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 現在のVTuberシーンにおけるトップランナーのひとつであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。

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 メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む「歌ってみた」などの動画のほか、ここ数年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。

 育成プロジェクトである「バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」からも新規ライバーがデビューし、現在約150名を超えるメンバーが所属・活動しているにじさんじ。その層の厚さでシーンに大きな影響を与えている。

 Idios、Oriens、Dytica、みたらし団と続いた“2023年期”。現在のにじさんじ人気を支える彼らグループの後を追うように、2024年以降も多彩な面々がデビューすることとなった。今回からは2024年3月にデビューした男性3人組、3SKMのメンバーを追いかけてみよう。エネルギッシュな立ち振舞いで多くのファンやにじさんじの同僚から注目を集めるアツい男、北見遊征(きたみゆうせい)についてだ。

■バスケ好きのスポーツ青年がなぜVTuberに? にじさんじ内でも珍しい経歴を持つ北見

 北見遊征は、2024年3月14日にYouTubeで初配信しデビューしたにじさんじのタレントである。白とオレンジを基調にしたマウンテンパーカー風の上着を羽織り、その下に和服を着込み、足袋や下駄のようなブーツを合わせるという和洋折衷な装い。オレンジ色の短髪と切れ長でキリッとしたルックスは、彼が時折口にする“Cool Guy”なイメージを感じさせてくれる。

 目に見えて明るい人格を想像させてくれる北見だが、得意なスポーツとしてバスケットボールをあげている。小学校から高校までスモールフォワードとして活動し、「ドライブして得点を決めるのが気持ちいいんだよ!」「バスケ好きだったし、モテたかったから!」とカラッとした口調でリスナーに話していた。

 そんなバスケ少年だった北見が地元の体育館などでバスケを楽しんでいた際、その場で知り合ったおじさんから「おまえ、めっちゃ喋るから配信者とかやってみたらいいんじゃない?」といわれ、配信者やストリーマーといった存在を知ったという。

 色々見ているなかで「にじさんじのローションカーリング」に出会い、さまざまなシーンを見たなかでにじさんじへ歩みを進めることになったと明かしている。バスケ部で汗をかいて青春を謳歌していたスポーツマンが、紆余曲折を経てインターネットカルチャーのなかでもVTuberに興味を持ち、その輪に加わることになったのだ。

 これまでのにじさんじタレントのデビュー経緯からすれば、相当珍しい経歴を持っている北見。逆に言えば、それほどまでにVTuberというカルチャー、いや「にじさんじ」というグループがポップかつメジャーに、なにより万人に親しまれ、メインストリームに躍り出るようなポジションへと至ったのだと伝わるはずだ。

 このことは、北見本人の趣味嗜好からも感じられる。『ドラゴンボール』『ONE PIECE』『NARUTO』『ブラッククローバー』『僕のヒーローアカデミア』『ブルーロック』『スラムダンク』『チェンソーマン』といった、いわゆる王道のバトル漫画やスポーツ漫画を好み、好きな音楽にはBTS、TOMORROW X TOGETHER、SEVENTEEN、Stray Kids、Kep1er、BE:FIRST、SKY-HIをあげている。

 これ以外にボカロ楽曲なども聴いているようだが、2010年代~2020年代において“ド”がつくほど王道な作品やアーティストも屈託なく好きになれるまっすぐな人物といえるし、ひと昔前であれば「典型的な陽キャ」と表されたりしたかもしれない。

 こういった趣味嗜好の部分を聞いていると、いわゆるサブカル好き・インターネット育ちのイメージは浮かびづらい。クラスのなかでも男子グループの中心に近いところで、みんなの笑かし役となっていたのだろうか……と、そんな想像が浮かんでくる。実際、そう思わせるだけのエネルギーに溢れた振る舞いを、配信を通じて届けてくれている。

■勢いとノリで突っ走る! “吸音材を貼るだけ”の配信で伝説を残す

 VTA(バーチャル・タレント・アカデミー)へと進んだ後にデビューした北見だが、デビューした際の勢いと初期衝動を、なにより本人の気質そのままに突き進んできた。

 ゲーム配信や雑談配信を定期的に行なっているが、2025年正月、その年最初の配信として「【吸音材】貼りまくり配信【北見遊征/にじさんじ】」が、もしかすると"素"の彼らしさをもっともあらわす配信になるかもしれない。

