「納得できなかった」アパートの退去を迫られナイフで刺す…殺人事件も起きていた交渉の“危険度”
「血を流した男性がいる」
9月7日の夕方、東京・西東京市のアパートで、退去を促すために部屋を訪れた男性(40代)が、住人に刺される事件が起きた。
警視庁田無署に殺人未遂容疑で現行犯逮捕されたのは、このアパートに住む無職・近藤勝治容疑者(66)だ。
「午後5時半ごろ、『血を流した男性がいる』と110番通報がありました。駆けつけた田無署員が発見したのは、アパート前の路上で倒れていた被害男性。顔や腹部など数ヵ所に刺し傷を負っており、搬送時に意識はあったものの、全治6ヵ月の重傷でした。近藤容疑者が男性を刺したことを認めたため、現行犯逮捕されました」(全国紙社会部記者)
被害男性は家賃保証会社に勤務していた。近藤容疑者はアパートの家賃を滞納しており、事件が起きた7日は部屋から退去する予定の日だったという。
男性は1人で近藤容疑者の部屋を訪れ、退去を促した。ところが2人の間でトラブルとなり、近藤容疑者がアパートの自室の玄関付近で、男性を刃物などで複数回刺したとみられている。
取り調べに対し、近藤容疑者は容疑を認め、「サバイバルナイフで男性を刺しました」と供述。さらに「立ち退きに納得できなかった」とも話しているという。警視庁は、家賃の滞納や退去をめぐり、それまでにどのようなやり取りがあったのかも含め、詳しい経緯を調べている。
「近藤容疑者は、アパートの家賃3ヵ月分、約16万円を滞納していたようです。事件の数日前には、被害男性に『家賃の支払いを先延ばししてくれ』『分割にしてくれ』と交渉したものの、受け入れられなかったと話しており、支払いをめぐって不満を募らせていたとみられます。
また、自宅からはサバイバルナイフや包丁など3本が押収されていて、複数の刃物を使った可能性もあるようです」(同前)
近藤容疑者は9日午前8時40分ごろ、田無署から送検された。スキンヘッド姿、眉間に深くシワを刻み、報道陣のカメラを見つめる視線からは敵意が感じられた。
トラブルの現場で最前線に立つ仕事
近藤容疑者について、近隣の住民は次のように語る。
「近藤さんはコロナ前には今の部屋に住んでいたと思います。話したこともなければ、トラブルもありませんでした。毎日スポーツウェア姿で、朝方や夕方にウォーキングをしていましたよ」
賃貸アパートの立ち退きをめぐっては、今年1月には殺人事件も起きている。
1月15日、東京・杉並区のアパートで、立ち退きの強制執行のために訪れた執行官や立ち会い人らに住人の男(当時40)が包丁で襲いかかり、2人が刺された。そのうち、立ち会い人だった家賃保証会社社員の男性(当時61)が死亡した。
杉並の事件では、前年に裁判所で部屋の明け渡しを命じる判決が出ており、強制執行のため、執行官を含む10人ほどが現場を訪れていた。それでも家賃保証会社の社員が命を落とす事態となった。
一方、今回の事件では、退去を促すため近藤容疑者の部屋を訪れたのは被害男性1人だったという。そもそも、家賃保証会社はどのような仕事をしているのだろうか。
「家賃保証会社の基本的な仕事は、入居者が家賃を滞納した際に、いったん家主へ家賃を立て替え、その後、入居者に支払いを求めることです。電話や書面だけで解決しない場合には、社員が滞納者の自宅を訪ねて事情を確認したり、支払いについて話し合うことも。さらに滞納が長期化すれば、貸し主や弁護士と連携して退去に向けた調整に関わるケースもあります。
難しいのは、家賃の支払いや住まいに関わる話だけに、交渉が難航するケースがあることです。訪問先で相手と直接向き合う以上、怒鳴られたり威嚇されたり、場合によっては暴力に発展したりする危険もあります。特に退去をめぐる話は、入居者にとって生活の基盤に関わる問題です。保証会社の社員は、家賃滞納をめぐるトラブルの現場で、入居者と直接向き合う仕事でもあります」(不動産業界関係者)
今回の事件で、近藤容疑者が刃物を用意していた経緯や、被害男性との間でどのようなやり取りがあったのかは、まだ明らかになっていない。警視庁が詳しい経緯を調べている。
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