「世も末」の声も…高校教諭が生徒と窃盗未遂で逮捕 罪は生徒よりも重くなる?
東京・伊豆大島の都立高校の教諭が、当時の教え子2人と民家に侵入し、盗みをしようとした疑いで逮捕されたことが、9月16日に報じられました。
報道によると、教諭(26)は2月2日夜、少年2人とともに70代男性の住宅に侵入し、金品を盗もうとした疑いが持たれています。少年側は、自分たちから空き家に入ろうと教諭を誘ったとされています。
一方、教諭は、生徒たちが窃盗を繰り返していたことを知りつつ、「肝試し的な感覚」でついていったとして、容疑を否認しているそうです。
ネットでは「ほんとに世も末」と驚く声が上がっています。「肝試し的な感覚」でついて行っただけ、という教諭の言い分は通るのでしょうか。また生徒よりも重い罪となる可能性はあるのか。簡単に解説します。
●教師と生徒で食い違う言い分
教諭の話がそのとおりだとしても、生徒が空き屋などに立ち入り、物品を持ち出すことを繰り返していると知りながら、それを止めずに自分もついて行ったということであれば、罪に問えるかどうかとは別に、決してあってはならないことです。
前提として、仮に「肝試しだった」という言い分が認められたとしても、正当な理由なく他人の住居に侵入してはいる以上、住居侵入罪(刑法130条。3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)などの犯罪が成立する可能性は極めて高いといえます。(※廃墟に立ち入る意図しかないなどとして故意を争う余地は残っています)
そのうえで、この弁解には、生徒らの話と食い違う部分が多くあります。
生徒らは、教諭から「仏壇のおりんは高く売れるから探した方がいい」と助言され、盗んだ物をフリーマーケットサイトで売る方法も教わったと話しているそうです。
また、警視庁によると、教諭は生徒らに「俺にも金とらせろ」などと言って、一緒に盗みに入ったとも報じられています。
これらが事実なら、教諭は盗みでお金を得ることに積極的であったようにも思われ、先の説明とは合わなそうです。
生徒らの話などが事実と認められれば、教諭は自分で物を盗む行動をしていなくても、生徒らと盗むことに合意して犯行に加わったとして、窃盗未遂罪(刑法235条、243条。10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の「共同正犯」(同法60条)に問われる可能性があります。
●生徒の方が教諭より重い罪になるのか?
生徒から誘ったという点は、生徒と教諭の話で一致しているようです。
しかし、誘ったのが生徒側だからといって、生徒の方が罪が重くなるとは限りません。
そもそも生徒側は少年事件として扱われるため、成人である教諭と単純に「刑の重さ」を比較できるものではありませんが、重要なのは、事件の中でそれぞれが果たした役割がどの程度大きなものだったのか、です。
誘ったのが生徒側だったという事情のほかに、教諭が盗む物や売り方を教え、お金を求めていたのであれば、教諭がこの犯罪において重要な役割を果たしていた、として重く評価されることもありえます。
●今後、どういう捜査が行われるのか?
教諭の関与についての話は、共犯とされる生徒側の供述に基づいているようです。
共犯者の話には、自分の責任を軽くするために相手へ責任を押し付ける危険もあるため、その信用性は慎重に判断されます。
つまり、生徒側の供述があるからといって、そのまま認定されるわけではなく、客観的な事実との照合がなされます。
警察は、フリマサイトの運営会社に教諭が盗品を出品していなかったかを照会したり、銀行口座のお金の動きを照会したりできます。
また、令状を得て教諭のスマートフォンを差し押さえ、事前のやりとりを調べることも可能です。
教諭の関与を示す生徒の話が、こうした客観的なデータや記録とよく合っていれば、裁判で教諭の言い分が退けられる要因になります。
逆に、事前のやりとりで生徒側が一方的に誘い、教諭が断っていたような記録が残っていれば、生徒の供述の信用性に疑問が生じます。
いずれにせよ、双方の言い分のどちらが正しいかを判断するにあたっては、上で挙げたような客観的な証拠や記録と整合するかどうかが大きなポイントとなります。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)