 救急隊が被災地へ走っていくような緊迫感あふれるBGMが流れるなか、「みんな! 落ち着いて聞いてくれ。事態は一刻を争うんだ。まず最初に、これは吸音材を貼るだけの配信だ。本当にそれ以下でもそれ以上でもない!」とシリアスにリスナーへと話しかける。

 「本来なら絶対にこんなこと言わないが、今日だけは言わせてくれ。この同じ時間に、もし他の好きな人とかが配信してたら、みんなそっちを優先してくれ!」とリスナーをケアし、吸音材を貼っていくことに。

 正月配信をし終えていると誤解していたことを謝りつつ作業を進めていくが、吸音材を貼るマスキングテープを扱うのにも四苦八苦。作業に苦戦する様子を、RPGの主人公や洋画・海外ドラマのヒーローのように声を張って実況し続けていく。

 リスナーから「いま来ました。これはどういう状況ですか?」というコメントが届くと、「バカ野郎! 画面見ろ! 吸音材貼ってんだ!」とドラマのワンシーンばりのシリアスなツッコミをしつつ状況を解説するなどして、約1時間にわたって悪戦苦闘する様子を配信を通してみせていったのだ。

 まったく無関係な状況やシチュエーションなのに、“それっぽい”言葉を張った声で喋るだけで、緊迫感あるシーンがパッと思い浮かんでしまう。ビジュアルやイメージだけではなく、声を張った際に与えてくる“ヒーロー感”でいえば、先輩であるOriensやDyticaにも負けないほどだ。北見自身も自身の声の良さや特性を理解してか、“イケメンキャラ”“優しい男性”の振る舞いをコラボ配信などでみせることもある。

 そんな恵まれた声質が存分に活かされているのが、彼の歌活動であろう。ライブ配信を再生数でソートした際、上位に上がってくるのが軒並み歌配信であることからもわかるように、多くのリスナーが彼の声色に期待している、あるいは楽しんでいることがよくわかる。また、歌配信自体もそもそも数が少なくレアな配信であるというのも、再生数・視聴者数増加に寄与していそうだ。

 これらの歌枠で歌唱しているのは、ボカロ曲やロックバンドの楽曲が多く、たまに90年代のアーティストの楽曲を歌うこともある。こういったアーティストも好んでいることは配信中に言及しているが、先に述べたようなド王道の作品やアーティストを好きになれる、屈託のない素直さやピュアさが選曲にも現れている。

 2026年に入ってからは榊ネス、魁星らとのユニット「3SKM」での活動がやはり目立つ。1月6日に“兄貴分”ともいうべきVOLTACTIONとのFUSION LIVE『IMPACT』をおこない、その勢いのままミニアルバム『Nighthawks』を4月29日にリリースした。

 8月23日のワンマンイベント『One-Off』では横浜BUNTAIに集まった数千人のファンを前に堂々と歌い踊ってみせた北見たち。ライブの3週間ほど前である8月4日、自身の誕生日に行なった記念歌枠では、初のオリジナル曲「ALAKAZAM」のリリースを発表していたが、この場で早くも披露し、ファンを喜ばせたのだった。

 VOLTACTION、Oriens&DyticaのMECHATSU-Aと、VTAを中心にした男性メンバーが女性ファンから支持を集めるなか、北見自身もその潮流にしっかりと乗っかっていく手筈を整え終えているのだろうか。大舞台を終えたいま、彼がどのようにアクションしていくかにファンの注目はすでに移っている。

 いずれにせよ、にじさんじの一員として2026年の夏までにいくつもステップアップを遂げたいま、次のステージへ向けて走っていく姿勢や、改めて北見のエネルギーあふれるイメージをファンに届けるフェーズに入っていきそうだ。にじさんじ“らしい”エンターテイナー道へ邁進していく北見の今後に期待したい。

(文=草野虹)