほうがよかったと思ってしまいます」
不登校支援の現場でも、「夏休み明けは通う子どもが増える」と声が聞かれる。不登校支援に力を入れる東京都練馬区では、不登校の状態にある児童生徒のために教室を設置している。区の担当者はこう説明する。
「練馬区の方では、不登校の状態にある小学生向けの施設を区内に2か所設置しており、学習支援と相談活動、体験的活動を通して支援を行なっています」(区の担当者、以下同)
同区では不登校児童生徒数が増加しており、令和5年度で1648人(小学生717人、中学生931人)が不登校だと言う。また、担当者によれば、教室へ通い始める児童生徒数は、年度初めから少しずつ増えていく傾向にあるという。
「年度初めの4月は(通い始める児童生徒は)少ないです。だんだんこちらに入室されるお子さんの数は増えてきます。特に夏休み明けには、やっぱり少し増えるという印象があります」
不登校経験者の父親が語る「休み明けの負担」
長期休みは、子どもたちにとってどういった負担があるのか。
自身も中学時代に不登校を経験し、現在は2児の父親でもある「ぎりリーマン@昔不登校だったパパ」(@giri_girimen)氏は、当時の休み明けの心境をこう振り返る。
「周りのみんなが『学校に行くのはめんどくさい』と思いながらも普通に通えているのに、同じように学校へ行けない自分に対して『自分は将来どうなるんだろう?』『でも学校に行くのも苦しい』という不安がありました」
「行かなきゃいけない。でも、学校へ行く勇気が出ない」という矛盾した気持ちが、学校が始まる日が近づくにつれて、どんどん焦りに変わっていったという。
「長期休暇中は学校から物理的に離れることで、学校に対する意識も少し薄くなっていました。でも、再び学校が始まると、周りの同級生は当たり前のように学校生活へ戻っていくのに、自分はそこへ戻れない。その現実を改めて突きつけられているような感覚がありました。
『みんなができていることが、自分にはできない』…そのたびに『自分はダメな人間なんだ』と心の中で何度も認識し続けるような感覚があって、それがとても辛く、大きな負担になっていました」
現在は2児の父親となり、ブログ(不登校のソノゴ)なども通して不登校に関する発信を行なう「ぎりリーマン」氏。「不登校で感じている辛さが未来まで続くわけではない」と子どもたちにエールを送る。
「自分自身も、学校に行けないことで毎日のように『死にたい』と感じながら、それでも死ぬのは怖く、ただただ変わらない毎日を過ごしていた期間がありました。そんな自分でも、小さなきっかけの積み重ねで、年齢を重ねるにつれて『少しだけ生きるのが楽しくなってきたかな』と感じることが最近増えてきました。今、不登校で感じている辛さが、そのままこれから先の未来まで続くわけではないということを、自分自身、生きていく中で少しずつ知りました」
「実は子どもは休みに入るもっと前に悩んでいます」
不登校ジャーナリストとして活動する石井しこう氏は、長期休暇明けに不登校が増える理由についてこう指摘する。
「不登校になる子たちは、休みに入る前から苦しんでいます。保護者は『休み癖がついてしまった』『生活リズムが崩れた』などと悩まれていますが、実は子どもは休みに入るもっと前に悩んでいる。
毎日が辛いと、人間は正常に苦しさを把握できないそうなんです。だけど休みが入って、いったん自分がリセットされると、苦しかったことが正しく把握できて、新しいことに対する恐怖感から距離を取ろうとする。そのため、長期休み明けの不登校が増えるのです」
では、子どもから「学校に行きたくない」と言われたとき、親はどうすればいいのか。
「学校が無理そうだと思った場合には、休ませてあげることです。もしそれができない場合は、肯定も否定もせず、いったん『生返事』で返してみると、子どもが自分の言葉で状況を語ってくれたりすることもあります」
石井氏は、5日ほど休んでも子どもの様子に変化がみられない場合は、「情報を集め始めてほしい」と話す。「不登校の親ネット」などのオンラインコミュニティで情報を得て、さらに保護者自身の態勢を立て直すために介護休業を取得し、時間を確保することが大切だと説明する。
「いろいろな情報を得る中で、フリースクールとかホームエデュケーションなどが選択肢として見えてきます。親の都合で無理に子どもを学校に行かせようとしたり、焦りから子どもを追い詰めてしまうと、子ども自身も居場所を選ぶのが難しくなってしまう。親が情報を得ることで、『別に焦る必要はないな』『いくらでも方法はある』と思うと、子どもも落ち着きます」
自身も不登校を経験した石井氏は、不登校に悩む親子に向けて最後にこうメッセージを送る。
「この仕事をして30年ぐらいになりますが、不登校当事者の取材を続ける中で思うのは、大体みんな『普通のおじさん、おばさん』になっているということです。親であれば自分の子どもには幸せになってほしいと願うものですが、やっぱり苦労は伴います。
それでも人生そんな捨てたもんじゃないとみんな思っているので、その時その時の時間を大切にしながら、できるだけ笑顔の多い時間を増やすことがが、人生にとっての一番の薬ではないでしょうか」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
