提供:エーザイ株式会社

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アルツハイマー病の進行を抑える薬はこれまでの病院で点滴を受けるタイプに加え、在宅で自分で注射できるタイプが16日国に承認されました。この薬をはじめとするアルツハイマー病の治療や検査の最新情報をまとめました。

■治療薬レカネマブの皮下注射タイプとは?

16日、厚生労働大臣によって薬事承認されたのは、エーザイ株式会社のレカネマブの皮下注射タイプです。レカネマブとはアルツハイマー病の進行を遅らせる薬で、「軽度認知障害(MCI)」(症状が現れる最も初期の段階で、物忘れ、時間・場所などの認識がしづらい、言葉が思い出せないなど)と「軽度認知症」の人が対象です。すでに日本で承認され、使われているのは点滴タイプで2週間に一度医療機関に行き、約1時間点滴を受ける必要がありました。

一方、16日、承認された皮下注射タイプは、通院せずに自宅で週1回、患者自身や家族の手で2本を太ももや腹部などに注射します。所要時間は1本約15秒程度だということです。(両タイプとも治療期間は18か月)

■レカネマブの効果は?認知症の症状をなくすのではなく、進行を遅らせる

エーザイによりますと、レカネマブの点滴タイプを18か月間投与した患者は、投与していない患者に比べてアルツハイマー病の症状の進行が半年近く遅くなったということです。ただ、認知症の症状を改善するとか、症状のない状態に戻すというわけではないのです。エーザイはその後の研究で、4年間投与を続けた患者の81%が4年経た段階でも「軽度認知症」にとどまっていたと発表しています。

■レカネマブの課題は

投与した患者の一部で、脳内の微少な出血や脳のむくみといった副作用がみられるため、治療前や治療期間中にMRI検査を受ける必要があります。これは皮下注射タイプでも同じだということです。

価格が高いのも課題です。皮下注射タイプの価格は厚労省の審議会で今後決まります。従来の点滴タイプの場合、患者の体重によって投与量が変わりますが、体重50キロの人でみると薬の費用だけで年間約253万円必要です。公的医療保険が使える上、高額療養費制度もあるため、患者負担は年間数万円程度の人もいますが(年収や年齢による)、患者負担以外の部分を公的医療保険保険料や税金)から捻出していて、こうした高額な新薬が医療費増加の背景の一つと指摘されています。(エーザイによると、2026年8月時点までに点滴タイプを投与した患者は約1万6000人と見込まれる)

■認知症のうちでも7割近くを占めるアルツハイマー病とは・・・

アルツハイマー研究の第一人者で、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の岩坪威所長によりますと、脳内にはアミロイドベータというタンパク質があり、若い頃や正常な状態では自然に分解され排出されています。このアミロイドベータが何らかの理由で、年を取ると脳内にたまりやすくなる場合があり、蓄積すると、かたまりになる。またアミロイドベータが増えるとタウというタンパク質が神経細胞の中にたまって神経細胞を破壊するといいます。すると記憶障害(物忘れ)などがみられるようになるという仕組みです。認知症の症状が現れる約20年も前からアミロイドベータが徐々にたまり、それが引き金となってさまざまな現象が脳内に起きるとされています。

従来の治療薬アリセプトなどは、足りなくなった物質を補い、症状を和らげるものですが、3年程前に登場した新たな治療薬レカネマブ、ドナネマブなどは、脳内にたまったアミロイドベータにくっつく「抗体」を脳内に届け、アミロイドベータを取り除く抗体薬であり、脳に起こる変化の進行そのものを抑える治療法です。

レカネマブなどは、多くの神経細胞が失われて、症状が重くなった段階では効果が見込めないため、軽度認知障害(MCI=物忘れや言葉が思い出せないなど症状の最も初期段階)と軽度認知症の患者に限定して使われます。では、症状が出始めた時点で、それがアルツハイマー病によるものなのか、どう調べるのでしょうか?

■血液検査が登場

日本ではアルツハイマー病の検査としてはPETが主流です。アミロイドPET検査は、特別な薬を注射して脳の画像を撮影すると、脳内のどこにどれくらいアミロイドベータがたまっているか映し出せるものです。レカネマブなどを使えるか判断するためにこの検査をする場合、保険適用ですが、それでも数万円の自己負担が生じます。またこの検査機器がある医療機関は限られていて、地域差があるのも課題です。

こうした中、岩坪氏によると、今注目されているのは脳内のアミロイドベータの蓄積を血液で調べる検査「リン酸化タウ(pTau)217」です。

2025年5月、日本企業、富士レビオはこの血液検査についてアメリカ世界初の承認を得ました。今アメリカでは広く使われ、PET検査よりも多いほどだといいます。日本では年内にもこの富士レビオの血液検査が承認されるとみられています。(承認後も、現時点では人間ドックなどで多くの人を対象に検査するとはならないとみられています)

岩坪氏によると血液検査の仕組みは以下の通りです。脳にアミロイドベータがたまってくると、その影響を受けてタウというタンパク質も神経細胞の中にたまり始めます。その一部が血液に漏れ出し、「リン酸化タウ(pTau)217」として検出されるようになります。つまり、この物質が検出されれば、すでにアミロイドベータが脳にたまっているとわかるというわけです。

さらに、岩坪氏によると、タウそのものの蓄積を調べる新たな血液検査も、日本人研究者の発見をもとに開発され、研究が進んでいるといいます。タウが大量にたまり、固まると神経細胞が失われ、症状につながるため、タウがどのくらいたまっているかわかれば、その患者の神経細胞の変化がどの程度進んでいるかの把握につながり、患者ごとに細かい対応ができる可能性もあるということです。

■そのほかの研究は

岩坪氏にアルツハイマー研究の最新情報を聞いてみると、次のようなものだということです。

⚫「無症状」の超早期に治療を開始できないか・・・・物忘れなどの症状が出た段階ではもうかなりの量の神経細胞が失われている。よってアミロイドベータがたまってはいるものの、まだ症状が出ていない段階でそれを取り除けば、より効果があがるとみられている。症状が出る20年程前からアミロイドベータがたまり始め、ある程度たまったら症状がなくても、検査で検出が可能になってくるものと考えられる。血液検査なども活用して、いかに症状が出る前の時期を狙えるかが焦点。無症状の時期にアミロイドベータを取り除く治験の最初の結果が2028~29年までに出るとされている。超早期のアミロイドベータ除去などでアルツハイマー病を防げることが実証されれば、症状が進む前の無症状の段階で治療を開始することも可能になるだろう。

⚫タウを抑える治療法・・・・神経細胞を壊すタウの蓄積を抑える治験も進行中。

⚫脳に届きやすい薬の開発・・・・脳には血液から異物が入らないようにする仕組みがあり、薬を投与しても、ごくわずかな量しか脳に入らない。より多く薬を脳に届けるための改良が進む。

岩坪氏は「運動や睡眠が脳内のアミロイドベータなどの変化を直接抑えるかはまだわからないが、運動、肥満防止、活発に脳を使うなどの生活習慣の改善が認知症予防に有効であることはわかってきている」と話しています。